第147話・アリアへの報告
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「カイト様、お勤めご苦労様でございました。」
「うん、ただいま。」
夕方、カイトは王都からベアルへと転移魔法で戻ってきた。
屋敷の玄関では、アリアとヒカリが出迎えてくれた。
俺の帰りを待ちわびていたかのように、ヒカリが俺の腰の辺りに抱きついてくる。
これが落ち着くらしい。
歩くときはちゃんと、離れてくれるので、問題はない。
「今日は何かあった?」
「いえ、今日は大きな事件もなく、終始平穏でございました。」
「そっか、じゃあ俺は、部屋に戻るね。」
「あ、カイト様、後で部屋へお伺いしてもよろしいですか??」
「もちろん。」
帰ってきたカイトは、着替えるために私室へと向かった。
まるで本当に、『何事も無く、平穏な一日がまた過ぎた』とさえ、錯覚してしまいそうだ。
だが、ベアルはともかく、王都に行ったカイトは、とても平穏とはいえないザワザワとした一日を送った。
カイトが毎度の如く、『やらかした』せいで、彼はグレーツクという地域の、国王みたいな立場になっていたことが発覚したのである。
何かの冗談みたいな話である。
しかし、紛れも無い事実だ。
そういう訳でカイトの心中は、少しだけ、パニックになっていた。
とはいえ、状況を整理したので、そんなにヒドくは無い。
アリアにポーカーフェイスまがいの事ができたのも、そのせいである。
王都で会った宿の女将さんと話し、カイトは今の自分の悩みを打ち明けた。
どう説明すればよいのか分からない、事態に陥っていること。
もう引き返せないところにいること。
下手に打ち明けたら、奥さんに殺されるであろうこと。
これらを話し、女将さんはカイトに、助言をした。
『隠せば良いさ』と。
女将さんは、カイトの緊張を解くため、そんな冗談を言ってのけたのだ。
彼女は面白半分に、彼にマズイ助言をしてしまったのである。
たぶん彼女も、内容を知ったら、『殺されても良いから話すべきだ』といったことだろう。
この国の住民として。
まさかそこまで深刻なこととは、露も知らない女将さんであった。
そしてカイトは、この助言をそのまま実行に移すことにした。
さすがにアホも、大概にしろというべきモノである。
こうして、隠すことにした。
イロイロと。
カイトの着替えが一段落した頃、彼の私室のドアがノックされた。
無論、入ってきたのはアリアだ。
カイトも顔色一つ変えずに、彼女に相対する。
ここでは、これが重要なキーとされるらしい。
「カイト様、早速で申し訳ないのですが、王宮ではどのような話しが行われたのですか?」
「『アリアはいないの?』って言うのと、グレーツクの救援を褒められた事ぐらいかな?」
ウソは、言っていない。
だがこれだけで、彼女が満足するはずも無い。
「・・・・なぜそこで、私の話が出てくるのか理解しかねるのですが?」
「アリアに会いたかったみたい。 特にそれ以外は無いっぽかったけど?」
目頭の辺りを抑えるアリア。
国王の・・いや、父親のことをよく知るからこその、態度である。
かなり変だが、ありえない話では到底無いと、彼女は判断した。
「大丈夫か、アリア? ソファで休むか?」
「いえ・・・大丈夫です。 少々、頭痛がしただけですわ。」
ふう・・・とため息を吐き、彼女は額から手を離した。
その後、質問を続けた。
「救援をほめられた、と言うのは?」
「文字通り。 『よくやった』って。 新しい連邦も樹立したみたいで、新帝とか言う人とも会ったよ。」
「聞き及んでおりますわ。 国が一度ちりぢりに分裂した後、一部が再集結したと・・・」
さすがはアリアである。
最新の世界情勢がすでに、頭の中に入っている。
カイトも一領主ならば、こうあるべきである。
はなはだ無理であろうが。
「お褒めの言葉と、新帝の紹介・・・・まあ、グレーツク救援の功労者として、あなた様を呼んだと思えば、つじつまは合いますわ。」
カイトは、ホッと息をついた。
これで、胸がスッと軽くなった。
しかしと、アリアが付け加える。
「本当にそれだけなのですか? あの国王様ならばあり得なくは無いですが、なんだか私、胸の辺りがモヤモヤするのですが??」
鋭い。
さすがはアリアだ。
カイトの報告に抜けがある事を、勘でズバリと指摘した。
しかし、彼女の中では不確定的な要素でしかないらしかった。
どうやら、もう一押しのようだ。
「『アリアは付いてきていない』って言ったら、だいぶショゲてたぞ?」
アリアが途端に、頭を抱えた。
完璧である。
アリアの追及は免れたし、ウソはついていないし、話も大きく逸らせた。
この屋敷で、カイトの隠し事が見抜けるのは、ダリアさんぐらいだ。
彼女はそんな事は口出ししてこないので、安全だ。
今回はカイトも、命がかかっていたのでしっかり考えてから、話したようだ。
まるで、別人のようだ。
出来ればそれを常時発動で、別の目的で使うべきとも言えた。
「そうですか・・・・本当に、お疲れ様でございましたわ、カイト様。 本日はゆっくりお休みくださいませ。」
ひとしきり悶絶した後、頭を抱えたまま、彼女は俺の私室から出て行った。
彼女の悩みが増える代わりに、この件はこうして、深い闇の中へと葬り去られた。
ひときわ大きな爆弾が出来た、瞬間であった・・・・
うわあ・・・・
カイト、やっちゃいましたよ。
バレたら、どうする気でしょうか・・・?




