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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第7章 ボルタと貿易
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第138話・大帝ヤメます。

これからも、よろしくお願いいたします。

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!

数百年も昔、スラッグ大陸には大小さまざまな国々が存在した。

その国々の住民の大半は、ドワーフと呼ばれる好戦的な、小人族であった。

領土拡大をもくろむ彼らは、血で血を洗うような、戦いを幾度となく続けてきた。

だがある時、『大帝』という存在によって、この大陸は、初めてひとつにまとまることになる。


それが、『スラッグ連邦』である。

『スラッグ』とは、現地語で『富み栄える』という意味の言葉だ。


初代大帝は、多数の国と連合を組み、ひとつの国とした。

ドワーフの力の象徴たる『ドラゴン』に任命された、選ばれし王ともなれば、反対する者も少なかったようで、大きないくさになることは無かった。

要するにこの国は、多くの国々が寄り集まってできた、細胞のような国ということだ。


しかしそれは、ひとつの前提・・・・

つまり、『ドラゴンに任命された、選ばれし者が大帝』という事。

ここ数百年間、ドラゴンは現れていなかったので、これは子孫が受け継いでいた。

だが、その前提は今、崩されようとしていた・・・・


「この国を解体し、すべてを独立させ、貴様は大帝をやめよ。 それが約束されれば、我はここを立ち去る。」


「な・・・・・!!」


目の前のドラゴンに、突如としてそう、告げられてしまったのだ。

『大帝をやめよ』

ドラゴンは、神の使いとされる。

この言葉を受ければ、素直に従うほか無いのが、常識とされている。

・・・が、数百年の間に、『ドラゴン信仰』もだいぶ、形骸化し始めてきていた。


「お・・・お待ちください、ドラゴン様!! なにゆえそのような事を・・・!!!」


大帝は、言い返した。

この大陸が平和を保っているのは、自分がいるからだ。

そう思っていた彼にとって、このドラゴンの言い分は、まったく理解ができなかった。


「あまりにも自己中心的な政策や高圧外交で、おまえは周辺国家を翻弄ほんろうさせた。 あまつさえ、自国の民に対する、その命を軽視した姿勢。 我々はこの国に対し、制裁を加えることとした。  しかし民に罪は無い。 そこで貴様にのみ、制裁を下すこととする。」


ドラゴンの言葉に、大帝を不安げな面持ちで見やる兵士や側近たち。

しかし当の大帝は、身に覚えが無いといった風の態度をとる。


「この国は、大帝たる我々の存在のおかげで、ここ数百年の間一度も大きな大戦は起きていません。  もちろん私も、現在も粉骨砕身・・・・」


胸を張る大帝。

しかしそのあまりにも豪胆な態度も、もう一体の赤い竜が咆哮とともにブレスを吐いたことにより、中断させられる。

先ほどから話しているドラゴンの視線も、さっきよりも険しいものとなっている。


「いま、ここで貴様が大帝を辞するというのであれば、その命、助けてもよい。 どうだ?」


「・・わ・・我は、先祖の造りしこの国を・・・・」


いまだ、ビクつきながらも毅然きぜんとした態度を崩さない大帝。

ドラゴンも、これはだめだと思ったのか、顔を上げその右手を、遠くの山へかざす。

この大陸でもかなりの高さを誇る山で、その頂には、雪を冠している。

何をするのか、この場のもの全員がそう考えたところで、事態は次のステージへと進んだ。



ドオオオオオオーーーーーーーーーー・・・・・・ンン!!!!!



山の雪を冠していた部分がすべて、吹き飛んでしまった。

あわれその山は、ほかの山々とほぼ、同じ高さまで低くなってしまった。

いまや見る影も無く、崩壊している。

火山ではなかったのが、不幸中の幸いといえた。


だが、この場の者たちに『恐怖』を植えつけるには、十分であった。


「この国、すべて焦土に変える。 まず手始めに、この都市を破壊する。」


「な・・・ま・・・・・!!」


大帝の制止の声は、もう一体のドラゴンの巨大な咆哮ほうこうで遮られた。


その声に呼応するように、グラードに隣接する森の一角が、ざわめき始めた。

よく見るとそれは、森の木々自体が動いているようだった。


「た・・・大帝!! 森の木々がグラードの街に向かってきております!!」


「なんだと!? ど・・・ドラゴン様!!」


信じられない見張りの兵士の報告に、大帝は焦りを見せる。

森の木々は、統率されたように、街の入り口へ向かい、集結していった。

よく見るとその中心には、妖麗な女性が、こちらを見据えて立っていた。

彼女の胸元には、赤黒い魔石が胸元に光っている。

言うまでもない。

彼女は魔族だ。

それも、こちらに敵意をさらけ出しているのが確認できる。

何か、恐ろしいことがこの国に起ころうとしている事が、彼にも理解できた。

当のドラゴンは、ニヤリと笑みを見せた。


「わが眷属けんぞくに、民の街を破壊させる。 どうなるかは、彼女次第だ。」


「そ・・・そんな・・・・!!」


魔族が、街を襲う。

どうなるかだなんて、想像に難しくは無い。

魔族は、他種族をゴミ位にしか考えていないのだから・・・

ドラゴンも、それを分かってこうしているのだろうと考えられた。

逃げようにも、ドラゴン二体がいるこの状況では、逃げ出せなかった。

逃げれば、あっという間にこのドラゴンたちに、食い殺されてしまうだろう。


万事休すだ。


この状況で、自分たちが助かる方法は、一つしかない。

大帝も、そこにようやく、思い至ったようだった。


「ドラゴン様!! 『大帝』の地位は返上いたします!! ですからこの命だけは・・・!!」


しかし、大帝の悪夢は、これからだった・・・・・


長くてゴメンなさい。

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