第157話・そして怒られた
これからも、頑張っていきます。
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「カイト殿様、この地は魔族達の住まう場所から程近い場所にあります。 魔素の供給に関しては、滞るなどのことは生じ得ないことでしょう。」
「そうなんだ、ありがとう、ダリアさん。」
先日、魔物災害一歩手前まで危険な状況に陥ったここ、ベアル。
しかしこの事件は、むしろカイトにとって喜ばしいものとなった。
『鉄道の動力源』
これに頭を悩ませていたカイト。
そこで着眼していたのがほかでもない、魔石であった。
だがこの世界において、魔石は宝石よりも高いことで知られる代物だ。
いくら発展してきて財力が上がってきたカイトたちでも、おいそれと手出しはできない。
それが、『鉄道の動力』という、消費が早いものならばなお更だ。
彼の『鉄道建設計画』は、ここで頓挫したかに見えた。
が
カイトは本当に、運が強い。
昔、この地の不作が原因で森に放置した魔石ガラが、なんと魔石になっておいたのである。
これはアリアでも、予想外の事態であった。
カイトの鉄道計画が再び、動き出した瞬間であった。
だが今までも、こんな事はいくらでもあった。
そして、使い物にならずガッカリ・・・が通例であった。
ここで彼は、『実証実験』として、魔石ガラを少量輸入し、それを再び森に二週間ほど放置した。
結果は成功とまでは言えなかったが、そこそこ魔力が蓄積したのは確認された。
その後も試したが、結果は同じであった。
まあ、何とかなるって感じであった。
カイト的には。
ダリアさんからも魔素の供給下についての説明を受けたので、心配は払拭された。
鉄道計画も、やっと現実味を帯びてきた。
・・・ハズだ。
「カイト殿様、魔素の供給元をお聞きになるなど、いかがしたことでしょうか? もし魔族共が鬱陶しいと言うならば、カイト殿様ならば多分、半日ほどで奴等など殲滅・・・」
「いや、違うんだ。 ただ興味を持っただけ。 答えてくれてありがとう。」
彼女は一礼すると、部屋を退出していった。
相変わらず、ダリアさんのセリフには悪寒が走るが、彼女に悪気があるわけではないし、『やめて』と言えば何もしないので、安心できる。
彼女が怒らなければ、の話だけどね。
一度彼女は怒って、州長宅が・・・
いや、今は語るまい。
現在でも、憶測の域を出ない事件ではあるのだし。
下手したら、冤罪になってしまう。
「後は・・・・あいつらに、相談にでも行くか。」
カイトはそう言うと、転移の魔法でその姿を消していった。
後に残るのは、部屋に吹き込む、心地よい風だけである。
◇◇◇
「カイト様、私がどうして怒っているか、お分かりですね?」
「えーっと・・・・一人で出かけたこと、だよね??」
あたりもすっかり暗くなり、街には魔力灯の黄色い明かりが照らし出されたころ。
屋敷では、今となってはおなじみの光景と化してしまった、『カイト説教の図』が出来上がっていた。
ちなみに今日はアリアだけではなく、ヒカリやメイドさんたちもその場にいた。
皆が皆、怒るか困ったような表情である。
「カイト様、あなたが行動する際に決められたことは何でございましたか?」
「ヒカリとメイドさんが一人、それに護衛の人を二人連れて行くこと・・・だったかな?」
「『だったかな?』ではありません。 その通りですわ。 それでカイト様は今日のお出かけでは、どなたをお連れになりましたか?」
「・・・空気かな?」
カイトよ。
漫才をしている場合ではないぞよ。
アリアも、顔を真っ赤にさせて怒る。
が、最初に口を開いたのはヒカリであった。
「お兄ちゃんヒドイ、二度も私を置いてった!! もうお兄ちゃんなんかキライだからね!!」
「そ・・・そんな・・・・・」
それだけ言って、そっぽを向くヒカリ。
なんやかんやで仕事の最中に、彼女から『癒し』をもらっているカイトは、結構なダメージを負った。
カイトは、アホであることは確実であった。
治る事は、なさそうであるが。
だが今回は、これだけでは済まなかった。
メイドさんたちがこの場に居るのも、そのためであった。
ちなみにその中に、ダリアさんの姿はなかった。
「大公様、言いたくはありませんが、私共はあなた様にお仕えするため、身を粉にして働いてまいりました。 この街の後片付けも、総出で行いました。 それでもまだ、われわれを信用できませんか?」
「ちがう、違う! そんな訳がないじゃないか!!」
カイトは、彼女達を代表するようにそう言ったクレアさんの言葉に、かなり驚いた。
そしてその背後のメイドたちがかもし出す、悲壮感漂う雰囲気も・・・
当然そんなわけがなかった。
カイトは彼女たち含め、この街の復興に尽力してくれたすべての人に感謝をしていた。
その人たちを信用しないなど・・・・
「カイト様、あなた様が行ったことは、そう言う事という事ですわ。 お分かりですね?」
「・・・・・。」
無言で、一度だけうなづくカイト。
どうせ危険はないのだし、手配も面倒だとすっぽかしたのは間違いなかった。
その行動が、このような誤解を招きかねないことは、考えるべきであった。
その後、カイトはメイドさん達にはもちろんのこと、騎士さん達の下へも赴き、詫びた。
これからは、すっぽかさぬようにしようと、固く心に誓うカイトであった・・・
ちなみにヒカリは、この後三日間ほど、口をきいてくれませんでした。
がーーーーーーーーん。
ここまで来て、話がそれたよぅ・・・・
はは・・・鉄道って遠いなあ・・・(遠い目をして)