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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第7章 ボルタと貿易
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第133話・不吉な予感

ピンポ~ン、ピンポ~ン。(ドアが開く音)

「カイト不幸~カイト不幸~、ご乗車ありがとうございます。 次の停車駅はウッソー!!になります。」

発車まで、しばらくお待ちください。

ピンポ~ン、ピンポ~ン。(ドアが閉まる音)

「ああ・・・・来てしまった・・・・くそう。」


貴族の礼服を着たカイトは、落胆の声を上げた。

今、彼らはスラッグ連邦の邦都、グラードに来ている。

アリアから書状の事を聞いて、まだ一日と経っていない。


なぜ、彼らが昨日の今日で海を隔てた何百キロも先の地へきているかと言うと、もちろん例のごとく『転移魔法』を使ったためである。

ダリアさんは、ここに来た事があったらしいので、来れたのだ。

ダリアさんは、カイトの屋敷でメイドをやっているので忘れがちだが、ドラゴンだ。

カイトはまるで、彼女をタクシーのような使い方をしていた。


世の人間が聞いたら、震えが隠せないだろう。

カイトならではの、愚考である。


「カイト殿様、本日私はあなた様の護衛をおおせ付かっていますので、透明になって、お傍にお仕えさせていただきます。」


うやうやしく一礼するダリアさん。

今回は、事が事だけに、護衛を多く連れて行くことが出来なかった。

そこで、メイド兼任で護衛が出来る、ダリアさんに白羽の矢が立ったのだった。

不安要素は大きいが、まあ、この面子めんつで死ぬ事はないだろう。

と言う事になったのだった。


そう、不安要素は大きいが。


「お兄ちゃん、『ごてん』って何? おいしい??」


「・・・・頼むから、俺が合図したら、その姿では何もしゃべらないでくれよ?」


「うん。」


俺の横には、アリア・・・・

の姿をした、ヒカリがいた。

前のお約束で、カイトから離れなくなってしまったヒカリ。

だが、魔族の姿で出向くわけには行かなかった。

そこで、カイトの幻惑魔法で、見た目をアリアに変えたのだった。

領主の妻なら、一緒に居て差し支えないとの事。

弊害として、本物のアリアをここに連れてこれなかったのが、問題だ。


不安である。

魔族、ドラゴン、怪ぶ・・・失礼、カイト。

異色のトリオが、アーバン法国全権大使(?)として、ここに君臨したのだった。

戦力だけなら、今すぐに連邦全域を焦土に変えることが出来るほどの者たちである。

だが今回は、戦いに来たわけではない。


『貴公に用事がある。 なるべく早くに来るように』

との内容の書状を送ってきたこの国の大帝に、会ってその話を聞きに来たのである。


『どうせ、ロクでもない事を言ってくるに違いない。 なるべくこれを、かわす事』

とは、アリアの弁だ。


アリアには、昨日一晩で、考えられる全ての受け答えを覚えさせられた。

今、俺は鉄壁の要塞ようさいである。

一晩で百種類の受け答えを暗記した俺、スゴイ!!


むしろそれは、一晩でカイトにこれを覚えさせた、アリアの敏腕が誇られる案件である。

まあ、これに関しては『知らぬが花』と言う奴であろう。


「ダリアさん、そろそろ姿消して。 ヒカリも、もうしゃべらないでくれ。」


「かしこまりました。」


「分かったー」


さあ、不安な時間の幕開けだ。

カイトたちは、呼ばれた『御殿』なる場所へ、歩を進めた・・・



◇◇◇



「今日は、会えねーのかよ!?」


カイトは、先ほど通された、宮廷の客間で声を張り上げた。

今日は、大帝は忙しいとかで、会えるのは明日の朝と言う事になったのだった。

当たり前である。

いきなり訪ねて来て、『よく来た』と言わんばかりに会えるわけが無い。

いや、この国の大帝はそんなねぎらいの言葉をかけてくるような者ではないが、それはものの例えだ。


「カイト殿様、あちらから私達を呼びつけておきながら、私たちを待たせるなど、無礼です。 こんな国、全部焼き払ってしまいませんか?」


「お兄ちゃん、何か壊すの? 私も手伝ってい~い?」


二人の美少女が、不吉な事を言ってくる。

ダリアさんは、何かの琴線に触れたのだろう。

少しお怒り気味だ。

ヒカリは、何も分かっていない。

楽しそうだから、便乗したいと言っているだけだ。


「いや、よしてくれ。 俺がアリアに怒られる。」


カイトも大概だ。

アリアと言う存在が居なかったら、どうするつもりだったのか。

カイトの大帝嫌いは、短期間であまりにも根が深くなってしまったようだった。


「カイト殿様が、そうおっしゃられるなら・・・・」


「お姉ちゃんが怒るような事ならしな~い。」


二人も、カイトの言葉に、ほこを収めてくれた。

正直、ダリアさんが暴れただけでも、この国は滅亡しかねない。

しかしダリアさん的にも、この国の評価は最低らしかった。

今後、気を付けねばならないだろう。

この間のように、『いつの間にか街の一部を消滅させていた』は、シャレにならない。


「ダリアさん、俺は明日の受け答えの練習でもするよ。 付き合ってくれない?」


「かしこまりました。 見た目は、高飛車貴族でよろしいですか?」


「いや、もっとこう・・・・威厳あふれる感じの人間にしてくれないかな?」


カイトの要望に応えるように、その姿を、幻惑魔法で変えていくダリアさん。

それを相手に、暗記した受け答えをつたなく、口から出し続けるカイト。

すでに寝ているアリア風のヒカリ。

カイト達の、幻惑魔法による練習は、夜がけるまで続いた・・・

次回、クズ大帝出ます。


更新は、明日になります。

しばらく、お待ちください。

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