第137話・ドラゴンと言う存在
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スラッグ連邦は、鉄鉱石を掘り出すのが、主な産業となっている。
これは、ひとえにこの大陸が、地震などの影響で渓谷があちこちに存在し、崖に古い地層などが現れていること。
それと、この国の国民が、『採掘業』を得意とする、ドワーフ族で成り立っているからである。
彼らは金にめっぽう強欲で、商売も上手だ。
そのくせ故郷からは決して、離れようとしない。
それが、連邦が数百年もの間、富み栄えた理由である。
要するに、産業を独り占めにし、使い道だけを教えたのだ。
そして今回のこれも・・・・
「大帝陛下、思惑通りとなりましたこと、この国の国民を代表してお慶び申し上げます。」
「かの者には、あの領の管理をさせ、その後に不祥事でわが直属の配下となる。 あの力は有用だ・・」
フハハハと、薄笑いを浮かべる、大帝。
「しかし大帝陛下、恐れながらスズキ公はまだ、不祥事など起こしてはおりませぬが?」
ここで人間の宮廷関係者が、大帝に対し申し開いた。
だが彼はこの質問の答えを聞くことはなかった。
聞く前に、彼の体は、胴と首を切り離されてしまったのだから・・・・
「このゴミが。 我の楽しみを汚しおって!! 覚えておけ、我が『不祥事が起こる』と言えば、必ず起こるのだ。」
大帝の右手に握られた大剣には、ベッタリと、血がついていた。
それをすかさず、側にいた者がその手に持った布で、拭き取った。
この国において、大帝は、力の象徴たる『竜』に任命された、唯一無二の存在であると言われる。
その彼の言葉は、いわば『絶対』と言われているのだ。
「ははっ!! 大帝陛下、わが連邦はこれで、世界の覇者となりましょうぞ!!」
「そのとおりだ。 この世界は、我が連邦にその力を持って、ひれ伏すこととなるのだ。」
グハハハハハ!!
と、笑う大帝。
だが彼らの笑い声は、すぐに途絶えることとなる。
グオオオオオオオオオオオーーーーー・・・ンンンン!!!
ズシン!!!!!!
大地をも揺るがすような咆哮とともに、御殿全体が大きく揺れた。
この場にいる全員が、その大きな揺れに、体勢を崩す。
「何事だ! 地震か!?」
大帝が、動揺した風でそんな疑問を口にする。
この国は前述のとおり、断層が星の数ほど走っている。
それだけ、地震も頻発しているのだ。
この間もそれで、グレーツクに大きな被害が出たのは、記憶に新しいことだ。
しかし、彼のそんな考えはすぐに報告に来た兵士によって、否定されることとなる。
「大帝陛下、申し上げます!! ドラゴン二体が、御殿の中庭へ着地しましてございます!! ドラゴン様は、陛下に直ちに参上するようにと・・・」
「なに、ドラゴンが!?」
その報告に、この場の者は全員が、その動きを止めた。
ドラゴンはここ数百年、この国では見ることが無くなっていた。
それは、『神がこの地のドワーフによる自治をお認めになったからだ』と言われている。
これは、この国の『建国記』と言う童話にも載っていることだ。
そのドラゴンが、姿を見せた。
しかも二体も。
それも大帝陛下との、会見を望んでいる。
動揺せずにおれぬのが、当然と言えた。
「粗相の無いようにせよ、我もすぐに向かう!!」
「御意!!」
それだけ伝えると、大帝は自分の私室へと向かった。
神の使い、ドラゴン。
それに会うためには、今のような血塗れの服ではだめだ。
戴冠式のときに着たような、豪奢なものでなくては、失礼に当たるだろう。
だが、あまり神の使いをお待たせしたとあっては、国民への印象が悪くなる。
大帝は、足早に私室へと向かって行った・・・・・
◇◇◇
「遅かったな・・大帝よ。」
「も・・・申し訳ございません、ドラゴン様。 突然のご来訪に、支度がありましたもので・・・」
二体いる赤いドラゴンの内に一体が、大帝たちをにらむ。
それだけで、先ほどまでかなり高圧的な印象を与えていた大帝たちは、借りてきた猫のようにおとなしくなった。
それはかなり、滑稽なものにも見えた。
そんな彼らの姿に、ドラゴンがフッと笑みを浮かべる。
だがその笑みは、ドラゴン特有の強面で打ち消されており、誰も気付く事はなかった。
体躯はおよそ、二十メートルほどあり、見るものを圧倒させる。
その見た目もあいまって、その威風堂々(いふうどうどう)とした姿は、恐怖すら感じさせる。
『何か御用ですか』と発しようとした大帝も、その存在感を前に、言葉を失った。
そしてドラゴンから、次なる言葉が発せられた。
「まあ良い。 今回は、あることを伝えに参った。 それが聞き届けられるならば、我々はここを去ろう。」
その瞬間、もう一体の赤いドラゴンがニヤリと笑みを浮かべた。
その恐ろしいまでの表情に、この場の者すべてが息を呑んだ。
返答しだいでは・・・・と言うことか?
彼らは大帝含め、悪寒が背筋を走った。
そしてそのドラゴンからは、信じられないことを告げられることとなった。
「フフフ・・・怖がる必要はない。 叶えられれば、我々は直ちに、ここを立ち去るのだ。 二言はない。 ・・そう、我々の望みはただひとつ・・・・」
一拍の静寂と、緊張感がこの場を支配する。
そしてドラゴンは、その鋭くとがった爪を、大帝陛下のほうへと伸ばした。
「この国を解体し、すべてを独立させ、貴様は大帝をやめよ。 それが約束されれば、我はここを立ち去る。」
説明を入れます。
この国では、『大帝は、ドラゴンが任命する』と言われていると書きましたが、これは伝説上のことです。
昔話の『建国記』に、そのようなくだりがあるのです。
ドラゴンは、神の使いとして、登場した様子。
だからこの国では、ドラゴンは神聖視されているのです。