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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第7章 ボルタと貿易
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第118話・海賊被害

説明不足でしたので、こちらにて。


『アスターズ商会』の交易船が向かっていた港とは、スラッグ連邦属領グレーツクの『サルボ』という漁村です。

国と交渉はしたのですが、ここしか交易船の入港は、認めてもらえなかったようです。

これから先、あまり出てくるような村でもないので、こちらで書く事としました。

報告からすぐにボルタへ向かったカイト。


いつもはいるアリア達も、今回は連れてきていない。

あまりに突然のことだったので、自分と、報告に来た騎士の二人だけで、転移魔法を使って大急ぎでボルタへとやって来たのだ。

港に到着するなり、ボルタに常駐させていた騎士三人と、数体のゴーレム兵が、カイトに駆け寄ってきた。

雰囲気からして彼らは、誰しもが焦っているようだった。


「何があったんだ!?」


開口一番、カイトは起きた事について彼らに聞いた。

今は、出没したという、『海賊』とは、どういうことなのかを聞きたかった。

いや・・・カイトは、起きたことを信じたくなくて、質問をした。

だが、彼らはうつむいたまま一言も、発さなかった。


直感として、最悪な事態を感じ取ったカイトは、彼らの横を通り過ぎ、港のある方へ急いだ。


しかしそこには、ダリアが作った船の姿はなかった。

あるのは、港に係留されたボロボロになった救命いかだと、港から騎士たちの詰所へ点々と続く、血のあとだけだ。

よく見ると、救命いかだの中は、血のりだらけだ。

この光景に、カイトは、顔をしかめた。

突然全力で走り出したカイトに、騎士たちがやっと、追いつきかけたところで、再びカイトは走り出した。


騎士たちの詰所へ。

いかだがあるという事は、生存者がいると考えられる。

カイトは本人たちに、直接話を聞きたいと思った。

いったい、洋上で何があったのかを聞きたかった。

詰所内へ、駆け込んだカイト。

そこには、担架に二人の男性が寝かせられていた。

一人は、全身が包帯で巻かれ、見るからに大怪我をしているようで、寝かせられていた。

もう一人は、あまり大きな怪我をしている様子はなかったが、衣服などはボロボロであった。


ほかに、人間は見当たらなかった。

カイトには、今おかれている状況が、さっぱり飲み込めていなかった。


そんな彼の背後には、いつの間にか先ほどの騎士たちが集まっていた。

その表情は、誰しもが暗い。

これだけで、商会の船がどうなったのかは、分かった気がした。

だが、聞かずには居れなかった。


「他の人間はどうしたんだ? どこか別のところへ搬送はんそうしているのか??」


カイトの質問に、ひと時の静寂せいじゃくが訪れた後、消え入りそうな声で一人の騎士が、起きたことの説明を始めた。

それは、聞くだけで背筋が凍りそうな、凄惨せいさんな事件であった。


二日前、ボルタから一番近いスラッグ連邦の都市、グレーツクへ向かっていた交易船は、風もちょうど良い具合に吹いており、順風満帆だったという。

だがここで、突如として血ぬれの、ボロボロな黒い帆船がはるか沖のほうからこちらへ、近づいてくるのが見えたという。

瞬間、巨大な火炎が船を貫き、商会の船は一瞬にして火の海に包まれた。

船は、数分と経たずに沈没した。

何隻か浮かんだ、救命艇につかまり、九死に一生を得た乗組員たちに見えたが、かの船は、その救命艇に乗り組み、人間を惨殺して行った。

残った乗組員たちは、大急ぎで救命艇を走らせたが、間に合わなかった。


今いるものは、その襲撃された救命艇に乗っていた二人だ。

惨殺寸前で波でいかだが揺れて、相手の男が海に落ち、その隙に大急ぎで逃げたのだとか。

何度か、先ほどの火炎攻撃にもさらされたが、洋上に浮かぶ木の葉のようにあおられるいかだに、なかなか照準が定まらず、逃げ切ることができたらしい。

運が良かったというしか、言いようがなかった。


この話は今、休んでいる比較的軽傷の男から聞いたのだという。

生き残りは、この二人だけである。


カイトには、にわかには信じられなかった。

二年前、ダリアとこの海域を魔法で調べたときには、魔獣位しかいなかったはずだ。

てっきり、数十年前にこの街を廃都に追い込んだ海賊は、廃業したのだろうと考えてしまった。


その結果が、このザマだった。

自分の調査ミスで、多くの犠牲を出してしまった。

カイトは、怒りに打ち震えた。

何が鉄道だ。

俺のバカな妄想のために、何人もの人間が命を落としてしまった。

では、ボルタはこのまま閉鎖するのか?

それでは、数十年前と一緒だ。

何も変わりはしない。

彼らが何者なのか、数十年前の被害との関連性があるのか、調べなければならない。

そして、徹底的に壊滅させなければならない。

そしてカイトは、決意を固めた。


「報告してくれてありがとう。 俺は調査に行ってくる。 何日かしたら帰るから、アリアたちにはそう、伝えておいてくれ。」


「大公様? どちらへ??」


「おれは、この船で調査に行ってくる。 この事態の落とし前は、俺がつける!!」


そう、調べなければならない。

さっきの事と、何よりドラゴンが作った堅牢けんろうな船が、轟沈ごうちんするほどの威力の、攻撃というのを。

カイトは前にダリアさんが作ったもう一隻の大きな船を指差した。

これで、現場海域へ突撃を敢行かんこうする。

だがそれはつまり、調べに行くという、カイト自身も危険にさらされる確率が高いことを意味する。


「おやめください、危険です!! 相手が何者なのかも、現時点では分かっておりません!!」


「それを俺が調べに行く! このままじゃ、またこの街は、廃都だぞ!?」


少し言いよどんだ後、騎士の一人が、口調を少し荒げて、カイトをさとした。


「大公様、あなた様はこの領地の、領主様です。 あなた様に万が一があっては、この領は再び、路頭に迷ってしまいます、今はこらえてください!!」


「・・・・・。」


その剣幕に、カイトは何も答えることができなかった。

幾人かの騎士が、涙を流し始めた。

そのすすり泣く声は、外のさざ波によって、かき消されていく。


海へ目を向け、再び探索魔法をこの海域全部へ行使してみるカイト。


しかしここの海域は前と同じように、船は一隻も航行していないようだった・・・・




海賊編、短い予定でしたが、長くなってしまうかもしれないです・・・・


また、イロイロな予定が遠のきます・・・・

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