第141話・真実と事実
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「カイト様、一体あなたは、何をしたのですか?」
「・・・え?」
突然、執務室に来訪したかと思えば、アリアはこちらをすごい眼差しで睨む。
カイト的には、最近は・・特にスラッグ連邦から帰ってからは、彼女の顔がこうなる心当たりが、多くあったので、どれのことで怒っているのか、見当もつかない。
だが、今日も何かの彼女の琴線に触れる事が、発覚したようだ。
ドラゴンの正体などがバレては、事である。
どうにか、ごまかさねばならない。
「カイト様、誤魔化そうとしても無駄ですわ。 きっちり白状していただきます。」
「・・・あい。」
常に俺は、彼女に一手先を行かれている。
アリアは、心を読むことができる特殊スキルが使えるに違いない。
俺の察知魔法ではわからないので、かなり高度だ。
「ヒカリから、昨日の夜に話を聞いたのです。」
『口に門戸は立てられない』か・・・・
ヒカリには口止めしていたのだが、無茶だったようだ。
彼女もかなり活躍したので、自慢したかったのだろう。
まあ、アリアを慕っているみたいだし?
話したくなる気持ちは分かるよ。
「ヒカリは、『お兄ちゃんが、ブオーン、グオーン、ズギューンだったんだよ!? 詳しいことは秘密って言われているんだ。』と言って、これ以上は何も話してはくれませんでしたわ。」
アリアが腕を組んで、俺を見据える。
あれ!? 自分の自慢じゃなくて、俺の話をしたの?
しかも内容は話さず、擬音だけ。
ヒカリは俺の口止めを、一定のラインで守ってくれたようだ。
案外、彼女は口が固いようだ。 実にいい子だ。
でも出来れば、擬音も話してほしくはなかった。
アリアはその辺が、かなり鋭いので。
「この音に関して、ご説明いただけますわね??」
「・・・・・。」
大丈夫だ。
彼女はまだ、内容は知らないご様子。
危なくはないラインで、話をしよう。
「じ・・・実は、その現れたドラゴンが、グラードの街を破壊しようとして・・・」
「や・・・やはり現れたのは破壊竜・・・・!!?」
「いや、違う違う!! 大帝との話が折り合わなかったみたいで、見せしめに・・・的な?」
真実は濁して、事実だけを話す。
これが精一杯である。 彼女たちの『ドラゴン』ワードへの態度から、ダリアさんのことは伏せねばならないし、ヒカリがそれに加わったなどと言えば、俺は殺されるだろう。
比喩ではなく、言葉そのままの意味で。
「な・・・なるほど。 きのう仰っていた『山を崩した』と言うのも、その過程でのことだったのですね?」
「う・・うん、そう!」
昨日これに関しては、別の話題に切り替わったりして、すでに忘れていると思っていたが、彼女は覚えていたようだ。
まあ、『山を崩した』は、結構強印象な内容だったしな。
でも、それに関しての追求はなさそうで、正直助かったぞ。
「立ち聞きしたと言う、大帝とドラゴンの話の内容はいかがなものだったのかは、本当にお分かりにはならないのですか?」
「・・うん、さすがにそこまでは聞こえなかった。」
言った本人なので、バッチリ覚えているのだが・・・・
恐らく、数日中には連邦の話が、ここにも届く。
下手なことを言ったら、余計にマズいことになる可能性大だ。
ここはあえて、知らん振りをする。
「そうですか・・・・では、本題に移りますわ。 カイト様、ドラゴンに、一体あなたは何をしたのですか?」
「・・・・。」
これも本人だ。
俺がそのドラゴンなので、正直な話、マジで何もしてはいない。
なんと説明したものか、しばし、言い訳を考える時間がほしいものだ。
・・・・そんな時間、あるわけがないけど。
「言い訳なんかお考えにならずとも、察しはついておりますわ。」
アリアの超然とした態度に、最悪の可能性が、カイトの頭をよぎる。
アリアは、鋭い。
そんなはずはない、バレるはずはない。
そんな思いがよぎるが、アリアの前に、その考えは無いに等しい。
なによりヒカリの擬音で、彼女が何かをつかんだ可能性は高かった。
俺には、アリアに言える言葉が見つからない。
そして・・・・
「カイト様、あなたはヒカリとダリアと共に、ドラゴンと戦いましたわね?」
「・・・・え?」
カイトとしては、予想外のアリアの発言に、目を丸くした。
アリアがまさかの、的外れなことを言ったのだ。
彼が驚くのも、無理は無いのかもしれない。
特に、彼は『日本』と言う、ドラゴンがいない世界にいたのだから。
だが彼女のこの考えは、この世界の住民として、当然である。
常識はずれな力を持つカイトとダリア。 共に人間。 (と、思っている)
そして、この世界の強者とされる魔族のヒカリ。
このパーティーでなら、ドラゴンとも戦えると踏んだのだ。
そもそもこのパーティー内には、ドラゴンがいるので、戦いにすらならない可能性のほうが十分に高いが。
とにもかくにも、アリアは勘違いされたようだ。
これを利用しない手は無かった。
「ヒカリはね、戦ってはいないんだ。 ちょっと魔力操作ミスって成長させちゃって、街の人たちに騒がれたりはしたけど・・・身を守るために作った木人形も少し暴走しちゃって、街になだれ込みかけたり・・・・」
バレる前に、バラした。
魔族の話はきっと出るだろうし、動く木の話も然り・・・・
少し変更して、内容をお伝えした。
魔族なんて、あの大陸にはいなかったので、この話は必要だった。
「ドラゴンはね、お腹が空いてたみたいで大帝たちを食い殺して・・・」
「!!!」
アリアが顔をしかめる。
ここで切り上げたいが、後でまた追及されたときに面倒なので、話を続ける。
「街も襲いかけたから、剣と魔法で追い払ったんだ。 いやー話が分かるドラゴンさんたちで助かったよ。」
ドラゴン、悪者になってしまった。
でも事実だけ話すと、こうなってしまうのは仕方なかった。
この説明に、アリアは呆然とした。
分かっていたが、この旦那は規格外すぎる。
ドラゴンと戦って、追い返す人間。
ステータス欄の種族には『人族』とか書いてあったが、詐称しているのではあるまいか?
考えても、仕方ないことだが。
そしてアリアは、呆れたと言った風に、踵を返し、この部屋を退出していった。
突っ込みどころ満載だったが、これ以上の話は、無駄だと悟ったのだ。
ドラゴンと戦って勝つ・・いや、無傷な者に、この心配していた気持ちを伝えても、無駄だろう。
これにて、事の真実は闇の中へと葬り去られた。
だが問題は、これだけでは無い・・・・・・
あと数話で、『ボルタと貿易』編、終了です。
そのあとは・・・・
むふ♪




