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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第7章 ボルタと貿易
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第126話・晴れやかだったワケ

これからも、がんばっていきます。

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!

海賊船事件から、早いものでもう三ヶ月。


開始早々にとどこおってしまった、スラッグ連邦との交易に関する商人の見解も、やっとやわらかくなり始め、再び交易船が出してもらえるきざしが見えてきた。

死んでしまった、商人たちの家族も、『商人の間でそういったことは日常茶飯事だ』と、俺を責めてくるようなことはまったく無かった。

今その人たちは、それぞれが残された店や業務などを切り盛りしているとの事。


この街は、本当にいい人ばかりである。

だが、いい事ばかりがあったわけではなかった。


つい先ほど、あの事件に対する、連邦からの回答が王都から届いた。

最初に読んだらしい、アリアが封書ごと持って、執務室へやってきた。

その表情は、いつに無く暗い。

きっと、いい内容ではなかったのだろう・・・・


「・・・読み上げさせていただきますわ。 『本件、スラッグ連邦のほうとしても、大変に遺憾いかんに思う。 直ちに調査隊を派遣して、この事実関係を調べ、犯人たる州長を我々は、逮捕。  本国の法律にのっとり、死罪申し渡した。」


「・・え・・・・?」


死罪って・・・

処刑したの!??

ダメじゃん!!

それじゃあ、事件の全容が闇の中・・・

しかしまだ終わってはいないようで、アリアはこちらに視線を向けた。

その目には、はっきりと怒気が見えた。


「『なお、賠償金についての件だが、本件でわが国がこうむった被害もかなり大きく・・・・  これを払うことは、かなえることができない。』」


取ってつけたような、文章である。

連邦のお国柄が、はっきりと表れている気がした。

自分の被害が大きいからって、他人様に迷惑かけたのに、『痛み分け』の申し入れである。

どこのガキ大将か。

国王様も、少し怒ったらしい。

そうだろうな。


「『なお、こちらに落ち度があったのは事実なので、貴行の領地からの交易船が、グレーツクへ入港、貿易することを許可する。』・・・以上ですわ。」


ここで、終了らしい。

アリアが、広げた文書を、クルクルと巻き、俺へと差し出す。


「・・・・それって良い事なの?」


文書を受け取り、机の引き出しに入れた俺は、疑問を口にする。

なんか聞こえ的には、『鎖国していた日本が、ロシアに長崎への入港許可をくれた』みたいな内容にも聞こえるが、そもそもスラッグ連邦は、鎖国なんかしていないはずである。


「そうですわね・・・・ 悪い話ではないのですが、事この件で持ち出されたのは、何とも形容しがたいことですわ。」


嬉しさ半分、やるせなさ半分といった所か。

もともと俺たちは、今名前が出てきた、『グレーツク』という港で貿易をしようとした。

しかし、これは許可されず、外れの漁村に変えさせられた過去がある。

過去といっても四ヶ月も経ってはいないけど。


それが許可されたのだ。

なるほど、俺も嬉しい気持ちが出ては来た。

・・・・・だが、なんとも言えない。

本当に、あまり嬉しくは無い。

アリアの方を向くと、「それと・・・」と、何かを付け加え始めた。


他にも何か、ビミョーな申し入れでもあったのだろうか?


「実はこれは、バルアで聞いた話なのですが、『リグスクの州長』は、死罪を申し付けられたものの、死罪にはならなかったようですわ。」


「は? どういうこと??」


死罪なのに、死罪になっていない??

連邦が、かくまったとか?

それは最悪だな。 どうしようもない国である。

そんな俺の感情をみ取ったようで、アリアがかぶりを振る。


「いいえ、カイト様。 彼はすでに、死んでおります。 その確認は取れております。」


資料はこちらに・・・と、再び俺の机の上に、書類が置かれる。

結構、膨大ぼうだいな量のようで、厚さがかなりある。

読むのは、大変そうだ。


「スラッグ連邦の調査隊がこの領に入る少し前、リグスクの街では自然災害があったようです。 それに巻き込まれ、彼は死んだようですわ。」


「は~~~、ずいぶんとまあ・・・・・」


タイミングよろしいというか・・・・

運の悪いヤツというか・・・・


「自然災害って何ナノ? 高潮とか??」

嵐の高潮に、呑まれたのかな?

そんな気がした。

だが、アリアはかぶりを振って、トンデモ無い報告を上げてきた。


「ドラゴンが、この街を襲ったようですわ。 タマにこういった事もあるのですが・・・なんとも口惜しい限りですわ。」


「・・・・。」


本当に悔しそうに、地団駄じたんだを踏むアリア。

カイトは、嫌な予感・・・ いや、たぶん大正解が頭をよぎった。


「突然、街の真ん中に、赤い飛竜が転移でやってきたようですわ。 目的は分かりませんが、その竜は、一直線に州長邸へ突っ込み、これを口から吐いたブレスで消滅させ、またその姿を消して行ったようですわ。 きっと、たわむれにでも来たのでしょう。」


それにしても、なぜ州長邸だけを襲ったのかが、分からないと、腕を組んで考え込むアリア。


俺は三ヶ月前あの日、ダリアさんが転移するのを止められなかった。

結局あの日は、ノゾミと海賊船から『大砲』を降ろして終わった。

屋敷に帰ると、先程とは打って変わって、『お帰りなさいませ、カイト殿様』と、笑顔で出迎えられてしまったので、質問することはヤメにしたのだ。


ちなみにそのときの彼女の頬にあったモミジマークは、勝手に俺のそばから離れた罰として、クレアさんから食らったものだったらしい。

それでもなお、あそこまで晴れやかな笑顔を俺に向けて来た訳・・・・・


聞くべきだった。

聞いたところで、どうしようもなかったけど、聞くべきだった。

どうしようもない罪悪感が、俺を包み込む・・・


「・・・カイト様、どうかしましたか??」


連邦へのブーイングなど、とてもできない状況となってしまった。

イロイロな理由で、秘密だけど。

言うまでも無く・・・・

リグスクを襲ったのは、ダリアさんです。


ええ、メイド時代に培った『自制心』とやらで、州長邸だけを、襲ったようです。

ちなみに彼女はこの後、カイトに問い詰められました。

当然、答えは「YES」で・・・・・

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