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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第8章 カイトの願望
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第149話・アリアの機嫌がいい

これからも、がんばっていきます!!

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください。

「お帰りなさいませ、カイト様!! 調査は済まれましたか!?」


「えと・・・・いや、明日もかな?」


暗くなったので今日の地盤調査は止め、屋敷のあるベアルへと戻ってきたカイト。

するとアリアは、大変上機嫌で彼を出迎えてくれたのであった。


正直、怖かった。

この二年、アリアがここまで機嫌が良かった事など、一度も無かった。

何かあったのではないか・・・・

カイトはこの事態に、薄ら寒さすら感じていた。

アリアが聞いたら、いつも通りにぶっ飛ばされる事であろう。

機嫌のほうも急降下間違いなしだ。


「そうですか。 明日もどうぞ、がんばってくださいませ。 妻として、応援させていただきますわ。」


「!?」


アリアは満面の笑みで、カイトをねぎらった。

いつも怒ってばかりで忘れがちだが、彼女はかなりの美人である。

カイトはこの笑顔で二年前、陥落したのである。

そのせいでベアル領主となり、現在に至る。

傍から聞くと、実にわけの分からない話である。


そしてカイトは、この事態に頭の中では警報が鳴り響いた。

『危険だ!!』

カイトの何かしらの本能が、そうささやいた。

だが彼女は現在、カイトに笑みを浮かべてねぎらっているだけである。

感謝してしかるべきであろう事は、カイトでも分かっていた。


「ありがとう、アリア。 何かいいことでもあったのかい?」


せめて、機嫌がいい理由だけでも知りたい。

ヒカリが、大人しくしてくれたとかかもしれないし、何か他に、楽しいことがあっただけかもしれない。

しかしアリアは、少しもったいぶる素振りを見せた後、説明を始めた。

口の近くに手を持ってくる辺り、王女時代がしのばれる。



「最近になって、わが領は大変な高成長を見せ始めております。 これが喜ばずにいられるでしょうか?」


「ああ・・・そういう事ね。」


二年以上前の事を考えるとアリアの言うとおり、この領地はかなりの成長を見せていた。

動機が不純だったとはいえ、街は国内有数の都市にまでなった。(らしい)

この功労者は、まぎれも無いアリアである。

彼女が街の発展を喜ぶのも、無理は無かった。

というか、カイトがその辺り、無頓着むとんちゃくに過ぎた。


「カイト様が王都へとつながる街道を整備したおかげで、物流がスムーズになりました。 そしてカイト様の提案のおかげでこの街に、産業もできました。」


「・・・・。」


前にも考えたが、俺が一人でやったことは何も無い。

提案もしかり。

アリアのこの言葉は、カイト的には何とも言えなかった。

これでは、自分一人が、手柄を横取りしているみたいである。

否定をすると、長くなるので突っ込み入れないが。


「その上で、今はかねてからの『てつどう』なるモノを造るための、調査をされているのですよね? それをお造りになれば、物流がさらに円滑になるのでしょう? さすがはカイト様ですわ。」


「まあ・・・・」


もともと、この領地をどうにかしようとしたのも、これが原動力だったりする。

日本にいたときにテツだったカイトは、鉄道の無いこの世界に、大変なショックを受けた。

そして決めたのだ。

『無ければ、作ろう』と。

だが、金が無い。

その『金』を作るため、カイトはここまで頑張ってきたのである。

それを褒められると、なんだかある種の罪悪感のようなものが、カイトの中に渦巻いた。


「何より、グレーツクとの交易が嬉しい限りですわ。 商人たちも、喜び勇んでおりますわ。 あの地方は、連邦から独立したと聞いたので、新しい国王でも立って交易を推進して下さっているのでしょう。」


「・・・・・。」


アリアは知らない。

そのグレーツクのトップが、何かの力が働いて、カイトであることなど。

この領地とグレーツクの交易が、円滑になって当たり前である。

トップが同一人物なのだから。

カイトはバカなので、怒られないためにこれを、アリアに隠したのである。

バレたらもっと怒られるであろう事を、考えはしなかったのだろうか?

いまさら、後の祭りだが。


「カイト様、暇な時間を見つけて今度、グレーツクの新しい国王に、ご挨拶あいさつうかがいませんか? 領主として、一度もご挨拶あいさつおもむかないなど、礼がなっておりませんわ。」


「いやいやいや!!! そういうのアイツ、嫌いじゃないかな!? ここは大人しく、感謝しているだけがいいと思うよ、俺は。 うん!!!」


おもむかれては、非常にまずい。

実はあちらにも屋敷はあって、ドワーフたちで構成される自警団が見回ってくれている。

カイトはタマに時間を見つけては、鉄鉱石の採掘現場などを視察し、彼らを労ったりしていた。

ベアルの経験の、賜物たまものである。

そんなところへアリアと行けば、確実にカイトのことがばれる。


だがここでカイトは、ある種の墓穴を掘った。


「おや、カイト様はもう、挨拶あいさつへ赴かれたのですか?」


「うう・・・!? うん! もちろん。  忙しそうにしていたから、当分は会えないんじゃないかな!?」


「そうですか・・・・・ では日を改めて、またご挨拶あいさつに伺いましょう。 私も一目、お目にかかってみたいですわ。」


そのときまでに、何かの対策を練らねばならない。

何回も手紙を跳ね返したら、さすがにマズい。

カイトは、無い頭をめぐらせた。

彼はここで非常に、無駄な労力を割くのだった・・・




なお彼に、『もうこの事は、打ち明けよう』という考えにはならなかった。

最初から破綻はたんしている隠し事がこの先どうなるのか、非常に見物みものである・・・・

アトで、ヒドイ目にあう予感がする・・・・。

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