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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第8章 カイトの願望
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第155話・愚痴

これからも、頑張っていきます。

感想など、ありあしたら、どんどんお寄せください!!

「カイトお~~~?? あのきれいなお水の話はどうなったの~~??」


「んあ・・・・なんだっけ??」


「もう! 街でお散歩したとき、お店できれいなお水があったから、『作ってくれる』って約束したでしょう!?」


「ああ・・・そんな事もあったっけ?」


ノゾミが、カイトの部屋へわざわざおもむいて催促さいそくしているのは、この間二人で街へ出掛けた時に見かけた、薬屋で見た着色された水のことである。

あれは、薬のサンプルとして、店に飾られたものだった。

これに目を奪われたノゾミは、カイトにこれを作ってくれるよう、お願いをしたのだった。

それからもう半月が経った。

いつまで経っても手元に来ないことに、ノゾミの我慢も限界に達してしまったのだった。


もちろん、カイトも素で忘れていたわけではない。

『ギルド誘致』

『鉄道の建設』

『交換留学生』

『バルアの産業衰退』

などなど・・・・


すべきことが沢山ありすぎて、水作りまで手が廻らなかったのである。

アリアが居なければ今頃彼は、過労死していたかもしれない。

つまるところ、アリアにそのしわ寄せが行っているのだが、それは『知らぬが仏』状態であった。

それでも彼には、疲労が溜まってはいた。


「すまん・・・・ちょっと休んでからにしてくれ・・・」


そう言って、机に突っ伏すカイト。

初めて見るカイトの様子に、心配げな表情になるナゾミ。


「疲れてるの?」


「ん・・・最近、イロイロあってさ・・・」


カイトの言う、『最近のイロイロ』とは、昨夜のドワーフとの技術会議(?)の事である。

着眼した鉄道の動力が、使い物にならないものと知り、カイトはドッと疲れが出た。

今まで『鉄道開業』の悲願達成のために頑張って来たカイト。(あくまで、彼なりに)

その活力で、今までありとあらゆる問題も解決してきた。(あくまで、他の人たちと)

その悲願達成が、ここに来て、難しくなってしまった。

カイトからは覇気が抜かれてしまい、これまでの疲れが一気に襲ってきたのだった。

まあ、これまでの事も考えれば、無理も無かった。


「それって、カイトがずっと言っていた『てつどう』とか言うものの事?」


「・・・・ああ・・・・・・。」


ノゾミの質問に、力なく返事をするカイト。

シェラリータからずっと連れ添っている間に、彼はこの言葉を、何度発した事か。

ノゾミもその辺りはよく見ていたので、大体の察しがついたというわけだ。

どちらかと言うと、カイトが気落ちする原因の9割が、『てつどう』なるものが関係していたから、という理由も多分にあったが。


「なんだかカイトがいつに無く張り切っているって、アリアちゃんから聞いたよ? どうして元気が無いの?」


「元気・・・・なあ~~~・・・・」


これまで何度、お預けを食った事か。

三年近くかかってやっと、ここまで来たと言うのにここで、計画は頓挫とんざしてしまった。

この世界では、土台無茶な話だったのかもしれないと、いまさらながらカイトは考えていた。

かと言って、あの駄女神様にクーリングオフ申請などいまさら、できようはずも無いので、別の世界の取替えてもらう事もできなかった。

そもそも出来たとしても、立場上、不可能な手段だが。


「そういえばカイトさ、バルアの再建策を考えてくれたって聞いたよ!?」


「ああ、なんか大変だって聞いたから。」


アリアから。

カイトの情報の出所は、大抵が奥さんからだった。


「あそこの人ってさ、いい人ばかりなんだ。 猫にエサをくれたり、私に野菜の串をくれたり・・・」


「?」


「だからさ、あの街から元気が無くなっていくのを見るのが、つらかったの。 でも、アリアちゃんからカイトがとってもいいアイデアを出してくれたって聞いたよ、スゴイよカイト!!」


「ははは・・・」


バルアを、観光用のリゾートに仕立てると言う計画。

あの海の色などから彼は、沖縄やハワイなどを連想し、アリアに提案した。

これを彼女は、妙案だとすぐに採用が決定した。



これは、鉄道ありきの計画だった。

そもそもこの世界で、旅を楽しむと言った風習は無い。

安全に、快適に、より早く。

そういった交通手段が無ければ、このリゾート計画だって、無いも同然だ。

それを今、ここで言う勇気は、彼には無かった。


「ちょっとさ・・・一番重要なところで、煮詰まっちゃったんだ。 いい打開策も無くてさ・・・」


「ふーん?」


これだけでは、彼女には分からないだろう。

だがそれで良かった。

この愚痴ぐちを聞いてくれる者が居るだけ、はるかに自分は幸せ者だ。

無理やりに、気分を上向かせる努力をするカイト。

焼け石に水だが、こうでもしないと、やっていられなかった。


机に突っ伏すカイト。

彼をまっすぐ見つめるノゾミ。

部屋の中を、しばしの間、静寂せいじゃくが包んだ。


・・・とここで、バーーンと、乱暴に部屋のドアが開け放たれた。

突然の事だったのでカイトもノゾミも、かなり驚いた。

体力過多ぎみの、ダリアさんかと思いきや、音の主はアリアだった。

入ってきた彼女は、肩で息をしている。

かなり、あわてた様子だ。

彼女がこんな態度をとるのは珍しい。


「あ・・・アリア? 何かあったの?」


「はあ、はあ・・・・カイト様、大変ですわ! 街の外れにある・・・・」


「・・・・え!?」


アリアからの報告に、カイトは驚きを隠しきれなかった。



無いものを作るって大変・・・・

予定よりも鉄道が、遠すぎます。

でもそれもまもなく・・・・

となると、良いのですが。

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