第156話・怪我の功名
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アリアに連れられるがまま、カイトが向かったのは、街の外にある耕作地のさらに外側の、とある場所であった。
慌てていた事もあり、そこまで赴くのに『転移』は使わず、走っていった。
アリアもカイトも、息も絶え絶えだ。
・・・息切れしている理由は、両者で異なっているが。
「大公様、魔力漏れが激しくなる一方です! このままでは魔物が群がってきて、魔物災害に発展してしまいます!!」
「はあ、はあ・・・カイト様、あなた様の魔法でまずは、この魔力漏れをどうにかできませんか!!?」
「よ・・・よし来た!! その『魔力漏れ』とか言うのを止めればいいんだな!?」
着いて早々、十分な説明もないままカイトは、騎士やアリアに事態収拾を打診された。
『カイト様、街外れの耕作地で、魔力漏れが発生しています。 このままでは、街が壊滅しかねません!!』
そう言われて、カイトはここまで駆けつけたのだった。
ちょうど同じ部屋にいたノゾミも、今回は同行している。
そしてチートなカイトは、一瞬にしてこの事態の収拾に努めた。
具体的には、発生源一帯に、魔法の膜を張ったのである。
ルルアム襲撃の際に使った、障壁魔法のようなものだ。
あれとは違い、今回通さないのは、魔力だけと、限定してはいるが。
「・・あ、空気が澄んだね。」
「よく分からんが、良かった・・・」
ノゾミの言葉に、安堵のため息をつくカイト。
忘れがちだが、ノゾミはトビウサギの変異種である。
ゴブリンキングを倒した際に落とされた、巨大な魔石を食ったことで進化し(?)、人間型に変身して、現在に至る。
ようは元、魔の森に住んでいたという経験持ちの、野生動物である。
感覚などに関しては、人間以上のものがあった。
これは、カイトの魔法による探索などでは分からない事である。
「カイト様、お忙しい中ありがとうございました。 これで何とか、最悪の事態は避けられたようですわ。」
「いいよ、何やかんやで、俺の領地の話だ。 俺が動いて当たり前だよ。」
いや、普通動くのは、冒険者ギルドで集められた冒険者たちである。
この街にはまだこれがないので、いつもカイトが動く。
周辺からは、『変わった領地』と言われていた。
これをカイトは・・・・アリアすら知らない。
「ところでいきなりそんなに多くの魔力が漏れ出すなんて・・・何が原因だい??」
そう、問題はそれだ。
原因があるなら、対処しなければならない。
そうしょっちゅう、『魔力漏れ』なんかがあっちゃ、敵わないのだ。
カイトもここの所、忙しくなって来ている身なので。
「原因は、これですわ。」
「・・・・へ?」
そう言って、アリアがカイトに差し出してきたのは、魔石だった。
ついさっき、ノドから手が出るほどほしいと言っていた、あの魔力の結晶体。
鉄道の動力源に使いたいと言った、あのエネルギーの塊。
それを、彼女は『魔力漏れの原因』と言った。
これは一体、どう言うことなのか?
カイトが詳細を聞く前に、アリアの方から説明が始まった。
「この地はもともと、魔素が濃い地域なのです。 それで三年ほど前、カラの魔石を輸入して、この地の魔素を吸収させていたのですが・・・・」
「あーーーー!!! あったな、そんな事!!」
すっかり忘れていた。
三年前、この地でソギク栽培を始めたばかりのころ。
一部の耕作地で、魔力過多による不作が起きた。
これを打開するため、カイト達は空っぽになった魔石を各地から輸入し、これを森に設けた集積場のようなところに置いていたのである。
これが項をなし、ソギクの不作は以後、起こっていない。
カイトはそんな事、すっかり忘れていた。
忘れていても、通常ならまったく問題にはならない案件に間違いはなかった。
・・・そう、通常なら。
「思ったよりこの地域の魔素が濃くて、置いていた魔石が飽和状態に陥り、魔素を放出してしまったようなのです。 また魔石ガラを輸入しますか?」
「んーーー、それだとその場しのぎにしか・・・・」
ここまで発したところで、カイトの思考は待ったをかけた。
前に、シェラリータでも同じようなことをした。
本当に、どうにかしたいならする方法は、ふつうに存在していた。
が
今の状況を整理すると、この地は、魔素が濃いようだった。
魔物がいないのが、不思議なぐらい。
つまり、魔石ガラを置けば、自然に魔石ができてしまうと言うことではあるまいか?
この地に埋蔵される魔石はほとんどない。
だが、作るならそれも可能である。
つまるところ。
「や・・・やったーーーーー!!!! 問題が一挙解決だーー!!」
「か・・・カイト様、どうされたのですか!!???」
カイトの豹変振りに、驚くアリア。
対するノゾミは、『ああ、そういう事か。』と、この状況に納得していた。
魔獣化の甲斐もあって、ノゾミの知能は、カイトをも越えているようだった。
「アリア、じゃんじゃん魔石ガラを輸入してくれ!! 実証実験をしてみたい!!」
「は・・はい、かしこまりました・・・??」
問題は解決したようだった。
だがここでいつも、水を差すようなことが起こっていた。
だからこその、『実証実験』。
これで、本当に使えるものかどうかを見極めるのだ。
カイトもこの三年で少しは、成長をしたようだ。
これでまた一歩、鉄道に向けて前進である。
この森に魔物がいないのは、ドラゴンのせいです。
近くの山脈に、地竜が多数生息しているので、魔物がいてもすぐに、捕食されてしまうのです。
この地の魔素が濃いのは、近くに魔族領があるせいです。
そこから魔素が、流れ込んでくるようです。