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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第7章 ボルタと貿易
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第142話・足りないもの。鉄道ではない。

これからも、がんばっていきます!!

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!

「カイト、あの店に入ってみたい。」


「ほいきた。 あの店でいいんだな?」


俺が一角にある店を指差すと、ノゾミもそれにうなづくことで答えた。

カラフルで、かなり派手な印象を与える店だ。

看板には、『薬屋』と書いてある。

彼女は、少し教えはしたものの、未だ字は読めない。

店の見た目に、興味を持ったのだろう。

別に変な店でもないので、彼女の希望にこたえる。


俺は今、ノゾミと二人きりでベアルの街を散歩していた。

ノゾミが、『最近カイトは、私を置いて行ってばかり。 今日ぐらい、一緒に居たい!』と俺に直談判してきたのだ。

目にわずかに、涙を浮かべながら。

そういえばここ最近、イロイロな事情で屋敷を空けてばかりで、彼女には構ってやれていなかった。

それに彼女は、怒ったようだ。

そこで俺は、今日は仕事は休みにして、ノゾミと共にこの街を見て廻ることにした。

この街が出来てから、すべてを廻ったことは無かったので、いい機会である。


絶対に連れて行くと約束された、護衛、メイド、ヒカリも今回は付いてきていない。

これは、ノゾミたっての希望である。

街を決して出ないと言うことで、彼ら彼女らの了承を得た。

それで、現在に至る。


「こ・・・これは大公様!! なぜこのような薬屋に!?」


「いやー・・その・・・迷惑だった?」


「いえいえ、とんでもございません!! どうかご存分に、店内をご覧ください!!」


ご覧くださいって言われても、飾り用の見本の薬しかないけどね。

でもノゾミにはその薬が、色鮮やかなキレイな水にしか見えていないので、案外楽しそうだ。

まあ、あくまで『見本』なので、実際そうだし。

これは、薬の劣化を防ぐためだと聞いたことがある。


「・・・・・?」


店主が、俺の背後で首をひねっている。

先ほどから、このような事ばかりである。

一軒入っては不思議がられ、一軒入っては『何事か』と騒がれ、一軒入っては首をひねられる。

そうですよね、疑問しかないですよね。

ノゾミは(見るからに)どこかの領主、俺はこの街の領主。

そんなヤツが、街を二人だけでフラフラしていたら、怪しいですよね。

無論、バルアから来た者もこの街には多いので、ノゾミを見て『あっ!!』と声をあげる者も多い。


カイトは、改めて自分達のこの街における、『立場』と言うものを認識させられた。


「カイト、このお水作れる? 私の部屋に飾るの!」


彼女が指差すのは、赤い水。

むろん、売っているのはホンモノの方。

つまり・・・・


「うん、作ってやるよ。 見た目が近いやつをな。」


やったーと、バンザイするノゾミ。

彼女はどうしても、これが飾りたくなったらしい。

『風邪ポーション』

風邪を引いたときに飲むと、治りが早くなる薬。

ようは、かぜ薬。

こんなのを部屋に飾るなぞ、とんでもないことだ。

主に、もったいないと言う意味で。

ポーション系は、値段が高いのだ。


「あの・・・・ポーションをお出ししましょうか? お代は結構ですので・・・」


「いや、いい。 それは教会にでも寄付してくれ。」


飾る目的で高価な薬をもらうなぞ、出来ようはずも無い。

それならば、教会の救命施設にでも寄付してくれた方が、実に有効的である。


「カイト、次の店に行こう!! 次はあの店がいいな!!」


「ああ、あれか。 じゃ、すんません、お邪魔しました。」


「いえ、こちらこそ、何もお構いが出来ませんで・・・・」


次にノゾミが目をつけたのは、羽の看板の、『ペン屋』。

俺たちは、薬屋を後にし、足早にその店へと向かった・・・・・



◇◇◇



「カイト、今日は楽しかったね。」


「そうか、それなら良かった。 俺も楽しかったよ。」


夕方。

陽も傾き、あたりは茜色あかねいろに染まっている。

街ではすっかり、長い時間を過ごしてしまったようだ。

俺もおかげで、この街が結構、何でもそろっていることに驚いたものだ。


二年半前にこの街に来たとき、民家十数軒しかなかった頃が懐かしい。

それもこれも、アリアやイリスさんのおかげだ。

この街に教会ができたおかげで、なぜか知らんが、信者っぽい人が多く来た。

それに触発され、宿屋や、料理屋が出来た。


それに呼応して住民も増え、店もどっと増えたのだ。

賑やかなのは、素直に楽しい。

しかし、何かがまだ、足りない気がしてならなかった。

王都やシェラリータなどでは必ず見た、何かが・・・・

首元まで出掛かっているのに、重い浮かばないな~~。


そんな風にカイトが悶々としているのを知ってか知らずか、ノゾミがこんなことを言ってきた。


「カイト、私また、『ギルド』とかで前みたいに、カイトと一緒に依頼を受けてみたいな。 今日は見つけられ無かったけど・・・・また今度、探して行こうね。」


「・・・・・あ。」


思い出した。

この街に未だ、無いもの。


『冒険者ギルド』


これが無い。

どうりでこの街では、ほとんど冒険者風の人間がいないと思った。

ギルドが無いのでは、依頼が受けられないので、居ようはずも無かった。

いろんな意味で平和すぎて、気がつかなかった。


と、言うより普通、冒険者が解決するような事件を、この街では領主自らが解決していた。

街道整備が然り。

家の建設も然り。

何かの損壊も然り。

農業被害も然り。

海賊も然り。

お手伝いなども、地域住民同士で助け合って解決する。

ギルドが無くて、不便を感じなかったのが、主たる原因である。


だがこの先のことを考えると、何かと便利な『冒険者』は、この街に居て欲しかった。

冒険者と言っても、仕事はいろいろあるのだ。

迷子探し。

街の清掃。

店のピンチヒッター。

家庭教師。

などなど・・・・・・


居るのと居ないのとでは、だいぶ違う。


カイトの方針が、決まった瞬間だった。


「アリア! 冒険者ギルドを呼んでくれー!!」


「あ、カイト! 置いて行かないでよ!?」


この日の夕方、発展を続けるベアルの街に、馬よりも速いスピードで走る二人の貴族の姿が多数、目撃された・・・

もう少しで本題・・・

になるといいな。

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