第116話・こんな感じでい~い?
ご質問があったので、一応明記しておきます。
アリアとカイトは、王都にいたときにすでに結婚済みです。
後はノゾミを含め、結婚しておりません。
結婚式描写を省いてしまったので、混乱させてしまったようです。
そのうち、この話の辺りに閑話を挿入することを、検討したいと思います。
大変、ご迷惑をおかけしました。
「どう? なかなかきれいさっぱりだろ??」
「わあ、本当だ、何も無いねーーー」
「お姉ちゃん、ここ暇そうだよ。 家で遊ぼうよ。」
「・・・・・。」
「さすがは大公様ですね!!」
俺の紹介に、ノゾミ、ヒカリを始め皆、思い思いに感想を述べた。
正直、褒められている風にはまだ、まったく聞こえないが、それもこの街がまだ、整備途中で何も無いからであろう。
そしてアリアは、『信じられない』と言った顔をしている。
そんなに驚くようなことをしたろうか?
俺たちの前に広がる光景は、只ひたすらに広がる更地。
波が来ないよう、近くの山を削った土で作った、沖に広がる、そこそこ大きい防波堤。
ボロボロになっていたのを、修復して強化魔法で強固になった、多くの桟橋。
そして、バルアにある百人収容のホールぐらいの大きさを誇る船が一隻。
以上である。
街の建物は、ベアル同様いらない気がしたので、森化した部分も含め、全部更地にした。
アリアの言っていた事を、実行したのだ。
持ち主への、取り壊しの許可は取っていない。
数十年前に誰も住まなくなったと聞いたので、省かせていただいた。
だから、文字通り『何も無い』のだ。
それと・・・・
「カイト様、一体これは・・・・・いいえ、何でもありませんわ。」
アリアが、不安げに何かを聞いてこようとして、切り上げた。
こちらへ向けた顔も、再び海のほうへと向ける。
何を聞こうとしたのだろうか?
これは、夫として妻の気持ちくらいは汲み取ってやりたい。
カイトは、極限までシワの無い脳みそをフル回転させ、これを考えた。
なんだかんだでこの二人も、二年も連れ添っているのだ。
いくらバカなカイトでも、できそうな感じはした。
そして彼の、そんなオンボロスーパーコンピュータが、導き出した答えは・・・・
「あの、沖にある防波堤は、嵐とかで大きな波が来たときに、それが街へ押し寄せるのを食い止める役目のものだよ。 うまくできてよかった。」
「・・・・そうですか。 まさかここまで大きな設備をお造りになっていたとは、驚きました。 お疲れ様でございます。」
それだけ言うとアリアは、カイトに一礼して、再び海のほうを見た。
この受け答えに、カイトは『正解だ!!』と、満足そうにした。
さすがは、二年を連れ添った夫婦である。
一方、アリアの質問せんとした内容は、まったく違った。
彼女は、これらの設備の数々を見て、彼にこう聞こうとしたのだ。
『ここの整備には、一体いくら掛かったのですか?』と。
質問しようとしたが、無駄だと悟った彼女は、これを切り上げたのだ。
どうせ彼のことだ。
整備費用など一銭も掛かっていは、しないのだろう。
質問するだけ、時間の無駄である。
要するに、カイトの予想は大外れだった。
しかし彼は、これにまったく気がついていない。
先ほどの発言は撤回だ。
さすがは、カイトである。
だが、このときの彼の表情と、的外れの防波堤の説明から、アリアは、自分の質問の答えを確信した。
『やっぱり、彼は能力だけでここを整備したんだ・・・・』
さすがはアリアである。
あれだけのアホ発言から、このようなことを汲み取るとは。
どこぞの誰かとは、頭の出来が違うのだろう。
「桟橋も、壊れたのを魔法で修復したんだ。 少し、数を増やしたりはしたけど。」
「あなたは・・・・いいえ、やっぱり何でもありませんわ。」
なおも、的外れ発言を続けるカイトに、アリアは再び、質問をしようとしたが、止めた。
話を止め、再び考えるカイト。
もう、夫婦の営みに響かないうちに、さっさと切り上げるべきだと思う。
「・・・ああ、俺はこの街を大きくしたいんだ。 ここを世界で一番の交易港に、俺はするんだ!!」
高らかに宣言するカイト。
すごく領主として、良いことを言った気がするが、アリア的には外れだろう。
「・・・・・・!!」
しかし彼女は、大きく目を見開き、わずかながら微笑を浮かべた。
まさかの当たりである。
誰しも、マグレというものはあるのだろう。
ちなみにカイトは、この微笑には気が付かなかった。
まあ、彼らしい。
「カイト様、『防波堤』のことは分かりましたわ。 では、この大きな船はどうしたのですか?」
そうしてアリアが指差したのは、この港に只一隻、浮かぶ先ほどの大きな船である。
ちなみにアリアが今までに見た中で、この船はダントツで大きい。
なぜ、そんなものが、このような廃都の港に係留されているか。
疑問に思うのは、当然の事と言えよう。
「ああ、それなら・・・・・」
「それに関しましては、この私が説明させていただきます。」
カイトが説明を始める前に、ドラゴンメイドのダリアさんが、説明を始めた。
それによると、これは彼女が作ったものらしかった。
どうやら、カイトがいろいろな物を魔法で作っているのを見て、彼女も何か作りたくなって作ってしまったらしい。
目の前にある船は、『何か作りたくなったから作った』レベルの代物ではないのだが、『カイトの従兄妹』と言うことで、ツッコまれるようなことは無かった。
カイトも、彼女の説明に相槌を打っていたので、恐らく本当であろう。
ちなみに真相を語ると、ここ二年間、努力して魔力灯をカイトのように造ろうとしたダリアさんだったが、ちっともこれが上手く行かず・・・・・
カイトのボルタ整備に付いて行ったダリアさんは、港整備する彼にある提案をした。
それが、船の建造(?)であった。
ちなみに船は、本当は必要なかった。
使う貿易をする者も、必要とされる船の大きさも分からない時点では、船を造っても無駄になってしまうのだ。
だが、彼女は頑なにこれを、譲らなかった。
そこでカイトは、一隻だけ、造ってくれるよう頼んだのだった。
これに未だかつて無いほどに、気合を入れまくったダリアさんは、バカデカイ船を作り上げたのだった。
完成したときの彼女の、得意満面な顔と言ったらもう・・・・
いや、今は語るまい。
それが、この巨大な船建造にいたる経緯であった。
「さあ、じゃあ行こうか!!」
ダリアさんの説明が一通り終わったところで、船の乗り口と思われる場所へ、入っていこうとするカイト。
「ま・・・待ってください、カイト様! これからその船で、どこへ向かわれるおつもりですか!!?」
「え・・・試乗を兼ねて、連邦当たりまで船出しよう・・・・ ダメかな?」
「ダメに決まってますわーーーーーーー!!!!」
この後、船出にノリノリになってしまった、ヒカリをアリアがなだめて、カイトに今回の船出の問題を説明しきるまで、二人の言い合いは続いた。
ちなみに、初の船出は、港内一周となった。
ボルタ整備、開始です。




