第128話・大地震
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「おうえふ・・・・・」
「カイト様、しっかりなさってください!!」
「だ・・・大丈夫だ。 帰りは、転移で帰れるから・・・・」
「・・・・・・・。」
騎士から、報告を聞いたカイトとアリアは、約束どおりメイドと騎士を引き連れ、船でグレーツクへとやって来た。
例のごとく、船酔い中だ。
船から下りた今でも、地面が揺れている気がする。
「お兄ちゃん、だらしないよ?」
・・・ヒカリも、もちろん一緒だ。
緊急事態だったので、ノゾミはバルアにいる。
帰ったら、怒るだろう。
だが今は、三ヶ月ぶりの船酔いと、これからのノゾミのお説教どころではなかった。
「これは・・・・!!」
顔色の悪いカイトは、目の前の光景に、さらに顔色を悪くした。
アリアや、連れて来た者たちも、その恐ろしい光景に顔をしかめる。
メイドの数人は、肩を震わせ、目をそらしている。
そこには、渓谷があった。
この渓谷には、多くのものが住み、鉄鉱石を掘っていたらしい。
この街の、主要部分がその渓谷だった。
カイトも、本で見たことがある。
かなり密集した、『天空の城○ピュタ』で出てきたような、鉱山都市があったのだ。
だが、今は影も形も無い。
渓谷は、見るも無残にすべてが崩れ落ちていた。
多くの土砂の中に、家々が埋まっているのが、見える。
多くの泣き叫ぶような声が、そこかしこから聞こえる。
港に建つ家々も、多くが潰れていた。
今も、地面が揺れている。
カイトが、揺れている訳ではない。
ここで先日、大きな地震があったのだ。
内陸が震源の、直下型の大地震が。
震源のこの街は、見るも無残に潰れてしまったのだった。
一部、渓谷以外にいた者達は難を逃れたものの、ほとんどの者は渓谷内にいた。
そこに地震が発生した。
いつも採掘が行われているこのあたりの岩肌は、非常に脆く、地震ではまるで、雪崩のように崩れてしまったのだった。
結果、一つの街が文字通り、崩壊した。
視界の範囲の、どこを向いても、沈痛な面持ちの者ばかりだった。
見るとその誰もが、ガタイは良いが、背が非常に低い。
『ドワーフ族』
この国の大多数の人民が、この『ドワーフ族』で構成されている。
鉱山の国となったのも、これが大きい。
カイトも、最近になって知った事だ。
海賊は、『人間の』犯罪者だけで構成されていたので。
ああいった船上での戦いは、『ドワーフ』は、不利らしい。
そして彼らは、崩れた街の掘り出しも、不得手だった。
岩肌で商品の鉄鉱石を掘るのと、土に埋もれた者を掘り出すのは、似ているようでまったく違う。
爆発魔法で土砂をどかそうものなら、中に埋まっている者の安全が、危ぶまれてしまうのだ。
かといって、手探りで掘るには、この規模では何年かかるか分からない。
カイトは、まずこの街の州長に面会するため、近くの男ドワーフにどこにいるのかを聞いた。
だが・・・
「見りゃ分かるだろ、街全体が埋もれてんだ!! このクソガキが!!! ここの州長様はな・・・」
ここまで発したところで、男は顔をうつむかせ、そのままこの場を去っていった。
「え・・・・・?」
ドワーフの男の言葉は、いつもはこんな言葉をカイトに言ったら、刃を向ける騎士たちの動きも止めた。
つまり、それは・・・・・
「カイト様、今この街には・・・」
アリアが何かを説明してこようとする。
だがその言葉は、カイトには届かなかった。
一気に駆け出し、崩落した街へ向かうカイト。
「きけんです!!」とカイトに止まるよう言う、騎士たちが止める言葉も、彼の耳には入っては来ない。
ヒカリも、それに追々するように、走って崩落現場へ向かう。
・・・・・そこは、地獄絵図だった。
掘り出されたらしいドワーフの遺体が、崩落現場手前の開けた場所の、そこかしこに並べられている。
しかし、数は多くは無い。
犠牲者が少ないわけではない。
先程説明したように、掘り出せないのだ。
泣き叫ぶ者、沈痛な面持ちでそれを見下ろす者、呆然と立ち尽くす者。
様々だった。
今でも数名、素手で崩落現場を掘っているドワーフが、そこかしこにいる。
だが、その効率は、言うまでも無く非常に悪い。
「うぐ・・・・えふ・・・・」
その中で、一人の男性が、涙を流しながら土を必死でどかしていた。
あの辺りに、大切な人が埋まっているのかもしれない。
さすがの俺でも、死んだ者を生き返らすことはできない。
「お兄ちゃん、あのおじさんが掘っている辺りのところ、誰かが生きて埋まってるよ?」
「何!?」
すぐに俺も、察知魔法で調べてみる。
すると、確かに生きている者の反応がある。 それも、三人。
よく見ると、崩落現場の地中には、未だ多くの生体反応があった。
ようするに、生存者が多数、崩落現場の下で、生き埋めになっていた。
今、掘り出せば助かる者が多くいる・・・
それなら、カイトでも出来る。
「ヒカリ、ここにいるやつら全員を、港のほうに移動してもらえるか? 俺はここを直す。」
「分かったー。」
返事をするや否や、見た目少女のヒカリが、最近覚えた『睡眠』と言う魔法でこの場のドワーフたちを眠らせ、両手で軽々とこれら全員を抱え、港へと走っていった。
よしよし。
これで、準備完了だ。
今すぐ、そこから出してあげますからね!!!
おお・・・・初ドワーフじゃないですか!!
・・・と、言いたいところですが、実はとっくの昔に、登場しています。
シェラリータの、武器屋のおっちゃん。
彼がドワーフです。
彼は昔、守銭奴な仲間達に嫌気が指して、この国に来たのです。
カイトは、知る由もありません。
そもそもドワーフという生き物が、よく分かっていませんから。