第145話・連邦が樹立したらしい
これからも、がんばっていきます。
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「スズキ公よ、願わくばこの国としても、『グレーツク』と交易がしたいのだが・・・」
「え? でもグレーツクは他の国ですよね? 俺にそんな話をされても・・・」
国王様が俺に打診してきたのは、『グレーツクとの交易』。
だが俺は、あくまでこの国の一領主に過ぎない。
交易したいならば、俺ではなく、連邦に打診するべきである。
そもそも俺が交易することで、この国との交易は成っていることになるし。
・・・・連邦は、潰しちゃったけどね。
しかし王様は、『何を言っておる?』といった表情を浮かべている。
そして、トンデモない発言をしてきた。
「スズキ公よ、私は連邦の新帝からは、『グレーツクは独立した。 元首はカイト・スズキだ』と聞いたのだが・・・・」
「・・・・・。」
・・・・・・・・・・は?
連邦の新帝?
誰それ??
そしてグレーツク元首は俺と言う。
何の冗談か。
「えーっと国王様、状況がよく分からないのですが・・・」
「それには、俺が説明しよう。」
カイトの疑問の言葉に呼応し、玉座のカーテンの裏から気の良さそうなドワーフが出てきた。
服装はスラッグ連邦の一般市民が着ていたような作業着で、この場には似つかわしくないといえた。
当然、面識など無い。
だが相手は、カイトを知っているようだった。
「まずは自己紹介からしよう。 俺はゴルバ連邦の新帝、ガルムだ。」
「はあ、新帝? ゴルバ連邦って?」
「うん、何から話すか・・・・・」
少し考えるようなそぶりを見せた後、彼からはこんな説明があった。
スラッグ連邦という国は一ヶ月前、ドラゴンの怒りで消滅したらしい。
そのドラゴンの意向もあって、方々の連合していた国々も、いったんは独立したのだとか。
だが、数百年のしこりがあり、この独立を渋るものが多くいた。
そこで、再度一部の国々が連合を組んで新しい連邦を樹立したらしい。
そうして出来たのが、『ゴルバ連邦』。
彼は、別の街の州長補佐をしていたらしいが、人柄もよく人気もあったため、このたび国家元首に抜擢されたらしい。
たった一ヶ月の間に、なにがあったのだろうか?
まあ、それはともかく。
「俺は、この国の一領主に過ぎません。 グレーツクは、ただの交易相手ですが?」
「いや、君は前の大帝に、『州長』に選ばれていただろう? グレーツクは独立したのだから、君がいわば国王となるのだ。」
ここ・・・・・こくお・・・・・!!???
落ち着け俺、落ち着け俺、落ち着け俺、落ち着け俺、落ち着け俺、落ち着け俺、落ち着け俺、おちつ・・
「ああああ・・・あれは、無理やりというか・・・・そもそも任命されたのは『代理』だし!!」
カイトは、あまりのバクダン発言に、『知らぬ存ぜぬ』の態度が出来なかった。
ここでそれをしていれば、少しは状況が変わったかもしれないのに・・・・
さらには、その件に関する『書状』を燃やしたことを話せば・・・
いまさら、後の祭りだが。
「おお!! さすがはカイト殿だ! これからもぜひ、仲良くしたいものだ。」
国王様が、ニッコリとこちらに笑顔を向けてくる。
カイトの発言は、『肯定』以外の何ものでもなかった。
バカなカイトは、ハトが住まっている脳みそをフル回転させ、この状況の打開策を導き出す。
そして・・・・
「新帝陛下、ならば『グレーツク』は独立しません。 ついでに言えば、俺は代理州長も辞めます。」
「いや、ムリだ。」
カイトの訳分からん発言は、間髪を入れずにバッサリと切り捨てられた。
カイトにはなぜ、拒絶されるかが分からなかった。
独立しなければ、後は丸く収まると思ったのだが・・・
おれはあくまで、『代理』だったわけだし。
「グレーツクの奴らの、たっての希望でな。 『俺たちは独立する。 トップはカイトだ。 それ以外のやつは認めない。 来やがったら、追い出すからな。』といって聞かねえんだ。」
「・・・・・。」
マジか・・・・・
俺よ、彼らに何をした!?
いや、救助と街の復興をしたな。
でも、それだけなんだが・・・・
「そこまで民に慕われているとはうらやましい限りだ。 私も貴公を見習わなくてはな。」
またも、ニッコリと俺に、笑顔を向けてくる王様。
助けてくださいよ、あなたの国の領主が、困っているんですよ!?
だがついぞ、助け舟は来なかった・・・
「そうだ、スズキ公よ、ベアル領は引き続き、貴公に管理願いたいのだが・・・独立しないでもらえると助かる。」
一転して、真剣なまなざしを送ってくる王様。
俺は今、どんな顔をしているだろうか??
最近、俺は不幸すぎる気がする。
何か事件や、災害が起こる。 俺の近くで。
そしてそれをどうにかすると、なにやら大きなものが付いてくる。
それも、返品不可なヤツが。
今回は、アリアになんと言ったらいいものか。
こわい、怖すぎる。
いままでがいままでだ。
今度こそ愛想尽かされてしまうに決まっている!
どうやったらそうならずに、この事態を収拾できるか・・・・
カイトの受難は続く。
まだこの話は、続きます。
どうするんでしょうか、カイトは。
ちなみに作中に出てきた『ゴルバ』とは、スラッグ地方の現地語で、『採掘者』という意味があります。
名前は前より、毒々しいですが、前のような独裁政治にはならないでしょう。
新帝がいい人そうですし。
・・・きっと。