第139話・恐怖のお時間です
これからも、がんばっていきます。
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カイトはここまで来て、上機嫌だった。
この国の『大帝』を倒し、国を解体させるためにダリアさんと遂行した作戦が、事の外うまくいっているのだから、当然と言えた。
まずは登場。
これで、ドラゴン姿に戻ったダリアさん。
それと幻惑魔法で自らの見た目を、ドラゴンにしたカイト。
空から着地、みたいな登場をしたかったが、ダリアさんも人間のカイトも、普通には飛べない。
そこで、浮遊魔法を行使して、これをこなすことにした。
短い距離ならば、これでイケた。
御殿の中庭に着地し、あのクズ大帝を呼び出した。
あの慌てようと言ったら・・・・
額に入れて飾りたいぐらい、愉快だった。
そして交渉。
この国では、ドラゴンが神聖視されているようだったので、高圧的にさせてもらった。
『大帝を辞めなきゃ殺す』ってね。
そこそこ高い山も、爆発魔法で吹き飛ばしてしまった。
こうなるとは思っていたので、住んでいた動物たちには、避難してもらった。
彼らには、悪いことをしてしまったな。
そして街を襲う者・・・
成長魔法で、大人の姿となったヒカリに、木で作った人形軍団を率いてもらった。
時間が無かったので、人形といっても、木そのものが、動くに過ぎない。
テキトーに魔力をこめて作ったわりに、上出来だと思う。
成長したヒカリの立ち姿は、遠めで見ると俺でさえも、ゾクリと背筋が震えるほどだった。
むろん、彼女の中身はそのままだし、『街には入ってこないように』と言ってあったので、危険は無いのだが。
これで、とうとう傲慢なクズ大帝も、『大帝をヤメる』と言ってきた。
ここまでは、筋書き通りいった。
予定では、これを信じてそのまま、引き上げることになっていた。
だが、欲が出た。
もう少し、このバカをいじりたくなった。
カイトも、大概バカである。
「ふむ・・・ようやくヤメる気になったか。 愚か者は、決断も遅いようだな。」
ダリアさんを見て研究した、『尊大なものの言い方』を連想して、言葉もつむぐ。
ドラゴンとして、いつもの言い回しでは迫力に欠けるのだ。
これはうまくいった。
今も、あのクズ大帝は苦虫を噛み潰したような顔をしている。
相当悔しそうだ。
ダリアさんに合図し、今日、四度目の咆哮をしてもらう。
するとグラードの街を取り囲んでいた木人形軍団が、一斉に森へと戻って行った。
ヒカリも先ほど覚えさせた、『透明』の魔法で、その姿を消していった。
『新しい魔法!』と、かなり喜んでいたな。
これで、予定の演出バッチリ。
「我々は、定期的にこの国を見に来る。 その時、また貴様が『大帝』をしていようものなら・・・・」
大帝に、笑みを浮かべてやる。
ドラゴン顔でこれは、相当怖いはずだ。
大帝も、顔面蒼白で赤べこのように、首を振る。
これで良し。
予定の『大帝辞職の儀式』は終わりだ。
ダリアさんは、ここで帰ろうとする。
俺が彼女に伝えた計画は、ここまで。
この先は急遽、思いつきでやることにしたので、彼女は知らない。
今、説明なぞしている暇は無いので、俺は彼女を制止をするにとどめる。
彼女は、少し不思議そうな表情をしたが、そのまま黙って付いてくれた。
この先は、予定に無いことでございます。
「さて、せっかくここまで来たのだ。 貴様たちでもつまんでから帰るとするか。」
彼らに笑みを向ける。
同時に、ちょっと幻惑魔法をかけてやる。
クズやろう共の、恐怖タイム開始である。
ダリアさんが、嫌そうな表情をこちらへ向けてくる。
マズそうだから嫌だ、とでも言いたいのだろうか?
むろん、誰もドワーフ風情なぞ喰いはしない。
これは、『恐怖』の演出なのだ!!
「そ・・・そんな! 我はあなたの言うとおり・・・・」
「腹が減ったのだ。 貴様はマズそうだが、少しの腹の足しぐらいにはなりそうだな。」
ここまで俺が言ったところで、数人の兵士たちが発狂したように、この場から逃げようとし始めた。
しかし彼らは、この中庭から出ることはできない。
幻惑の魔法で、彼らの方向感覚を一部、狂わせているのだ。
彼らにはなぜか、『中庭から出ても、また中庭になる』と言った風に見えているはずだ。
数人のそのような状況に、この場は一転してパニック状態になる。
しかし、誰一人として、この中庭から出る事は叶わない。
それに追随するように、彼らには仲間が俺に『喰われて行く』幻を見せる。
それはもう、悲惨な光景が彼らの瞳には写っているだろう。
傍目には、全員腰を抜かして一部、気絶したり、気が狂って大笑いしている風にしか見えなかったのだが。
むろん、誰一人として怪我なんかしていない。
そして肝心の大帝は・・・・・
泡を吹いて気絶してる。
よしよし。
コイツは害虫なので、この国に置いておくのはヤメた。
そ・こ・で♪
「ダリアさん、転移でこいつらをさ、『魔の森』に捨ててきてくれない? ちょっとぐらいならつまみ食いしてもいいよ?」
「こんなマズそうなものは、食べたくありませんが・・・・捨ててくるだけならば。 魔の森以外に、指定はございませんか?」
「全員、バラバラに捨ててきてくれる? 終わったら、ここに帰ってきて。」
「かしこまりました。」
ドラゴン姿のダリアさんに、捨ててきてもらいたいヤツ五、六人を渡すと、彼女はそのまま転移して行った。
後には、幻で恐怖におののく、兵士たちの姿だけがあった。
彼らは、『大帝たちは、ドラゴンに食い殺された』と思っているので、問題は無い。
俺はしばし、ダリアさんが帰ってくるのを待つことにするのだった。
魔の森には、魔族や魔物が跋扈しています。
ドワーフは強いですが、どうなることやら・・・・
それを狙って、カイトは捨ててきてもらったようです。
クゾ大帝と、それに似寄った考えのやつらを全員・・・・・
ちなみに全員、武器は持っているようです。