第159話・奴隷
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「アリア、その・・・・まだなのかな?」
「カイト様、昨日の今日で纏まる話ではございませんわ。 今しばらく、お待ちくださいませ。」
「くうぅぅ~~~!! じらすなあ~~!!」
アリアからの報告に、ガタガタと座っている座席を揺らすカイト。
アリアは彼のこの態度に、注意をするでもなくただひとつ、ふう・・・と、ため息をついた。
彼からのこの質問は、今日これで十五回目である。
いちいち注意するのも、馬鹿らしくなってきた。
彼がここまで心待ちにするのは、鉄道建設に際して雇い入れる予定の、『労働力』。
そう、『奴隷』である。
この国を含め、この世界のほとんどの諸国では、奴隷は合法とされる。
もちろん、カイトたちが住むアーバン法国も、例外ではない。
しかし日本人の感覚として、『奴隷』というものが受け入れられなかったカイトは、この領地での奴隷貿易は認めてこなかった。
・・・今までは。
だが先日、アリアに『奴隷に人権を与えてやればいい』と、入り知恵されたカイトは、これを即効で採用した。
傍から聞くと、『奴隷』と『人権』は、相容れないモノ同士に見える。
だが、現実的にはこれは、可能だ。
もともとこの世界における『奴隷』は、『物体』扱いである。
売るも自由。
憂さ晴らしの道具にするも自由。
オモチャにするも自由。
痛めつけるも自由。
殺すも自由。
死ぬまで休み無く、働かせるのも自由。
まさに、『人権』というものから縁遠いものであった。
・・・が、それは『奴隷契約書』などには明記されていない。
いわば、暗黙の了解である。
つまり、カイトがこの領地で、『奴隷にも人権はある。 決まりごとを制定したから、守るように』と言えば、それで通るのであった。
ちなみに前例は無い。
まさに前人未到の、考えである。
その先駆けとして、カイトは鉄道建設にこの、奴隷たちを使おうと考えたのだった。
これを見本に、街の人たちへの『奴隷』に対する考えを少しでも、変えてもらうのが目的だった。
やらないよりは、やったほうが効果覿面であることは、明白であった。
そして先日、一番多く奴隷が集まると言う王都へ、使いの者を寄越したのである。
お金の都合もあって、雇い入れられるのは、頑張っても三十人そこそこ。
なるべく奴隷同士、家族がいたら離さないよう言ってあるので、現実もっと少ないかもしれない。
本当は、もう少し多く奴隷たちをこの地へ招きたかったが、何事にも『限度』があった。
「なるべく、多くの奴隷たちがここへ連れて来られるといいんだけどな・・・」
「現実、難しいでしょうね。 奴隷にも家族ぐるみはありますが・・・一まとめで買うと言った場合、奴隷商に足元を見られるのは必然ですから。」
「・・・そっかー。」
カイトが彼らを待ちわびるのには、もう一つの『理由』があった。
それは・・・
「アリア、彼らに少しでも楽な仕事をさせるために、今からでも少しでも工事なり、準備を・・・・」
「いけませんわ、カイト様。 彼らには、『人間と同じ働きをさせる』と言う使命があるのです。 カイト様がその仕事をあらかじめ、奪われるようであればこの計画はそもそも、成立たなくなってしまいますわ。」
「くうぅぅ~~~!! じらすなあ~~!!」
そう、『前例』を作るため、買ってきた奴隷たちには、『人間らしい労働』をさせるつもりであった。
その『前例』作りに必須となるのが他でもない、『鉄道の建設』であった。
この建設事業で、彼らを人間らしく働かせ、領地内の住民たちの手本とする算段だった。
カイトが自前の魔法で建設しては、元も子もない。
だからアリアは、カイトに『何もしてはいけません!』と釘を刺されていたのだった。
要するにここ最近は、『鉄道』は停滞ムードであった。
もう他の準備はあらかた整っているだけに、カイトの欲求不満は、爆発寸前であった。
ゲーム好き人間が、目の前に置かれた最新ゲームソフトを前に『プレイするな』と言われるようなものだった。
ちなみに作者なら、別の事をして、気を紛らわせる。
「彼らには、一応急ぐように言い含めてはありますわ。 ただし、カイト様の要求があまりにも複雑だったので、時間がかかるものと思われます。」
「う~~~~・・・・・」
毅然とした態度で、カイトにそう言い放つアリア。
カイトは、奴隷購入に際し、いくつもの要求を使いの者に出していた。
それがあまりにも多く、そして複雑なので、アリアもこう言っているのだ。
一刻も早く鉄道を作りたいくせに、変な手回しをして、その建設が遅れている・・・・
『自分で自分の首を絞める』とは、こういう状況を指す。
ただカイトは、これに関しては後悔などしていなかったので、今の状況は受け入れるほか無かった。
時間が掛かればかかるだけ、しっかりとした『人選』ができた、と言えるのだから。
と言うことは当然、分かってはいたのだが・・・・
「ああ・・・早くしないかな~~~!」
「・・・・・。」
やっぱり、なるべく早い段階でここへ、連れて来て欲しいモノであった。
労働力って、大事。
そんな回でした。
・・・なっているかどうか、ほとほと不安な気持ちでいっぱいですが。