第144話・国王様と。
これからも、がんばっていきます。
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目の前に広がる黒い海。
はるか遠くに見えるビルバス山脈。
青く、どこまでも広い空。
眼下に広がる、懐かしい王都の町並み。
そして・・・・
「スズキ公様、今回は参上いただき、ありがとうございます。 今回は公式な謁見ではないので、直接、玉座の間にお越しください。 そこで国王陛下が、お話をされます。」
「は・・・はい。」
だだっ広い、絨毯を敷かれた通路。
飾られたよく分からない調度品たち。
そして、俺が通るたび挨拶をしてくる使用人の皆様方。
俺は今、王宮にいる。
ここに来るのは、実に二年ぶりぐらいのことである。
二年前、ノゾミが『伯爵』に任命された際、呼ばれて赴いたとき以来だ。
あの時は、俺の身に何が起きたのかがわからなくて、放心していたっけな。
今回は局地転移ができたので、今回は移動時のお約束の護衛やメイドは、連れてきていない。
というか俺以外、今回は誰もついてきていない。
アリアは仕事。
ノゾミは『つまんなそう』の一言で・・・・
ヒカリも、大事をとって連れて来ていない。
魔族を王宮になんか連れてきてバレたら、とんだ大騒ぎになってしまうからだ。
ダリアさんも、同様である。
付いて行きたそうにはしていたのだけれどね。
何かトラブルでも起きて、ドラゴンであることがバレたら、ヒカリ以上に怖い。
「あのー・・今回のこの召喚状って、どんな用件なんですか?」
「私には存知上げません。 陛下が御自ら、お話をされます。」
今回の最大のなぞはこれだ。
『なぜこのタイミングで、国王様に呼ばれたのか。』
最近の俺は、特によい事も悪いこともしていない。
いや・・・イロイロとやりはしたが、それはスラッグ連邦がらみのことばかりで、この国にはさして関係はない。
ボルタ開港のことだろうか?
だが俺は、ベアルの街が発展したときも、呼ばれることは無かった。
『最近元気?』みたいな内容の手紙が、タマに届くぐらいだ。
今回も、話ではなくて手紙では済まなかったのだろうか、と思ってしまう。
さっぱり、彼らの意図が読めない。
カイトは、何度も首を傾げた。
だが、一ヶ月前から考えているものの、その中身が、遅々として読み取れなかった。
しかも今回は、『公式の謁見』ではないらしい。
召喚状まで送りつけているにもかかわらずに・・・だ。
通されるのも、『謁見の間』ではなく、『玉座の間』。
何か、恐ろしいことでも起きているのではないかー・・・・
と、カイトが不安を募らせるのも、無理は無かった。
「スズキ公様、この先は私も、入ることは許されておりません。 国王陛下は、すでに部屋の中でお待ちでございます。 それでは私は、これで失礼いたします。」
「はい・・・・」
『玉座の間』に着いたと思いきや、王宮の中からここまで案内をしてくれた宰相さんが、行ってしまった。
宰相さんですら同席を許されない話・・・
カイトの不安が増長した。
だが、いつまでもドアノブに手をかけたまま固まっていては、中の国王に失礼である。
覚悟を決めて、カイトは部屋へ入室していった・・・・・
◇◇◇
「よく来た、余の大公よ!!」
「お久しぶりにございます、国王陛下。 この度の召喚、身に余る光栄にございます。 我がベアル領もおかげ様を待ちまして・・・・」
玉座の間で、椅子に座る国王に、伏礼をするカイト。
部屋にはカイトと国王以外、誰もいないようだった。
そんなことはお構いなしにカイトは、このような場に相応しい挨拶をする。
若干、言い回しが違う気もするが、アリアに教わった『国王への挨拶』をする。
練習中、何度かんだことか・・・
「よいよい、堅苦しい挨拶は抜きにしよう、その前になんだが・・・アリアは・・・奥方は連れてきていないのか?」
「え~~っと・・・用事がありまして、彼女はちょっと・・・」
顔を上げ、申し訳なさそうな顔をするカイト。
対する国王は、あからさまにガッカリした様子を浮かべた。
もし脇に、宰相か、王妃様がいたら、絶対に止める構図だ。
残念ながらこの部屋には、カイトと国王以外に誰もいないので、咎める者はいない。
「あの・・・もしかしてアリアがいないと話せない内容でしたか? それなら、また後ででも連れて・・・」
「い・・・いや! 大丈夫だ。 問題は無い。」
一転して、シャキンとする国王様。
何かを呑みこんだ風にも見えたが、わざわざ詮索することは無いだろう。
そして国王からは、あの話が切り出された。
「まずはスズキ公よ、先日はボルタを開港し、海賊を見事打ち破ったようだな。 実にすごい。」
「はあ、まあ・・・・」
古い情報だな。
確かに海賊は打ち破ったが、もう何ヶ月も前のことだ。
もしかして、今回の謁見って、このほめ言葉だけなの?
手紙で良くね??
「さらにそのボルタから、スラッグ連邦への貿易を開始したというではないか。 実にすごい。」
「はあ、まあ・・・・・」
アリアもずっと言っていたっけな。
あの傲慢な国とは、公益がし難い状態が続いていたのだろうな。
もう、潰しちゃったけど。
「さらには、地震で壊滅した連邦の都市の復興に、尽力したというではないか。 実にすごい。」
「・・・まあ・・・・・・・」
情報が、新しくなってきた。
頼むから、これ以上連邦の話にはならないでください。
言い訳がキツいです。
そんなカイトの心情を、あざ笑うかのように、王の話は続いた。
「そこでカイト公よ。 モノは相談なのだが・・・・」
「相談? えっと、何を・・・・・」
ここにいたる話で、どうしてそのような話題に切り替わったのかが分からない。
カイトは、質問をしてみた。
すると王様は、『とぼけなくてもいい』みたいな態度をとってきた。
とぼけるも何も、話の中身が見えてこないのですが。
しかしこの先に続いた国王様の言葉に、カイトは度肝を抜かれることになる・・・・
王宮での話も、二、三話続くかも・・・・
こうして、鉄道が遠くなるのです。