第130話・やる事いっぱいだ~~
これからも、頑張っていきます!!
感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!
「順番に並んでください! たくさん在りますから、慌てなくても大丈夫ですよー!!」
カイトの声に反応し、幾人か列の割り込もうとしていた者たちが、スゴスゴと、列の最後尾へと並んで行った。
今カイトたちは、被災者たちに、食事を配っていた。
街をそっくりそのまま治したとは言え、この街につながる街道は、地震の影響でふさがったままだったので、食料などが届かなくなってしまったのだ。
それをカイト達は、『困ったときはお互い様』と言うことで、飲食物などを配ることにしたのだ。
カイトは転移で、一日何度でもベアルへ赴けたので、補給は容易だった。
料理担当として、屋敷のシェフと、キッチンメイドも全員連れてきている。
災害でよく乱れがちな、列に並ぶなどの『規律』の保持は、先ほど保つことができた。
こういった場合、数人の者がマナー違反をし、それが結果的に大混乱になる。
それは、結果的に街の復興にも響いてしまう。
これはなんとしても、避けねばならなかった。
そしてその、規律を守らせるのに、ベアルから連れてきた騎士さんがたや、現地生産したゴーレムたちが、大いに尽力してくれた。
さすがに俺一人では、こういった事の対処は不可能なので。
「カイトとか言ったか? おまえ貴族のなりしてやがるが、奴等みたいなクソな感じがしねえな。 気に入ったぜ!」
「あはは・・・・どうも。」
そしてさっきから、カイトは時折こうして、賛辞の声をかけられていた。
街の崩落現場の修復の事もあり、この街の住人の彼への評価も、上々らしかった。
彼らが気が短いドワーフばかりなのに、律儀にも列を作るよう促す、カイトの指示に従っているのも、このあたりが関係していた。
日本人なカイトは、この辺も分かっていない。
並んで当然、って感じだった。
「・・・・カイト様?」
「ん、なあに??」
カイトは、相変わらずのすまし顔で、名前を呼んできたアリアに顔を向けた。
しばらく彼の顔を見つめた後、はあ・・・・とため息をつくと、彼女は「なんでもありません」と言って、持ち場へと戻って行った。
人の顔を見て、ため息をつかないでもらいたい。
カイトはほんの少し、不機嫌そうな顔をした。
だが今のこの、食糧配給は、彼女のおかげで実現した。
そもそもここは、他国。
アーバン法国の一領主に過ぎないカイトが、勝手にやって良いものでもない。
それを、彼女は国王経由で、スラッグ連邦の大帝に、許可を求めたのだった。
その返事は、見てのとおり。
と言っても、『よろしく頼む』とか言われたわけではない。
『かの地は、州長が死んだと聞く。 そうなった今、街道も寸断され陸路での支援物資の運搬は困難。 海路も船が少なく、かなわない。 だから、裕福だと聞く『ベアル領主』に、この支援及び完全なるこの地の復興をを要請する。』
と、言うもの。
その書状が三日前に届いてから、この街の本格的な支援を始めた。
ちょー上から目線だった。
なにその、俺たちが支援するのが当然みたいな言い方。
俺はいったい、この街の何だというのか。
アリアともども、非常に腹が立ったが、グレーツクへ支援物資を送る事は、結果的に認められた形となったので、矛は収める事にした。
この街は前述の通り、震源直下だった影響で、街道が直せていない。
街道を、別の新ルートで、作り直す必要がある。
そうしなければ、この街は復興しない。
この街の街道の、一刻も早い整備が要求される。
・・・・それも、俺がやるのだろうか?
この国の、クズ大帝のお言葉的に、そうとしか思えない。
嫌ではないが、この国の、住民に対する冷たさと、上から目線な感じがな~~~~。
今度、殴りに行ってはダメだろうか?
・・・・そういえば俺は、この国の首都なんか、行った事は無かった。
じゃあ無理か。
「カイト様、今は足りていますが、夜の分は足りません。」
俺がそんなことを考えているとシェフの一人が、おずおずと、俺にそんな報告をしてくる。
最初の頃彼らは恐縮仕切りといった感じで、俺に何も言ってこず、その結果食材が足りなくなると言う本末転倒な事態が生じた事があった。
その後、彼らには『言いたい事があったら、構わず俺に言うように!』と、厳命したのだ。
それでも彼らは、及び腰だったが、一応、食材枯渇前に、こうして報告してくれるようにはなった。
そこは、大変に嬉しい。
「分かった、後で俺が、ベアルから持ってくるよ。 心配しないで。」
「お手間を取らせてしまい、申し訳ございません。」
彼らの対応が、固いな。
どちらかと言えば、ここまで赴かせてしまった俺が、感謝を彼らに伝えるべきはずの立場なのに。
何かを言うと、さらにややこしい事になるのはここ二年で、よく分かったので、「気にするな」とジェスチャーで伝えるに留める。
そう、ここは日本ではないのだ。
その間にも、続々とやってくる配給に並ぶ街の、住人たち。
そして、彼らに料理を配る、メイドたち。
住人たちは、料理を受け取ると、固まって仲間たちとバクついていく、といった感じだった。
家族で食べる者もいる。
それぞれ、疲れたような顔をさっきはしていたが、今は安堵の表情が見て取れた。
・・・うん、彼らのためにもがんばろう。
これは、この国のためにやるんじゃない。
彼らを救うためにやるんだ。
そのためならば、疲れたりする事なんか、いとわない。
でも・・・・
「鉄道が、遠いなー。」
「おい、白服の小僧。 『てつどう』ってなんだ? うまい酒か??」
列に並ぶ、ドワーフおじさんの言葉は、カイトの耳には届いていなかった・・・・
スラッグ連邦の、クズ大帝陛下は、そのうち出てきます。
出すつもり、ナカッタノニナ~!!