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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第7章 ボルタと貿易
126/361

第114話・二年後・・・・・

新章です。

ある節目を迎えるので、こういった形をとらせていただきました。

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください。

ベアルに程近い森の中。


木々の間からは、日差しが漏れ、森の中は暗くはない。

べアル近くの森は、かなり広大な範囲がソギクの耕作地へ変わり、街の拡大に伴って森は、二年前に比べ、かなり狭くなっていた。

しかしこの辺りはまだ、開拓はされておらず、森のままだ。


しかしここも、前と違い街道には、この街の領主が設置した魔力灯が林立しており、夜でもかなり明るい。

大抵、旅人は夜になれば野宿をしていたが、ここの街道を通過するものたちの中では、そのまま夜通しで進むものも少なくはない。

そんな街道の中を、冒険者装備の二人が歩んでいた。


「話が分かるヒトで助かったなー。」


「カイト、あれはただの口約束だよ? 守るかどうかは・・・・」


「大丈夫、大丈夫! きっと守ってくれるって!!」


赤目赤毛のどこか馬鹿っぽい男性・・・・ これがここ、ベアルの領主様。

その横にいる赤目赤毛の少女・・・これはここから、山脈を越えた向こう側にあるバルアという街の領主様だ。


彼らは最近、この辺りで街道を通る旅人を襲うというレッド・ウルフの群れの長に、これを止めてもらうよう、話に行ったのだった。

彼らも、別に好きで襲っていたわけではなく、ただこちらに危害が及ぶ前に、自衛目的で襲われるのを未然に防いでいたに、過ぎなかった。

『ただ、逃げればよかったじゃん。』とカイトが言いかけた際、ノゾミには肘で小突かれた。

結局、この話し合いの中心は、ノゾミが済ませたといっても過言ではない。

とんだ領主様であった。


何はともあれ。


彼らは、人間は襲わずに自分たちも、街道や街には近づかないと約束してくれたのだ。

もちろん、彼らがこれを守ってくれるかどうかは不明だが、心配だからといってレッド・ウルフの群れを殲滅せんめつして良いわけでもないので、ノゾミもこれ以上の追求は止めた。


話している間に森を抜け、今は穀倉地帯の真ん中を歩いている。

たわわに実った、ソギクの穂が、重さで下へ垂れている。

まもなく、これらも収穫の時期である。


そして視線を前方へ移せば、そこには大きな建物がある街が見える。

これが、二年前まで人口38人しかいなかった村のような街だったベアルである。

二年の間にカイトをはじめ、この街にたずさわる者たちで

街に産業をおこし、

この街へいたる街道を整備し、

無くなっていた警備兵団も復興し、

商会や教会を誘致し、

ここまでベアルを大きくした。


今は、住む人間も3000人を越え、町の中心部にいろいろな商店の建築ラッシュが巻き起こっていた。

まだ発展途上な街だが、これからもっと、大きくなっていくに違いなかった。

カイトたちも、その街をその眼で確認すると足取りも軽くなり、そこそこ距離があるにもかかわらず、あっという間に街の検問所まで着いた。


ここでは、身分証明書の提示の上で、通ることになっている。

普通、こういった街には城壁があり、検問も城門で行うのがステータスなのだが、この街の方針の、『街はどこまでも大きくなりうる。 城壁は、それの障害にしかならない』というもので、城壁はなかった。


その代わり、領主が造ったという魔防壁で、検問所以外からの進入は不可能にした。

さすがに、この世界では治安上、街を取り囲むものが何もなくては、危険なのだ。

下手な城郭都市じょうかくとしよりは、この方がずっと安全で、効率がよかった。


「あれ? ちょっと待って。 俺、ギルドカードをどこへやったっけ??」


ガサゴソと、服のポケットや袖などを探るカイト。

彼はここを通る際、しょっちゅう、こういった事態におちいっていた。

その光景をよく見ている検問所の騎士は、苦笑いだ。

ちなみにノゾミは、すでに身分証明書ギルドカードは提示済みである。


「大公様、お通り頂いてかまいませんよ? 伯爵様の身分証明書は見せていただいておりいますし、私も大公様の顔は、見間違うはずがありませんから。」


「ま・・・待ってくれ!!  確かこっちに・・・・」


大公様とはカイトのことであり、伯爵様とはノゾミのことである。

普通、領主というものは、自分の領地では顔パスである。

しかしセキュリティー上、問題だ!!

と、この街の領主様が申したせいで、誰もがこの街での検問所通過では、身分証明書の提示が義務付けられていた。

今、領主様はそれに自ら引っかかっていた。

『ミイラ取りが、ミイラになる』とは、まさにこのことである。


まあ、検問所の人もかたくなに通さないわけではないので、これはカイトの無駄な『こだわり』の副産物とも言えるんもだが。


「あった! これこれ!! はいどうぞ、見てください!!」


彼のギルドカードは、弁当箱に挟まっていた。

これには、騎士さんも苦笑いを隠しきれない。


「はい、確かに。  どうぞ、お通りください。」


カイトのギルドカードを確認し終えると、検問所の人は、彼らに通行許可を出す。

よくこんなやつが街の領主なんか務まるなと思われそうだが、周りの人たちの助けと、彼の信じられない運のよさで、すべてはよく分からないが、丸く収まっていた。

本当によく、分からないが丸く収まっていた。


一歩、街の中へ入れば、道の両脇では、多くの建物の建設の真っ最中であった。

これらはまもなく出来る、商店街の建物である。

その一角には、一年前に出来た『商会ギルド』のひときわ大きな建物がある。

この施設のおかげで、商店街建設のメドが立ったのだ。

これの誘致には、大変な苦労があったとアリア・・・彼の妻は言う。

カイトは土俵の外だったので、よく知らない。


そして先ほど、街の外から大きく見えていた建物は、近くで見ると、その存在感は圧巻であった。

その周りには、巡礼に隣国などから来た者たちなどが、ひしめき合っていた。

この大きな建物は、この街に一年半ほど前に建てられた『教会』である。

教会だが、その大きさと、司教様の知名度から、ここは『大聖堂』として扱われている。


『大聖堂』とは、遠く、聖地へ巡礼に行けない者が、代わりに巡礼先として向かう場所のことである。

山脈を越えた西側には今まで、これが無かった。

これが完成して三ヵ月後には、帝国などから多くの巡礼者がこの町に詰め掛けた。

そのおかげで、この街には多くの宿が林立している。

商店街建設が決まったのも、この辺りが大いに関係している。


「おや、カイト様。 何か御用ですか?」


カイトが大聖堂の前でポカーンとしていると、白い修道服に身を包んだ女性が声をかけてきた。

彼女は聖女のイリスさん。

この大聖堂の、司教様を勤めている。

王都でのカイトの命の恩人で、今では友人のようなものだ。

たまにこうして、街であっては、少し雑談とかをしていく。

割とこれが、楽しい。


・・・---っと、あぶない、あぶない!!

今は、一刻も早く屋敷に帰らねばならないのだった。

俺には、しなければならないことがひかえているのだった。


「すいません、イリスさん。 今日は急いでいるので、また今度時間を見つけてお話しましょう。」


「そうですか・・・、領主様というものも大変ですね。 また会えるときを、楽しみにしております。」


これだけ伝えると、カイトは再び、ノゾミと共に屋敷へ足を向けた。

イリスさんは、彼らに一礼すると、大聖堂の中へ戻っていった。



家には、鬼嫁が待っている。

・・・彼女の前で言うと、ヤバいので言ってはいけない。

その彼女に、あることを相談せねばならないのだ。

実は昨日、準備は整った。

だが、タイミングが悪くて言えなかったのだ。

あとは、説明をするだけである・・・・・・!!!

閑話を読まずとも、分かるように構成してみましたが・・・・


正直、不安です。

閑話も読んで頂ければ幸いです。

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