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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第8章 カイトの願望
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第147話・アリアへの報告

これからも、頑張っていきます!!

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!

「カイト様、お勤めご苦労様でございました。」


「うん、ただいま。」


夕方、カイトは王都からベアルへと転移魔法で戻ってきた。

屋敷の玄関では、アリアとヒカリが出迎えてくれた。

俺の帰りを待ちわびていたかのように、ヒカリが俺の腰の辺りに抱きついてくる。

これが落ち着くらしい。

歩くときはちゃんと、離れてくれるので、問題はない。


「今日は何かあった?」


「いえ、今日は大きな事件もなく、終始平穏しゅうしへいおんでございました。」


「そっか、じゃあ俺は、部屋に戻るね。」


「あ、カイト様、後で部屋へおうかがいしてもよろしいですか??」


「もちろん。」


帰ってきたカイトは、着替えるために私室へと向かった。

まるで本当に、『何事も無く、平穏な一日がまた過ぎた』とさえ、錯覚してしまいそうだ。

だが、ベアルはともかく、王都に行ったカイトは、とても平穏とはいえないザワザワとした一日を送った。


カイトが毎度の如く、『やらかした』せいで、彼はグレーツクという地域の、国王みたいな立場になっていたことが発覚したのである。

何かの冗談みたいな話である。

しかし、紛れも無い事実だ。


そういう訳でカイトの心中は、少しだけ、パニックになっていた。

とはいえ、状況を整理したので、そんなにヒドくは無い。

アリアにポーカーフェイスまがいの事ができたのも、そのせいである。


王都で会った宿の女将さんと話し、カイトは今の自分の悩みを打ち明けた。

どう説明すればよいのか分からない、事態に陥っていること。

もう引き返せないところにいること。

下手に打ち明けたら、奥さんに殺されるであろうこと。

これらを話し、女将さんはカイトに、助言をした。


『隠せば良いさ』と。


女将さんは、カイトの緊張を解くため、そんな冗談を言ってのけたのだ。

彼女は面白半分に、彼にマズイ助言をしてしまったのである。

たぶん彼女も、内容を知ったら、『殺されても良いから話すべきだ』といったことだろう。

この国の住民として。

まさかそこまで深刻なこととは、露も知らない女将さんであった。

そしてカイトは、この助言をそのまま実行に移すことにした。

さすがにアホも、大概にしろというべきモノである。


こうして、隠すことにした。

イロイロと。


カイトの着替えが一段落した頃、彼の私室のドアがノックされた。

無論、入ってきたのはアリアだ。

カイトも顔色一つ変えずに、彼女に相対する。

ここでは、これが重要なキーとされるらしい。


「カイト様、早速で申し訳ないのですが、王宮ではどのような話しが行われたのですか?」


「『アリアはいないの?』って言うのと、グレーツクの救援を褒められた事ぐらいかな?」


ウソは、言っていない。

だがこれだけで、彼女が満足するはずも無い。


「・・・・なぜそこで、私の話が出てくるのか理解しかねるのですが?」


「アリアに会いたかったみたい。 特にそれ以外は無いっぽかったけど?」


目頭の辺りを抑えるアリア。

国王の・・いや、父親のことをよく知るからこその、態度である。

かなり変だが、ありえない話では到底無いと、彼女は判断した。


「大丈夫か、アリア? ソファで休むか?」


「いえ・・・大丈夫です。 少々、頭痛がしただけですわ。」


ふう・・・とため息を吐き、彼女は額から手を離した。

その後、質問を続けた。


「救援をほめられた、と言うのは?」


「文字通り。 『よくやった』って。 新しい連邦も樹立したみたいで、新帝とか言う人とも会ったよ。」


「聞き及んでおりますわ。 国が一度ちりぢりに分裂した後、一部が再集結したと・・・」


さすがはアリアである。

最新の世界情勢がすでに、頭の中に入っている。

カイトも一領主ならば、こうあるべきである。

はなはだ無理であろうが。


「お褒めの言葉と、新帝の紹介・・・・まあ、グレーツク救援の功労者として、あなた様を呼んだと思えば、つじつまは合いますわ。」


カイトは、ホッと息をついた。

これで、胸がスッと軽くなった。

しかしと、アリアが付け加える。


「本当にそれだけなのですか? あの国王様ならばあり得なくは無いですが、なんだか私、胸の辺りがモヤモヤするのですが??」


鋭い。

さすがはアリアだ。

カイトの報告に抜けがある事を、勘でズバリと指摘した。

しかし、彼女の中では不確定的な要素でしかないらしかった。

どうやら、もう一押しのようだ。


「『アリアは付いてきていない』って言ったら、だいぶショゲてたぞ?」


アリアが途端に、頭を抱えた。

完璧である。

アリアの追及はまぬがれたし、ウソはついていないし、話も大きくらせた。

この屋敷で、カイトの隠し事が見抜けるのは、ダリアさんぐらいだ。

彼女はそんな事は口出ししてこないので、安全だ。


今回はカイトも、命がかかっていたのでしっかり考えてから、話したようだ。

まるで、別人のようだ。

出来ればそれを常時発動で、別の目的で使うべきとも言えた。


「そうですか・・・・本当に、お疲れ様でございましたわ、カイト様。 本日はゆっくりお休みくださいませ。」


ひとしきり悶絶もんぜつした後、頭を抱えたまま、彼女は俺の私室から出て行った。

彼女の悩みが増える代わりに、この件はこうして、深い闇の中へと葬り去られた。



ひときわ大きな爆弾が出来た、瞬間であった・・・・

うわあ・・・・

カイト、やっちゃいましたよ。

バレたら、どうする気でしょうか・・・?

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