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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第7章 ボルタと貿易
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第115話・規格外

これからも、がんばっていきます。

感想など、ありましたらどんどんお寄せください!!

先日から、この街の街道にて、レッド・ウルフによるものと思われる旅人や商隊への、襲撃が多発していました。

そこで私たちは、カイト様にこの被害の収集を、一任することにしました。

本人もノリノリでしたし、ノゾミも一緒に行くとのことだったので、彼らに任せることにしました。

・・・・正直、あの二人でこの事態をいったい、どうやって収拾するのかが気になって仕方がありませんでしたが、護衛の者をつけようとしたらかたく断られたので、任せるほかありませんでした。


まあ、この二人なら大丈夫だろうと、漠然ばくぜんとした安心感のようなものがあったので、それはいいです。


が、カイト様は帰ってくるなり真剣な表情で、私に話があると言って来ました。

まさか、事態の収集に失敗したのでは・・・・

いえ、無いですね。

私の旦那様は、失敗されたら夜まで帰ってきませんから。

今は昼過ぎなので、その線は薄そうです。


「どうしたんですか、カイト様。 改まって『話がある』だなんて。」


「うん、少し相談があって・・・・・」


カイト様の表情が、より一掃引き締まりました。

・・・・・あ。

これは、何か厄介やっかいごとを抱えて帰ってきた感じですかね?

カイト様には、女難の相が出ていますからね。

レッド・ウルフの件で森に行った際に、行き倒れていた少女を拾ったとか・・・・

私は、不安からカイト様の背後にちらりと、視線を向けました。


「ん、俺の後ろに誰かいた??」


「・・・・・・。」


私の視線に呼応して、カイト様も後ろを振り向きました。

この部屋にはいないようですね。

ですが、疑いはまだ、あります。

ここは鎌をかけてみましょう。


「カイト様。 また、何かありましたわね?」


「おお、ダリアさんから聞いた!? そうそう、そんな感じ。」


決定ですわ。

なぜ、ここでダリアの名前が出るのかが分かりませんが、厄介やっかいごと決定です。

領主の仕事に、関係ない方向で。

ここは、冷たい視線で責めつつ、温かい心で受け入れて差し上げましょう。


「カイト様、怒りませんわ。 怒りませんから、正直にお答えください。 いったい今度は、森でどなたをお拾われになったのですか? 状況を、その本人をここへ連れてきてお話ください。」


「待ってくれ!?  何か誤解してる!!  俺は誰も拾ってきていません!!!」


オドオドしながら、カイト様が私に向かって、必死に弁明しています。

拾ってきていない・・・・

つまり、連れて来たのでは・・・・


アリアの、カイトに対する疑いが最高潮に達したところで、彼は話の本題を切り出した。

アリアの顔が、最高に怖かったので。


「話っていうのは、ボルタのことだよ!!?」


「ボルタ・・・・ですか?」


カイトから『ボルタ』という単語を聞いて、キョトンとするアリア。

瞬間、アリアの周りに見えていた、赤黒いオーラが消滅した。

カイトを威圧する空気も軽くなる。

ホッと、安堵あんどのため息をつくカイト。


「実は、アリアに相談したいって言うのは、ボルタの整備のことなんだ。 あそこが使えたら交易に良いなと思ってさ。」


「なるほど・・・・・・そういうことですか。」


腕を組み、考え込むアリア。

カイトの瞳は、期待に満ちている。

これでは、どっちが領主なのかが分からない。


アリアはましたような顔をしているが内心、かなり驚いていた。

カイトから、こんなに領地のことを考えた提案が、聞けるだなんて思っても見なかったので。

この地の特産品のソギクは、今やいろいろな地へ交易品として輸出されている。

その交易相手として、海を挟んだ向こうの大陸を牛耳ぎゅうじっている、スラッグ連邦がある。

ここは鉱山だらけの地で、作物の栽培には向かない土地が多い。

そのため、この国は、食品はかなり、輸入に頼っていた。

その代わり、武具などの原料となる、鉄鉱石を多く輸出する。

この街の、大事な交易相手である。

このルートは、アリアの提案によって、ベアルからバルアへ馬車で運んだ後、船で連邦へ至る。


この領地では領内の改革などは大抵、アリアが提案している。

本当にどっちが、領主なのかが分からない。


「ですがカイト様、前にもお話したとおり、ボルタは海賊が出ます。 その被害のせいで、かの地が廃都になってしまったのは、覚えておいでですね?」


これは、かなり重要だった。

ボルタが廃都になったのは、海賊被害のせいで、交易がとどこおってしまったからである。

つまり、それが払拭ふっしょくされていなければ、結果は同じということ。


「いや、海賊に関しては問題ないと思う。 前に見に行ってみたけど、あの辺りの海には船一隻、浮かんでいなかったようだから。」


「・・・・・あなたは、いつの間にボルタへ向かわれていたのですか?」


カイトのトンデモ発言に、再び頭を抱えるアリア。

彼は、二日以上屋敷を空けたことは無い。

つまり、日帰りで馬車で数日かかる場所へ、出向いたことになる。

転移魔法が使えることは知っているが、あれは城の王宮魔導師でさえ発動すると、数ヶ月は使い物にならなくなるぐらい魔力を消耗しょうもうするものなので、あまり使ってほしくなかった。


「実はさ、街は更地にして置いたんだよ。 ついでに元の道沿いと街道に、魔力灯を点けておいたんだ。 後は、アリアの許可だけなんだけど・・・・」


「・・・・・。」


アリアの不安なぞ何のその。

上目遣いにアリアに、ボルタ整備の嘆願たんがんを出すカイト。

毎度のことだが、彼は規格外すぎる。

毎回毎回、今日は生きているか、とヒヤヒヤさせられる。

だが、彼は、こちらのそんな気持ちはちーーーーとも、分かっておられない。

訴えても、ほとんど効果は無し。


疲れる。

このままでは、こっちが過労死してしまう。


全身から力が抜け、天井をあおいでいたアリアが彼にかけられる言葉は、これだけであった。


「・・・カイト様、ここの領主様はあなたです。 ただの妻である私の許可が、必要ですか?」

まだまだ、問題は山積みです。

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