第153話・バルアに新産業を!!
これからも、がんばっていきます。
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「カイト様、鉄道どころではなくなりましたわ。」
「・・・・え?」
彼らは今、ベアルからボルタの間に鉄道を敷くため、着々と準備を進めていた。
今はアリアの言う、『人手』というものをどうするかを目下、考え中である。
まさか、街に居る者たちにさせるわけにも行かないので。
そんな中、ある問題が浮上した。
その問題とは・・・
「カイト様、前にこの国における連邦との交易は、バルアがそのほとんどを行っている旨は、お教えしましたね?」
「『リグスク』だっけ?」
カイトの間髪入れずに答えた地名に、首を縦に振るアリア。
リグスクとは、クズ州長が海賊を従えていた、連邦にある街である。
この都市では主に、バルアへと向かう交易船がひっきりなしに行き交っていた。
しかし海賊に船を壊されたダリアさんは、烈火のごとく怒り、この街の州長宅を焼滅させてしまった。
その後はグレーツクが発展したこともあって、この街は衰退の一途をたどった。
今この街は、新生ゴルバ連邦の田舎町になったと聞く。
要するに、バルア最大の産業であった『貿易』の相手が、居なくなってしまったことに他ならない。
「その『ほとんど』を、今はボルタが牛耳ってしまっているのです。 私が何を言いたいのか、お分かりになりましたか??」
「えっと・・・・・ボルタが大きくなって嬉しい?」
カイトか発せられた言葉に、アリアは落胆した。
そんなことを伝えるために、わざわざ自分が出向いてくるとでも思っているのだろうか、この人は。
当のカイトは、自分は何か間違ったことでも入っただろうか、といった風だ。
この場合、カイトに期待しすぎたアリアが悪いだろう。
まあ、カイトもいい加減、少しは察せよとも思うが。
「違います!! 確かにボルタが大きく発展したことは喜ばしいですが、その上で問題が発生しているのです!」
「問題? 改めて街の区画整理とか??」
カイトのこの言葉に、思わず目を見開くアリア。
実はこれも、彼に相談しようと・・・・
いやいや、違う違う!!
今すべき相談は、そんなじゃない!!
アリアは首を大きく横に振り、否定の意を示した。
「バルアです。 バルアの産業が、衰退の一途をたどっているのですわ!!」
「あーーーーー!!! そういう事か!」
ここにきて、やっとアリアの言わんとしていることが分かったカイト。
いつもこれで、かなりのタイムロスをしていることに、いい加減気づくべきだ。
ちなみにそれが、鉄道建設事業の遅れにもつながっていく。
「バルアでは今、商人離れが続いておりますわ。 その商人たちが向かうのは・・・」
「ボルタか・・・」
「はい・・・」
ボルタが急激に発展したのには、このようなカラクリがあったようだ。
つまり、バルアからよりも、ボルタからのほうが交易に有利と踏んだ一部の商人が、お引越しをする。
彼らがそれに成功し、ほかの商人も続こうとする。
すると、交易が滞っているこの街では、物の仕入れがさらに滞り、弱小商人たちは、廃業していっている。
そんな街に多くの人間が住めるはずも無く、人口流出は後を絶たない。
その人間たちもまた・・・
「じゃあ、しょうがないね。 バルアの人たちには、引越し先としてボルタとかを紹介して・・・」
「冗談じゃありませんわ! バルアは漁業に置いてもこの国でも一目置かれる港町ですわ! 簡単につぶされては困ります!!」
「ご・・・ごめんなさい。」
アリアのあまりの剣幕に、あやまるカイト。
漁業もまた、獲った魚介類を売れる商店が減ってきているため、快調ではなくなってきていた。
このままでは、本当に危ないのだ。
バルアを任されている身として、これは由々しき問題なのである!!
それをカイトときたら・・・
現実とゲームをごっちゃにしているのではあるまいか、と考えさせられるほどの、暴言である。
この世界に、RPGのゲームなど存在しないが。
「あの街を再生しなければなりません。 それは監督官たる、貴方様の責務ですわ!!」
「バルアに新産業を・・・・か。」
漁業だけでは成り立たない。
交易に関する産業は、言わずもがな・・・
つまり、新産業を打診されていると考えるのが、自然な流れといえた。
カイトも少しは、分かってきたようである。
この調子でそのまま、成長してくれると・・・・
まだ無理か。
「ん~~、いきなり言われてもな~。」
「・・・そうですわよね。 申し訳ございません、カイト様。 私ももう少し、考えてみます。」
カイトに一礼し、踵を返そうとするアリア。
そんな新産業をポンポンと、思いつくはずも無かった。
カイトは天才ではないのだから。
そのカイトはと言うと、前に屋敷から見た、透き通ったエメラルドグリーンに染まった海と白い砂浜、それに町を見渡す、草原などを思い浮かべていた。
はじめて見た時、彼は感嘆の声をあげたものだ。
そしてカイトは、天才じゃないが『新産業?』を思いついた。
一応言ってみる事にした彼は、退室しようとしたアリアを、引き止めた。
言ってみるだけなら、損は無い。
「アリア、あの街をさ、『観光リゾート』にするのって可能かな?」
「・・・・なんですか、その『かんこうりぞうと』と言うのは??」
この世界では、旅は常に危険と隣りあわせだ。
それを楽しむなど、変わり者の冒険者ぐらいしか居ない。
が
もしカイトが鉄道を作って、旅を快適で安全なものにできれば・・・・
いつ実現できるのか、不透明だが。
アリアに『観光リゾート』と言う言葉を彼が教えるのに、夜更けまで時間がかかった。
鉄道が遠くなりました?
次話は、元に戻りますが。