第129話・グレーツク崩落
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俺は、この大陸随一の鉱山都市、グレーツクに長年住む、ガロフってもんだ。
俺はこの町で生まれ育ち、親父に教えられたように、鉄鉱石を掘っていた。
先祖代々の、誇りある仕事だ。
この町に住むヤツは、大抵この仕事をしている。
北のオア大陸ってとこに住む人間族たちにとっては、ここは南にある結構、暑い国ってイメージがあるそうだが、決してそんなことはない。
海に面しているし、何より街には一年中、渓谷を風が吹き抜けるんだ。
いつも思っていたが、実に心地いい風だったぜ。
しかもこんな俺には、女房が来やがったんだ。
どこの物好きかと思ったね。
しかも、子供を二人もこさえやがった。
俺たち鉄鉱石堀りは、稼ぎが少ないってのに・・・・・
本当にしょうがないヤツだ。
ま、家に帰って『おかえり』って言ってもらえるのは一応、嬉しかったがよ・・・・・
こんな毎日が、ずっと続くのだろう。
俺だけじゃない。
この街のモン全員が、思っていたことだろう。
だが・・・・・
ある日、この街を、とても大きな地震が襲った。
その地震で、街があった渓谷は、あっという間に崩れ落ちてしまった。
俺は、タマタマその時は用事で、港に居たから助かったんだ。
だが、妻子は渓谷内にある、自宅にいたはずだ・・・・
『エリル、ガリル、エリムーーーーーーーーーーー!!!!』
俺はガラにも無く、大声で叫んだ。
崩れて土ぼこりを舞い上げる、渓谷のほうへ向かって。
妻子の名を。
すぐには立ち上がれなかった。
縦に大きく揺れる地面は、立ち上がろうとする俺の自由を、奪った。
ようやく揺れが収まり、渓谷へ向かったときには、愕然とした。
渓谷の両脇の岩盤がすべて崩れ、街を飲み込んでいた。
渓谷内にあった街など、見る影も無かった・・・・・
つい、十分前まであった、グレーツクの鉱山都市は、黒い土まみれの、ガレキの山と化した。
そこから俺は、無我夢中で土を掘った。
自分の家が在ったであろう、場所を。
全部が土まみれで、どこが家だったかなんて、正確には分からなかった。
だが、俺の直感が、ここだと教えてくれた。
街にいた人間共が、『余震の二次災害の危険があるから、渓谷内へは入るな』と言っていた。
従えるか、バカやろう。
危険なんか、どうでもいい。
今俺は、この土に埋もれてしまっている妻子を見つけるんだ。
一刻も早く、この息苦しそうな土の中から、出してやらなくては。
他の港にいたドワーフ共も、俺と同じように仲間探しを始めた。
しかし、素手で掘るには土の量があまりにも多すぎる。
そういった魔法が使えないドワーフ族が、初めてもどかしく感じた。
この街にいる人間も、医者とか商人ばかりで、ロクな魔法すら使えないヤツばかり。
いつもやっている、爆発魔法とかを使えば、中のヤツが、かなり危険だ。
だがドワーフは、そういった細かい魔法は使えない。
つまるとこ、素手で掘るより無いんだ。
その間にも、多くの仲間たちが、土の中から遺体で運び出されていった。
大丈夫だ。
俺の妻子どもは、タフだから、そう簡単に死にやしねえ!!
そんなある日、俺の横に、白い服を着た若造が来た。
たぶん、他国から来た貴族だろう。
好奇心から、観光気分で来たに違いない。
俺は、フツフツと、怒りがわいた。
だが、今はコイツなんかに構っている場合ではない。
俺は、少しだけヤツを睨み付けてやって、掘るのを再開した。
そのとき、俺は強烈な眠気に襲われた。
ダメだ! 今寝たら、それだけ妻子どもの・・・・
俺はここで、その意識を手放してしまった・・・・・・
◇◇◇
「カイト様、生きていた者たちは、無事だった建物に、休ませましたわ。 遺体も、まもなく運び終えるようです。」
「そっか、ありがとう。」
「礼は、メイドや護衛の者に、言ってください。」
カイトの感謝の言葉に、アリアはかぶりを振り、そう言った。
邪魔だった、救助活動中のドワーフや人間たちを、ヒカリの魔法で眠らせて、港へ運んだ後、俺は早速、救助がてらに、この崩れた街の復旧をすることにした。
直すだけなら、簡単だった。
だが、今回は地震。
つまり、地中に『ひずみ』がたまって、それが解放された結果、この地震は起きた。
つまるところ、『直して』しまったら、そのひずみまで直してしまうことにもつながる。
それでは、直しても近いうちに、同じことが起きるだけだ。
魔法で地震の震源を、慎重に調べながら修復をした。
幸い、震源はこの街のはずれにあったようで、街の修復には、なんら支障は出なかった。
良かった。
これで、地中の人たちも、それぞれ気配察知魔法で、危なそうな人から数人ずつ、港のほうへと運んで行った。
ヒカリにも、手伝ってもらった。
おかげで、三百人近い生存者を見つけることができた。
だが・・・・・
「被害は、大きいな・・・・」
「・・・カイト様は、この街を修復しましたわ。 カイト様は、この街の被害を、最小限にしたのです。 もっと、胸をお張りください。」
そう言うアリアの声も、かなり弱々しい。
街は確かに、修復した。
救助した者も、治癒魔法や回復魔法で、軒並み治した。
だが、死者は、どうしようもなかった。
詳しいことは分からないが、少なくとも五千人以上が、この地震で亡くなった。
生き残ったのは、千人弱。
死者の中には、この街の領主も含まれている。
いったいこの街は、これからどうなってしまうのだろうか・・・・
それを考えると、人命救助ができた事嬉しさは、どこかへ行ってしまった・・・・・
地震描写だけ、他の部分とアンバランスに、詳しくなってしまいました。
専門用語とかは無いはずですが・・・・・・
イロイロあって、どうしても地震の事となると、こうなってしまう傾向が強いようです。