第140話・ご報告♪
これからも、頑張っていきます!!
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おれが転移魔法で屋敷に帰ると、アリアが出迎えてくれた。
もちろんいつもどおり。
そこには、『心配していた』感は、微塵も無い。
ここに連邦の邦都がドラゴンに襲われたとの情報が届くまでは、幾日かかかることだろう。
下手に隠しても、いつかはバレるので、これはしっかり報告する。
嘘をついたら、後が怖い。
「アリア、実はグラードにドラゴンが出たんだ。」
「え・・・ドラゴンですか!?」
アリアは、目を見開いて驚いた表情を浮かべる。
当然の反応と言えよう。
この国では、ドラゴンは神聖視はされていないが、『力』の象徴とはされている。
それが連邦の首都に出現したとなれば、大事である。
「ドラゴンは二匹でな。 おおきかったぞ~~~。」
おどけたように言うカイト。
彼的には、ドラゴンはデカくて、強い動物である。
それ以上でも、それ以下でもない。
だから、それを強調した。
だがカイトのそれは、アリアの顔を青ざめさせるに十分であった。
「二匹ですか!? そ・・それで、どうなったのですか!?」
「いや・・・・山を一個、ふっ飛ばしちゃった。」
テヘッと、アリアに差し支えない範囲で、説明をするカイト。
彼としては、『街は襲われていない』と言うことを強調したかったに過ぎなかった。
だが、カイトはその肝心な部分をまだ、彼女に言っていない。
つまりこの説明は、彼女に『恐怖』を感じさせることしかしない。
「や・・・山をも崩す破壊竜・・・うぅぅぅ・・・・・!!!」
「アリア、どうして泣くんだ!? しっかりしろ!!」
この世界では、ドラゴンは神聖対象ではなくとも、『力』の象徴たる存在である事は、共通している。
そのドラゴンが、山を破壊した。
グラードは言わずもがな・・・
とアリアが考えるのは、当然と言えた。
そして彼女は、それを『破壊竜』と言う、伝説上の存在と重ね合わせた。
これはその昔、三日三晩、遥か東方の国で現れ、破壊の限りを尽くしたと言う話である。
これは、この世界のおとぎ話である。
それによると、破壊竜は結局、神からの怒りを買い、その姿を消滅させられたらしい。
その竜が、再び降臨したと、アリアは考えたようだ。
この領地は連邦に程近いので、無事ではすまないだろう。
アリアの心中は、地獄の暗闇へと突き落とされたに等しかった。
「だ・・・大丈夫だよ、アリア!! ドラゴンたちはさ、クズ大帝に話があっただけみたいだからさ。」
「ドラゴンが話し・・・ですか?」
ここまで言って、カイトはしまった!と思った。
これでは、おれがその場にいたことが丸分かりになってしまう!!
下手をしたら、ダリアさんがドラゴンと言う話まで、しなければ無くなる!!
それは、なんとしてでも避けねばならなかった。
ここまでの話だけでも、バレたらどうなるか、考えただけでも怖いので。
そこでカイトは、かなりお茶を濁すことにした。
「いや、詳しい事は知らない。 俺は外から、魔法で少し見ていただけだから。」
「・・・・・。」
ノゾキということにして。
最悪である。
国の重要な場を透視で見るなど、死刑にされても文句は言えまい。
まあ、ここは突っ込んでも仕方が無いという事で、アリアもスルーすることにした。
「そうですか・・・・ まあ、なんでもなかったのなら良かったですわ。 私はてっきり、カイト様がそのドラゴンとお戦いになったのかと・・・・」
「・・・・。」
アリア、いい線言ってるよ!!
誰がこの男が、『そのドラゴン』だなんて思うだろうか。
アリアの想像は、かなりカイトの行動パターンを、うまく分析していると言えた。
今回は、おしくもハズレだが。
少し考え込んだ後、アリアはこれを考えるのはヤメた。
かなり気になることではあったが、彼を追及しても、何もではしないだろう。
そして彼女は、別の質問を彼にぶつけた。
「カイト様、それでは大帝には、一体何を賜ったのですか?」
「え”?」
アリアが、かなり真っ当な質問をしてきた。
そもそもカイトが連邦の首都、グラードへ向かったのは、大帝に呼び出されたからである。
ここから分析して、アリアはきっと、カイトが何かをもらったに違いないと思っていた、
それは、当然の考えと言えた。
だが、これはカイト的には非常にマズイ質問だった。
大帝からもらったのは、『グレーツク代理州長』の権限。
それと、『ナントカ』とか言う、称号である。
これが書かれた書状は、カイトはすでに灰にしてしまっていた。
今は、森の土になっていることだろう。
あれは、大変にいらないモノだったので、後悔はしていないが、それをアリアに話すのは、問題があった。
何個かの理由で。
幸いにも、スラッグ連邦の大帝は今や、行方不明だ。
この書状を渡されたときにその場にいた者たちも、ほとんどの者が、行方不明中。
要するに、あの書状の存在を知る者は、ほとんど存在しない!!
『知らぬ存ぜぬ』を押し通す事は、かなり容易といえた。
だから・・・・
「いや、お礼を言われただけ。 後は・・・・ナニモナイヨ?」
「お礼の言葉だけ・・・ですか?」
そう、俺はお礼を言われただけなのだ。
後は『じゃーねー』と帰されただけ。
書状など、最初から存在しなかったのだ!!
そういうことにした。
大帝のひととなりを知るアリアも、「そうですか・・・まあ、あの大帝ですからね。」と、追及は受けずに済んだ。
アリアの考えでも、これは珍しいケースには当たらなかった。
特に、横暴で自分勝手なスラッグ連邦の大帝に関しては。
グレーツクとの交易における、何かがあるのではないか、と少し期待していたアリアは、少し残念そうにした。
これにて一件落着。
すべての問題が解決した!!
と思っていたカイトだったが、正直な話、まだこの話は終わっていなかった。
それを知るのは、もう少し時間が経ってからのことだった・・・・・
まだ、続きます。




