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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第8章 カイトの願望
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第154話・鉄道の動力源

これからも、がんばっていきます。

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!

「ダメだ、話にもならねえ。」


「へ?」


夜更け。

屋敷近くに立てられている、グレーツクからの交換留学生用の宿舎の一室の窓からは、光が漏れてきていた。

これはカイトが魔力灯を参考に作った、『魔力球』のおかげである。

この世界では、明かりとなるものは火ぐらいしかないので、夜は基本、貴族などを除けば寝るしかなかった。

だがカイトのバカ能力を前にこの領地の家には軒並み、この『魔力球』が備え付けられていた。

この街はその甲斐もあって、夜なら王都よりも賑わっている。

施工した当の本人は、分かっていない。


それはさておき。


その宿舎には、カイトの姿もあった。

この留学生に、『報告がある』と言われ、出向いた次第だ。

彼らには、海賊から没収した『大砲』の分解を依頼していた。


だがこれは、非公式なものであった。


彼らはあくまで、グレーツクから来た穀物の栽培などを学びにきた留学生。

その者たちが、『大砲』を分解し、汽車の動力源を作ろうとしている。

これがおおやけになれば・・・・

特にアリアにバレたら、恐ろしいことになること必須だ。

カイトは悟られぬよう、転移でこの場におもむいた。


そこで彼らに聞かされた最初の言葉が、『ダメだ』だった。

それはつまり・・・


「え、失敗なの? え、大砲は分解できたんだよね??」


カイトの質問に、顔をうつむかせる留学のドワーフたち。

腕を組んで、うなっている者も居る。

ちなみにこれが失敗だと、この世界で鉄道は作れないことにもつながる。


「いや、大砲は分解できたし、その原理もなんとなくだが分かったんだ。」


「すげえ代物だったぞ? 昔はあんな物を作っていたなんてなあ。」


「よくあんな物を、製造できたモンだぜ。」


口々に、分解したと言う『大砲』に賛辞の言葉を送るドワーフたち。

だが当然、カイトはその現場に立ち会っていないので、分からない。

このドワーフ達に彼は、説明を求めた。


それによると、かの『大砲』は、かなり特殊なものだった。

まず、空気中の魔素を集積する。

次にそれを、エネルギーに変える。 これは、魔法攻撃のことだ。

そしてそれを、発動と同時に一瞬にして撃ち出すというのが、この『大砲』の原理であった。

つまり、カイトの『大きなエネルギー源になるのでは?』と言う読みは、おおむね当たっていた。


問題は、そのエネルギーの強さだ。

今のままでこれを動力源に利用しようとすると、内圧に耐えられず、容器が破裂してしまうのだと言う。

この点『大砲』は、その圧力がかかるのがかなり一瞬の事であるため、問題が無かったと言えた。

つまり、動力源に使うには程遠かった。

特に安全面的に。


「マジか・・・・」


カイトは、落胆を隠し切れなかった。

これで話は、振り出しに戻ってしまったわけである。

着眼点はよくても、使えなくては話にならない。

永続的な運行を考えても、カイトが自分の魔法でどうにかすると言う暴挙に、出たくは無かった。

計画が完全に、暗礁へ乗り上げた格好だ。

だが話はこれで終わりではないようで、ドワーフ達が、隣の部屋から小ぶりのドラム缶のようなものを出してきた。

よく見るとその表面には、『大砲』に描かれている物に似た、模様のようなものが刻印されている。


「これは・・・・?」


「一応よ、そのデカ筒の原理を応用して、造ってみた魔力抽出機さ。 空気中の魔素やらを取り込んで、爆発もしないように調整してみた。」


「おお! それじゃあ・・・・」


カイトが上機嫌な声を上げたところで、再び彼らはかぶりを振った。

その表情からは、悔しさがにじみ出ている。


「ダメだ。 魔素ぐらいじゃ話にならねえ。 せいぜい運べるのは、ソギクの穂、一俵が関の山だ。」


ソギク一俵とは、だいたい10キロぐらいだ。

十分すごいが、それでは鉄道の動力には、程遠い。

だが、カイトは彼らの、『魔素なら』という言葉に着目した。


「魔素ならって言うなら、魔石は!!? あれでもぜんぜんダメなのかい??」


魔石は、魔素が固まり、結晶化したものだ。

その中には、とてつもない魔素がこもっている。

よく錬金術の触媒などにも使われている。

魔素では足りないと言うなら、もっと濃いものを!!

そう考えて、不思議なことは無かった。


だが・・・・


「バカ! 魔石がひとかけら、いくらすると思ってんだ!! 俺たちの年収でもぜんぜん足りねぇんだぞ!??」


「ううう・・・・・。」


魔石は、希少度が高い。

なかなかそれは、手に入らないものなのだ。

手に入れるにも、かなりの危険を伴う。

最近シェラリータという街でこれの採掘が盛んになり、前よりは手に入れやすくはなったが、それでもまだ、かなりの値段であった。

それを鉄道の動力の、燃料にするなどありえない話であった。

それが分からぬカイトではない。


「まあ、なんつーかよ・・・小僧、元気だせや。」


「俺たちももう少しだけなら、考えてやっからよ。」


「その代わり、酒は弾めよ?」


「・・・・。」


カイトは、あからさまに気落ちした。

手に届く所にあると思われた鉄道が、急に遠くへ行ってしまったような気がした。

この世界に来てから、こんな事ばかりである。

これはきっと、ヤツの差し金に違いない。


「クッソー、あの駄女神~~~!!」


「はあ??」


カイトは、とんだ八つ当たりを神に向かってしたのだった・・・

もう少し・・・と言うところでこれです。

いつもそう。

こうして、話が長くなるのです・・・・・

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