第135話・自己中に振り回されて。
これからも、頑張って行きます。
感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!
「近う寄れ。 これでは話がしにくい。」
「・・・・はい。」
今俺は、スラッグ連邦の大帝なるヤツの前にいる。
横には同じく俺のように平伏姿勢をとるアリア・・・に見えるヒカリ。
直立不動の屋敷のメイド、ダリアさん。
彼女は透明なので、直立でも問題は無い。
言われた透りに、彼の玉座の近くに寄るカイト。
平伏・・・・つまり土下座の姿勢のままで動くので、傍から見るとかなり、不恰好に見える。
だが、この国ではそれが普通らしい。
いやもう・・・うん、何も言うことは無い。
でも、さすがだね。
「アーバン法国はベアル領主を仰せ付かっております大公、スズキでございます。 このほどは大帝陛下御自らのお呼び出し、誠にありがとうございます。」
アリアに教えてもらったとおりに、形式通りの挨拶を行う。
ここからは、暗記した百種類の返答が、大いに役立つことになる。
アリアよ、いつもながらありがとう。
「スズキ公よ。 堅苦しい挨拶は抜きにしよう。 面をあげよ。」
アホ大帝のお言葉に、恐縮と言った感じ(のフリ)で顔をゆっくりと上げる。
するとそこにいたのは、ドワーフの大帝だった。
ドワーフ大帝は、尊大な態度のまま、俺に向かう。
彼は満足そうな顔をすると、話を続けた。
「まずは礼を言わせてもらおう。 貴君はわが国の属領『グレーツク』の復興を手助けをし、わが国に対し、大きく手を尽くしてくれた。 賞賛に値するぞ。」
うわー。
思ったとおりの、すごい上から目線。
でもこれは、ビックリだ。
礼を言われるとは、思わなかった。
だが油断は出来ない。
アリアも、『礼を言ってきた後、グレーツクは復興途上なので、これからも継続支援を。と、行ってくるに違いない』と言っていたので、身構える。
むろん、これの答えはノーだ。
それに対する良い言い回しも暗記済みである。
ふふ・・・今の俺は、鉄壁だぞ?
そんな俺の態度に気が付いたようで、大帝は不敵な笑いを浮かべる。
やはり何かあるようだ・・・・・・!!
「かの地ではあの地震以来、反乱が起きていてな。 彼らは派遣された『州長』を殺害し、領界ぎりぎりまで進出してきているのだ。」
「・・・・・へ?」
どういう事??
反乱って・・・・
確かに派遣された州長はツルツルテラテラした、ブタみたいなヤツだったからあのドワーフたちが反発するのは分かるけど・・・・
「彼らは『カイトを州長に!!』などと言う旗を掲げながら今も、わが連邦軍と領界で睨み合いを続けていてな。 少し調べてみたが、この国にはそのような名前の者はいないそうだ。」
「・・・・・。」
ニヤリと、獲物を見つけた虎のような笑みを浮かべた。
カイトはと言うと、顔面蒼白だ。
彼の鉄壁は、モロくも崩れ去った。
予期せずカイトは、『前門の虎、後門の狼』状態に陥ってしまう。
「わが連邦内で、内乱は固く禁じられている。 これを行った者は、重罪となり、一族郎党皆殺しとなることになっている。」
澄ました顔で言い放つ、クソ大帝。
決めた。
こいつもろとも、この国つぶす!!
俺が、この場で立ち上がろうすると、大帝の目が光った。
まだ何か、ありそうな雰囲気だ。
一応、話ぐらい聞いてから正義の鉄槌でも下すとしよう。
「今回の反乱は『グレーツク』の民の全員が参加しているようでな、発展途上のかの地で、その法律を適用すると、住民のいない無人都市となってしまうのだ。」
要約すると、グレーツクは経済的にも捨てがたい土地なので、住民皆殺しは避けたいらしい。
ドワーフは、生まれた土地から出たがらないので、替えが利かないのだとか。
コイツの話は、本当に腹が立つな。
住民の命を軽く見すぎだと思う。
口を挟ませてもらうと、今しがたこの国を潰そうとダリアさんに目配せしかけたヤツが言えた口ではないように思う。
命だけは助けてやろうと考えていたようだが、問題はそれだけではないのだ。
この場の者は、知る由も無いが。
「そこで貴君には、わが国においても、『身分』をくれてやろう。 かのグレーツクを支配特区に指定する。 わが国に、税金のみ納めるように。」
「・・・・・・・・・。」
コテンと、首をかしげるカイト。
彼が言っている事が分からない。
アリアがいればなーー。
そんなことを考えていると、大帝の右脇に控えていた男が、彼に耳打ちをした。
すると大帝もうなづき、一度ゴホンと咳払いをした。
「カイト公よ。 恐れ多くも貴公は、陛下より『グレーツク代理州長』へと任命された。 納税以外の上申なども免ぜられる。 これはかの地支援の礼であり、貴君がこれから負う責務となる。 心せよ。」
分かった。
この国は潰す。
寝言は寝てから言ってほしい。
が、一応その前に・・・
「恐れながら、私のような下賎の者に、そのような大任は務まりません。 話がそれで終わりなら・・・」
俺は帰る。
そして幻惑魔法で姿を変えて、この国の腐敗経済を潰しますんでよろしくね。
だが、彼らは端的に言うと、自己中。
カイトの話しなぞ、聞いちゃいなかった。
話は、最後まで終わってしまう。
「貴君には、その赤い見た目と、俊敏に事に当たる姿勢から、『炎雷』の称号をくれてやる事する。」
「え・・いや、だから・・・・」
「陛下から二つ名を頂戴したのだ! 有難く頂戴いたせ!!」
「は・・・・はい。」
立場上、今この場では暴れられないカイトは、しどろもどろになってしまった。
何も考えず、書状まで受け取ってしまう。
バカである。
書状の受け取りは、『承知しました』を意味する。
アリアの二年前の説明をもう、カイトは忘れていた。
クーリングオフは無い。
ここに何が起きたのか、まったく分からないが、
『ベアル領主兼バルア監督官兼、グレーツク代理州長閣下』と言う、世にも珍妙な生き物が誕生した。
本当に、何が起きた!?
ダリアさん、笑ってる場合じゃありません!
お願いだから、助けて!!
カイトのそんな切実な願いは、ついぞ聞き届けられることは無かった。
うわあ・・・・
発案から三日で書いて、そのまま流されるまま書いてしまうと、こんなになってしまうんですね・・・
次回投稿作からは、このやり方は絶対、廃止です。
カイトよ、ありがとう。




