第160話・建設開始
やっとここまで来て、鉄道の建設工事開始です。
この回では深く掘り下げますが、以後の回ではここまでは掘り下げない予定です。
以後の工事では、『こんな事があったのだろうな』感覚で、以下の話をお読みいただければ幸いです。
いちいち描くと、クドイ上に時間も掛かりすぎるので。
カイトが出した、『奴隷購入』に際しての条件。
・親しいもの同士は、離さないこと。
・悪そうな奴でも、つまはじきしない事。
・労働力として期待出来なさそうな者を積極的に、買うこと。
・一応、経歴などは調べた上で購入すること。
・購入にさいして、種族の差別もしない事。
・老人より、子供などを優先すること。
などなど・・・・
王都に向かった使者は、かなりの苦労をした。
一部、内容があいまいだし、制限が厳しいし、イロイロと調べるのにも、時間が掛かるし・・・・
結局、これの人選には三ヶ月と少しの期間がかかってしまったことを、ここに記しておく。
購入できたのは、総勢29名。
子供や衰弱などで動けない者を減らせば、20名そこそこであった。
ちなみに使者に抜擢されたメイド二人と護衛の騎士三人は、過労から五日ほど眠り続けた。
彼らにも、『人権』が必要そうだ。
と
冗談はさておき。
・土地
・材料
・労働力
三拍子がそろった『鉄道建設工事』は、今日をもって、着工されることとなった。
奴隷たちの管理の問題から、工区を分けるなどのことができず、ベアルからボルタへ一方から建設を開始する運びとなった。
今は、着工式を行っている真っ最中である。
参加者は、奴隷たちと屋敷の人間全員(手が離せなかった者を除く)だった。
人数だけ見れば、祭りにも匹敵する規模だ。
「カイト様、なにもここまでしなくとも、すぐに建設を始めた方がよろしいのでは・・・?」
「バカ! こういうのはだな、ちゃんと順番があるんだよ!!」
「・・・・・。」
アリアのもっともな発言に、異を唱えるカイト。
三ヶ月間、『まだか、まだか。』と言い続け今日やっと、その『鉄道建設』ができるようになった。
瞬間、彼は屋外で式典の様なものを始めたのである。
この世界では普通、何かを造るのに、こういった式典などは開催しない。
この街の団地造成のときもそうだった。
アリアが彼を不思議に思うのも、無理は無かった。
一方、カイトは内心、大フィーバーの拍手喝采状態であった。
つい昨日、使者が購入してきた奴隷の一団を出迎え、狂喜乱舞して、現在に至る。
ちなみに彼は嬉しさのあまり、この奴隷たちに対して盛大な歓迎パーティーを催そうとして、アリアにしこたま怒られたのは、あまり関係の無い話である。
気持ちは分かるが、『領主が奴隷を、盛大に歓迎した』などと言う話が諸国に広まっては、堪ったものではない。
カイトもいい加減、このあたりを理解すべきだった。
先は遠そうだが。
と言うわけで、『式典』が始まった。
と言っても、することは至ってシンプル。
「この工事の暁に、神の祝福があらん事をここに願う。」
まずは神主代わりに、聖女のイリスさんに言葉を述べてもらった。
イロイロ間違いだが、この世界仕様と考えれば、あながち変でもないのかもしれない。
いや・・・聖女様をこんな式典に呼ぶ時点で変か。
「俺さ、ここまで来て本当に・・・本当に・・・・・・うううう・・・・・・・」
「はいはい、カイト様、お気持ちはよく伝わりましたから、もう席にお戻りください。」
「ま・・待て!! 俺はまだ一言も・・・・・!!」
次に、領主の挨拶。
・・・は、長くなりそうだったので、アリアの手によって強制退場。
賢明な判断である。
彼に話されては、たぶん明日になっても工事が始まらない。
次に・・・・
「・・・・カイト様、この進行計画は何ですか?」
「え? だって必要じゃん。」
次に、奴隷の一人に、何か言ってもらう。
この式典の、『進行計画』なるものは、カイトが昨日、徹夜で仕上たものである。
彼、一人で。 誰に相談も無く。
アホだった。
この重要とされる(聖女様が来ている時点で)場所で、奴隷に話させるなど、あってはならないことである。
具体的には、戦争すら危ぶまれるレベルに。
と言うわけで、これは即効で却下になった。
次。
総出で奴隷たちとともに、木の伐採。
却下だ。
森の木を切らなければ、鉄道は敷けない。
その先駆けで式典のプログラムとして・・・と言う考えはよろしかった。
『奴隷たちと共に』あたりが非常に問題であった。
つぎ。
みんなでパーティー!!
却下だ。
昨日も言ったでしょうが。
奴隷とそんな事をしたら、問題になると・・・
カイトはまだ、諦めていないようだった。
ツギ。
みんなで遠吠え・・・(「やるぞー、おーー!!」的なノリで。)
却下。
もう説明の必要も無い。
言語道断だった。
「カイト様、残りすべて、却下ですわ。 やっては問題になります。」
「えー!!??? せっかく徹夜で考えたのに!?」
アリアの告白に、『なんてヒドイ事を言うの!?』と言った態度に出るカイト。
これにはアリアも、苦笑するしかなかった。
これで、式典は終了である。
プログラムはそれ以上、書かれていなかったので。
「うぅぅうぅ・・・・せっかく完璧な式典を考えてきたのに・・・」
「あー~~~--・・・・」
あからさまに気落ちするカイトに、アリアは妥協案を提示した。
本当にこの領主様は、バカである。
だが存外、皆がみな、この日常が好きであった。
「カイト様、分かりましたわ。 では、奴隷たちにだけ、木の伐採をしていただきましょう。 無論、全員で一本のみですわ。」
「・・・・・俺は?」
「ダメです。」
カイトの参加申し込みは、光の速さで却下された。
こうして、不安が残る形で鉄道建設工事は、開始の運びとなった。
まだ、開通は遠いです。
工事は、イロイロとありますから・・・・・