第125話・想像が怖い
これからも、がんばっていきます。
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尋問を終えた海賊たちは、このまま国へ帰ったら殺されてしまうとのことだったので、べアルへ同行してもらい、住民として引き取る事にした。
最初は罪人として、牢へぶち込むことも考えたが、それに勝る尋問という名の拷問を受け、彼らは反抗心などがすべてそぎ落ちてしまったようだったので、『労働者』として、雇う事にした。
彼らには、耕作地を与えて他の住民同様、ソギクの栽培を行ってもらう事にした。
彼らも、それを承諾したので、何も問題はない。
しかしベアルへ帰った後、俺とアリアは、屋敷の皆様に大いにお叱りを受けた。
黙って、屋敷から姿を消したのだ。
怒られて至極、当然である。
この一件により、俺はある種の、行動制限を設けられた。
『行動制限』といっても、大したことではない。
俺が出かけるときは必ず、『ヒカリ、メイド一人、護衛二人』を必ず、付けるということ。
これを、約束させられた。
それだけ、彼らには心配をかけてしまったということだった。
これからはこっそり、何かをするとかはできない事になる。
まあ・・・・・しょうがないか。
ちなみにアリアは、今回は俺と共犯者だし、
ノゾミは『バルアの領主』という役職柄、対象からは外された。
特にアリアに関しては、良かったと言える。
彼女が俺の行動すべてに付いてきなんかしたら、なかなかに困る。
主に、『秘密』とかの方向で。
その後も、アリアたちとは事後処理に追われた。
まずは、海賊被害の報告書。
そして、被害に対するスラッグ連邦への、賠償金の請求。
そしてボルタの、開港に関する報告書。
などなど・・・・・
これらを一纏めにして、王都へと送った。
返事は・・・
特に賠償金の請求に関しては、どんな答えが返ってくるか・・・・
アリアは、『望み薄ですわ。』と言っていた。
連邦の国柄、守銭奴が多いらしく、これは難航するとの事だ。
と言うことで、俺の給料や領地の金庫から、今回死んでしまった商人たちの見舞金などを、商人たちの家族へ送る事にした。
家族が死んだのだ。
これで済むとは思っていないが、俺にできることはあまりない。
俺にはこのほかにもまだ、すべきことがあった。
というわけで今、俺たちはボルタにいる。
約束どおり、『ヒカリとメイド一人、それに護衛の騎士が二人。』
それにノゾミが付いてきていた。
ある報告を、彼女に・・・・・
具体的に言うと、中破状態になってしまったダリアさんが造った船を、彼女に見てもらい、直してもらうためにだ。
海賊との戦闘で、かなり見てくれが、みすぼらしくなってしまっている。
俺の魔法で直そうとしたのだが、結構特殊な魔法がかかっているらしく、俺が直そうとすると、船が壊れてしまう危険があった。
と言うわけで、彼女にこれを、直していただくことにしたのだが・・・・・
「な・・・・・・・・・!!!????」
彼女は、髪を逆立て、仁王立ちしたまま固まってしまった。
事実どうあれ、メイドさんのこんな姿を見ると言うのは、なかなかに新鮮な気持ちになる。
「かか・・・カイト殿様!!! これはいったい・・・・!!????」
かなり動揺して、船を指差し、俺に何があったのかを聞いてくるダリアさん。
海賊に襲われ一隻が沈み、これも海賊討伐時の不意打ちでこうなってしまったと言う旨を話すと、彼女は、膝から崩れ落ちた。
かなり悲壮感漂う雰囲気だ。
でも、丹精こめて造った船二隻が一ヶ月も経たずにこれでは、気落ちするのも無理はないので、慰めがてら、彼女の背中をやさしくたたいてやる。
しかししばらくすると彼女は、ヨロリと立ち上がり、何かを小声で口ずさみ始めた。
一体なんだろうか?
彼女の口元に、耳を近づけてみると・・・・
「~~~~~~~~~~~~~!!!!」
「え、何??」
声になっていない、声を発し続けていた。
顔は、かなり怖くなっている。
前に戦闘した時の、ドラゴンモードの怒り顔より怖い気がする!!
「カイト殿様・・・・ 海賊は、もういないのでしたね?」
「・・・・あ、ああ・・・潰しちゃったから・・・」
「では、誰が依頼していたのでしょうか? 教えていただきますか?」
教えてはいけない。
教えたら、世にも恐ろしい事になる。
カイトの本能が、警鐘を鳴らした。
しかし、こちらに振り向くこともせず、ただひたすらに海・・・・
『リグスク』があると言われた方向を凝視している彼女の背中は、禍々(まがまが)しい黒いオーラに包まれていた気がした。
彼女はもう、うすうす感づいているっぽかった。
だからカイトは、教えてしまった。
海賊の正体を。
『幽霊団』と恐れられた、『自由国家コレット』の黒幕を。
そして、彼の動機・・・
『リグスク』を発展させるために、こんな事をした、と言うことを。
ここまで話し終えるまで、彼女は静かに彼の話を聴いていた。
まったく、微動だにせず。
いつしか、騎士たちが気絶してしまうほどの威圧を放っていた彼女の禍々(まがまが)しいオーラも、落ち着きを見せていた。
もう大丈夫かな?
「じゃあダリアさん、早速で悪いんだけど、この船の修理を・・・・」
彼は海賊の話を切り上げて、ダリアの背後から離れ、船へ近づいた。
そのときだった。
ダリアさんが突如、全身を光に包まれ、そして消えてしまった。
「・・・カイト、ダリアさんが・・・・・・」
いきなりの出来事に、呆然と立ち尽くす、俺とノゾミ。
彼女は、転移を使ったらしい。
行き先は・・・・・・ なんとなく察しが付いた。
「しまったああああああああああ!!!!」
今彼女を放してはいけなかったのに!!
アホだ。
しかと、手をつかむなりして、彼女が勝手にどこかへ行かないようにしておくべきだった。
だが彼女は、もういない。
転移で追おうにも、カイトは『リグスク』へ行ったことが無かったので、打つ手は無かった。
今の時点では。
でも、今からベアルに戻って本で調べてから、向かうとして間に合うかどうか・・・・・・
ここまで考えたところで、カイトは考えるのを止めた。
「ノゾミ、あの船から、大砲を降ろすのを手伝ってもらえるか?」
「『たいほー』って何?」
カイトは、ここまで曳航してきた、海賊船に乗せられた大砲を下ろす準備にノゾミと取り掛かることにした。
ダリアさんの件は、知らない振りをする事にしたのだった。
この後、カイトがかの街がどうなったのかを知るのは、だいぶ先になってからの事となる。
なんとか、時間をひねり出して一話だけ、投稿できました。
先はまだ、かなり長いです・・・・・




