第12話・蒼き炎竜亭
拙い文章ですが、どうかよろしくお願いいたします。
ブックマークありがとうございます。
※2017/8/20 加筆修正しました。
ギルドマスターのガジェットさんに紹介された宿、「蒼き炎竜亭」。
・・・名称はともかくとして、ギルドマスターが紹介する位だから良い宿である。
曰く、安くて、飯がうまくて、風呂があるらしい。
・・・それって普通の設備じゃなかろうか?
いや、ここは異世界だったな。うん。
結構人気の宿らしいが、俺が行ったのが夕方だった甲斐もあってか、部屋は空いていた。
ここの宿の受付の女性も美人であった。
ギルドの受付譲さんとは違った種類で、あっちがおっとり系、こちらは快活系である。
うん、けっこうけっこう。
この世界は、美女率が高いようだ。
連泊すると安くしてくれると言うので、この街を離れる大儀名分を失った今、とりあえずと一か月分を頼んだ。
これで宿泊費は、銀貨八枚。
すごく安い!!
受付で金貨を出したら、周りに驚かれたが気にしない、気にしない。
ご飯は、別料金で夕食が銅貨七枚。 朝食は銅貨四枚と小銅貨六枚らしい。
ちなみに昼食は出していないのだとか。
冒険者向け宿は、大抵こうらしい。
昼は依頼を受けている冒険者が大半なので、当然と言えば当然である。
ご飯を出す時間は日が暮れてからとのことなので、俺は少し、部屋で休むことにする。
案内されたのは、二階の突き当たりの小部屋であった。
ベットの上にゴロッと転がる。
ベットの柔らかいスポンジが、俺の疲れた体をやさしく包み込む。
昨日は野宿で、地べたに貸してもらったシーツを掛けて寝たので、お世辞にも寝心地はよくなかった。
このまま寝たいところだが、食いっぱぐれたくないので、仰向けの体制で天井を見つめる。
今日はいろいろあった。
道行く人に、この都市の事を聞いた。
冒険者にも登録した。(なんかみんな大騒ぎしてた)
・・・そして、この世界に鉄道そのものが、無いことを知った。
今、考えても心くじけそうだ。
『鉄道がある世界でお願い』って言ったのに・・・
くそう、あの駄女神め・・・・!!
ま、それは追々、考えておこう。
今は会えないし。
ここまで来るのに、かなり多くの人たちにもお世話になってしまった。
また、ファデオさん達にも会いたいな。
冒険者同士、いろいろ聞きたい。
・・・なったの、今日だけど。
そんなことを考えていたら、いつの間にかあたりはすっかり暗くなっていた。
そろそろ降りても大丈夫だろうか?
お腹がすいた。 今日のメニューはなんだろうか?
気分的には、親子丼が食べたい。
・・・無いだろうけど。
ムクッとベットから起き上がったカイトは、先ほどの階段を下がっていった。
◇◇◇
「あんたみたいに感動して、泣きながら食うお客は初めてだよ。」
・・・うるさい。米じゃないが、俺が好きな食べ物がこの世界にあるとわかって感動しないわけが有るか。
面白いものでも見るように、俺の目の前には宿の受付姉さんがいる。
出てきた料理は、シチュー。
お腹がすいていたこともあって、シチューはどんどん俺の胃袋へと収まっていく。
具材が若干違う気もするが、味は地球のものと大差ない。
「「・・・。」」
料理はうまいが、目の前の姉さんが気になる。
なぜそう、俺が食っているところをじろじろ見るのか。 食いずらいったらありゃしない。
「今日はあんたで、宿泊客分は最後さ。 私に気にせず味わって食べとくれ。」
とびっきりの笑顔で俺に、食事の続行を促す。
鐘が鳴り、街に夜を知らせる。
「これって教会かなんかの鐘?」
「驚いたね、カイトはマイヤル教を知らないのかい?」
この世界に来て一日も経っていないので、宗教なぞ知る由も無い。
首を傾げてみせると、彼女は呆れたように口を開いた。
マイヤル教とは。
この世界では最大の宗教で、神の子である聖人マイヤルの教えを守り崇拝するらしい。
どこかで聞いたような話だ。
この街の大多数の住民も信仰しているらしい。
なお他にも宗教はあり、そこかしこに礼拝堂があるとか。
聞いたところ宗教対立などは無いらしく、マイヤル教は寛容な宗教なのだろうと理解できた。
「ちなみに私も、マイヤル教の信仰者さ。」
「・・・あっそ。」
聞いてない情報、ありがとうございまーす。
あと、気になるんで、すること無いなら別のテーブルに行って下さい。
ほら、あっちのテーブルのおじさんなんか、俺に睨む様な視線を向けてきているぞ?
俺のそんな気持ちを知ってか、知らずか、なおも俺に会話を振ってくる。
「あんたは本当に変わってるねー。 大抵の冒険者のやつらは、私が少し声掛けてやるだけで、浮き足立つって言うのにさ。」
頬杖を付きながら俺に疑問を投げかけてくる。
・・・だって、性格的に俺、あんたが苦手って今、分かったんだもん。
ジーっと何かを探るように、俺から視線をはずさない。
「・・・・なに?」
シチューを飲み込んでからこいつに問う。
「分かった!! あんた、同性愛者だろう!」
ぶっっっ!!!
大声でなんてこと言うんだ、この女は。
野郎を好きになるとか、寒気がするわ!!
思わず、昼の服飾店の店主の姿が頭をよぎる。
こう言っては、失礼だが、食事中に思い出すとなんかこう・・・
フフ~ンと目の前の女は、まるで正解を引き当てかのように得意満面だ。
な・・・殴りたい。
俺の感動の食事は、最悪なものになってしまった。
俺が南極のブリザードよりも冷たい視線を送っていると、女性はさらに笑いかけてくる。
「ははは! 冗談だって。 あんた、本当にこっちの思うとおりの反応をしてくれるね。
いじめ甲斐っがあるってもんだ!」
あっはっはっ!と、今迄で一番の大笑いをする。
・・・本当に殴りたい。 ここまでしたら危ないって、この女性は分かっていないのだろうか?
メシ食うのに、こんなに疲れるとは思っていなかった。
明日からは、別のとこで食おう。
俺は固く決心するのであった。
◇◇◇
朝。
街の多くの店は、昼前ぐらいから開き始めるので、店はどこも開いていない。
当然、食堂も。
必然的に俺は朝食を『蒼き炎竜亭』でとることにした。
「・・・・・。」
そしてなぜか、俺の前には昨日同様、ウザい姉さんがいる。
朝一番で何かしらの相乗効果があるのか、昨日にも増して美人だ。
が、そんなことは俺には、どうでも良い。
「何で、俺の前に今日もいるんだよ? 他の客の給仕とかしろよ?」
「全員分運び終えたよ? あとはあんたをいじめるだけさ♪」
なんか、イラッとした。
って言うか本当に勘弁してほしい。
さっきから他の宿泊客からの視線がいたいのだ。
「おい、アイツ・・・・」
「ああ。」
ほら~。 ガラの悪いおじさん方が、あとで絡む気満々でこっちを見てる~。
「ところであんたさあ・・・・」
そんなことまったく意に介さないようにばんばん話しかけてくる。
憂鬱だ・・・。
今日は、昨日教えてもらった装備とか、着替えとかをそろえようと思っていたが、なんか朝の時点で
メッチャ疲れた・・・
これから冒険者なんかやっていけるのか、いまさらながら不安になる。
あ、ちなみにおじさん方は案の定、俺が宿を出た瞬間に絡んできたので、全力ダッシュで逃げた。
俺って、足速いな・・・
あはは♪
主人公、しばらくはこの町にいます。
ちなみに、宿屋の女性ですが、この宿の女将の娘です。
女将は娘が抜けている最中、給仕を代行していました。




