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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第7章 ボルタと貿易
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第132話・大帝のお呼び

え~~、まもなく『カイトの不幸』駅に到着いたします。

停車話は、数話を予定しております。

それを出ますと、次は、予定では『本腰に』に停車いたします。

(たぶん)

「早急に、赴かねばなりませんわ。」


「え、どこに?」


朝、寝ぼけ目をこすりながら、アリアの真剣な表情を、軽くあしらうカイト。

ここ二年半、こういったことは毎日のようにあった。

そしてそのすべてが大抵、ロクでもない事であった。

そして今回は、カイトはどこかへ行かねばならないらしかった。


・・・・正直、いやな予感しかしない。


「スラッグ連邦の大帝陛下から、直々にお呼び出しですわ。 カイト様にお会いしたいとか・・・」


スラッグ連邦の大帝とは、この国で言う国王のような者だ。

一ヶ月前、グレーツクで大地震があったときには、何もしなかった。

その上、カイトにまるで、『救援して当然だろ?』と言わんばかりの書状を送りつけてきた。

あれはほぼ、命令口調だった。

尊大な上に、いざとなったら何もしてくれない。

カイトの彼に対する評価は、最悪だった。

当然、そんな奴に会いたくはない。


「パス。」


「できません。」


カイトの拒絶の意思は、バッサリと切り落とされた。

間髪入れないアリアの返答に、たじろぐカイト。

もちろん、アリアもあの国のクズ大帝に、いい感情などこれっぽっちも抱いていない。

だが、そこには国家間の問題というものもある。


「カイト様、これはカイト様お一人の問題ではございません。 我々がこれを『行かない』などと突き返せば、かの国の面目は丸つぶれです。」


「・・・ええ~っと・・・いいんじゃない? あんな尊大な態度の国家元首が治める、国のプライドなんて。」


カイトの言い分は、一応だが筋は通っている。

だが、考えがまだ浅い。


「良くなどありませんわ!! それが原因で、連邦とわが国が戦争になどなったら、どうなさるおつもりですか!?   この領はまず間違いなく、戦場と化しますわよ!?」


「おひょおおおおおおおおおおおお!!????」


アリアの衝撃的な発言に、アホカイトは、声にならない雄叫おたけびをあげた。

そう。

突き返せないのは、外交的な問題である。

もしカイトがこれを突き返せば、あの尊大なクズ大帝は、きっと宣戦布告してくるであろう。

当然、彼らは裕福な地・・・つまりベアルを占領しに来る。

人口三千を越える大都市は、一夜にして戦場だ。

事はカイトが考えているほど、甘くはない。


まあ・・・戦争になっても、カイトとダリアさんが居れば、まずこの地が戦場になる事は無いともいえるが、そこは考えてはいけない。

それをやるのは、魔王ただ一人である。


魔王じゃないカイトは、平和的に解決する事にする。


「仕方が無い・・・・ なるべく穏便おんびんに、それでいて相手のプライドをそのままにして、お断りを・・・・」


「できません。」


どうしても行きたくないカイトは、穏便に、お帰り願う事とした。

書状の内容としては、

『あなたが神々しすぎて、私のような下賎げせんの者では、あなた様のお足元に居る事すら、許されませぬ。』

これで完璧である。


バカだ。

それがダメだと言っているアリアの言葉が、まるで分かっていない。

カイトはまだ、平和だった日本人感覚が抜け切れていないようだった。

というか、頭の中が平和すぎる。

カイトの頭の中には、脳みそではなく、ハトが住まっているに違いない。

さすがのアリアも、これには呆れ顔だ。


「カイト様、なぜそこまで嫌がられるのですか? かの国の大帝と言えば、自ら人を呼ぶなど、決してしない事で有名な方なのですよ?」


「嫌なものはいや。 アリアだって、あの一ヶ月前の書状には、怒ってたじゃないか。」


「それは・・・・・」


カイトの思わぬ反撃に、どもってしまうアリア。

これは、図星だった。

特に『滅んでしまえ』と言う感情が芽生えたのは、絶対に秘密である。

もちろん、彼にそんな事は悟らせない。


「いいえ、カイト様。 それは関係ありませんわ! 事は、国と国の問題にもなりかねないのです。  期日の規定はありませんが、今すぐ、ご出立くださいませ!!」


「ええ~~~~???」


露骨に嫌悪の感情をさらけ出すカイト。

一領主としては、ありえない態度である。

それが彼の特徴でもある。

この事に関しては、アリアは特に言う事は無かった。

こういった露骨な態度を彼は、社交の場ではしないので、それで十分だったのだ。

多少の問題は、カイトの持つ『何かしら』で、なぜか丸く収まっていた。


だが今回は、それでは収まらない。

相手は、プライド家で有名な、『スラッグ連邦の大帝陛下』である。

一国の王の申し入れですら、低姿勢で無いと断りを入れてくるような常識外れっぷりだ。

かの国は、戦闘に特化した者が多いので、そういった上から目線を取れていた。

他の国々もそれは知っていて、なるべく相手にしないようにしていた。


ようは、スラッグ連邦は、世界の嫌われ者だった。


ただし今は、魔王との戦いもあるので、なるべく波風を立てるのは皆、避けていたのだった。

それが数百年続いた結果、現在のような構図が出来上がった。


「アリア、俺、そのグラードってとこに行った事無いよ。 転移が使えないから止めよう?」


「冗談は止めてくださいませ!! グレーツクまで転移して、そこから馬車で向かえばよいのですわー!!」


「え~~~~!?」


カイトの不幸(?)は続く・・・・・

やっと、先が見えてまいりました?

とは言え、見えてきたのは物語の一つ目の結び目。

残り最低十個ほど、結び目があります。(あくまで予定)

長い目で、よろしくお願いいたします。

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