第122話・幽霊団
これからも、頑張っていきます。
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「海賊よ、来い!! 今なら全力で迎え撃てる!!」
「カイト様、あまりお騒ぎになると、また酔ってしまわれますよ?」
無駄にポージングを決めるカイトを、まるで母親のように諭すアリア。
これでも歳はひとつしか違わないし、彼らは夫婦である。
ついでに言うと、彼らの他はゴーレムくらいしか船には乗っていないので、さながら新婚旅行に見えなくも無いが、彼らは新婚ではないし、そもそも今行っているのは、『旅行』ではなく、『決死隊』である。
カイトたちは今、ボルタの沖に出没した、海賊の偵察・・・もとい討伐を目的に、先日秘密裏に、ボルタを出航した。
相手の戦力も不明の中のこれは、自殺行為と捉えられても仕方が無い。
だがカイトは、かなり強い。
その昔、ギリシャはスパルタと言う国で、『300対10万』という、無謀な戦いに善戦を博した戦闘民族がいたが、今のカイトはたぶん、『1対1億』の魔王軍相手にも、善戦できる。
ようは、無敵だった。
・・・・船酔いしなければ。
「うぐ・・・・・やっべ、ちょっと気持ちが悪く・・・・・・」
「・・・だから言ったではありませんか。」
バカである。
これでは、先ほどのグロッキーに逆戻りだ。
再び気分を悪くしたカイトの背中をさするアリア。
「だ・・・大丈夫だ。 問題ない。 まだ俺はイケる!!」
「はあ・・・・・そうですか?」
俺はイケる!
そう自分に言い聞かせたカイトは、スックとえびぞるように立ち上がった。
顔に海風が当たって、心地ちよい、
気持ち悪さも、和らぐようだ。
「げふ・・・・・・・・・・・・」
「カイト様!?」
気のせいだった。
無理をすると、こうなる。
よい子のみんなは、こうなる前に、船に乗る前は酔い止めを飲むことを推奨する。
この世界には無いが。
「うぐふ・・・・なかなかしぶといな。 海賊め!!」
「・・・・・。」
とんだとばっちりである。
船酔いに海賊は、関係ない。
アリアも、遠い目をする。
だがこんなグロッキーなカイトだったが、さっきよりは大分マシにはなった。
それと言うのも、この辺りの海に大波を起こしていたクザーラと言う大型海洋魔獣が、遠くへ行ってしまったからである。
おかげで船のゆれも、だいぶ無くなった。
カイトの船酔いは続いているが。
なおもカイトは舷側から物体Xを出し続け、アリアは彼の背中をさすり続けた。
そんな時、見張り番をさせていたゴーレムが、騒ぎ始めた。
何かを、見つけたようである。
他のゴーレムたちも、見張りゴーレムが指差すほうに注視する。
一気に、空気が張り詰めた感じだ。
フラフラなカイトも立ち上がり、船全体にバリアーのようなものを張る。
これで、ちょっとやそっとの攻撃では、こちらに攻撃が届くことはない。
ちなみに立つときも、アリアの肩を借りた。
そうこうしている内に、水平線の向こうから、一隻の船が姿を現した。
「カイト様、あれは・・・・・・!!」
「・・・・ああ・・・!!!」
黒い船体に、あちこちが血ぬれのボロボロな船。
帆柱は三本あり、真っ赤に鮮血したボロキレのような帆が並んでいた。
中でも目を引くのは一番手前側にある帆で、そこには、彗星のようなマークが入れられていた。
海賊の、お出ましだ・・・・!!!
◇◇◇
キュオオオオオオオオオオオーーーーーーーーー・・・・・・ンンン!
ズボボオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンン!!!!!!!
グラグラ。
「うげふ・・・・・。」
「カイト様、こんな時ぐらい、しっかりなさってください!!」
先ほどより、かの海賊船からの、集中砲火を浴びまくっているカイトたちの乗る船。
彼らの攻撃は、船に備え付けの、大砲のような物によるものだった。
飛んでくるのは、話に聞いた火炎など、とてつもない破壊力の、魔法攻撃。
原理は分からないが、大砲では弾ではなく、魔法攻撃を放つようだ。
しかし攻撃は、一発として船に直撃することなく、カイトのバリアーによって、弾かれていた。
しかし、彼らは結構、有効な攻撃を行っているのに違いは無かった。
ドオオオオオオオオオーーーーーーーーー・・・・ンンンンン!
グラグラ。
「おあえふ・・・・・・」
カイトの恒例の、船酔いタイムだ。
直接の攻撃は、バリアーで防げていたが、それた攻撃が、海に着弾したときの衝撃までは防ぎきれなかった。
結果、船は大きく揺れた。
おそるべし、海賊!!
なんて消極的な攻撃を、海賊が望んでいるはずも無く、あちらはあちらで、攻撃がまったく効いていないことに、焦りの色が見え始めた。
彼らとしては、こんな事は、初めてなのである。
これにカイトは、調子に乗った。
「げふげふ・・・・全員生け捕りだ!! うおおーーーーーーーー!!!!」
ズバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンンン!!!!!!!!!
ゴオオオオオオオオオオオオ・・・・
「「あ・・・・。」」
カイト船酔いによる魔力不安定により、予期せず大威力となった攻撃は、一瞬にして海賊船を轟沈させてしまった。
火力過多である。
「カイト様! 一体何をやっておられるのですか!!!」
「うわああああああああああ!!! ゴーレム、あの海賊船の方に船を進めろ!! 急げーーー!!!」
「おううううう!!???」
カイト達は、予期せず、海賊船救助に向かう事となった。
当初の目的なんか、丸忘れだ。
これにて一件落着・・・・・?