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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第6章 この街に新産業を!!
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閑話・地上の星空

これからも、頑張っていきます。

感想や誤字、脱字などありましたら、どんどんお寄せください!!

ノゾミのバルア世直し(?)から半年。

ベアルにはこじんまりとした、とても小さな商店ができていた。

今は、街の住民の買い物は、ここがすべてである。


しかし、開拓団到着の際には、一ヶ月に一度の商隊来訪しか買い物手段が無かったことを考えると、目を見張る進歩であった。

ちなみにこの間、アリアがまた一店舗、誘致に成功したようだ。

住民たちの作物売却の際にも、店が競合してくれたほうが良いので、大変いいことらしい。

カイトは、その辺は、よく分かっていない。


「カイト様、この街は少しづつ発展していますが、足りないものがございます。」


「ん? 『鉄道』??」


足りないもの=鉄道。

町の発展に呼応し、カイトもそのことは考えていた。

でも、どこに作るかが思いつかない。

山脈は、急勾配が続くので、鉄道を敷くのは厳しいのである。

よって、カイトの中ではこの件は、『保留』となっていた。


「違います。 『商会ギルド』ですわ。」


「『商会ギルド』??」


商会ギルドとは、街の商人を束ねる組織のことである。

あきないを生業なりわいとする者は、これに属することが義務付けられている。

これがあるおかげで、商人の談合による品物の買い取り価格の下落、販売価格の高騰こうとうなどを未然に防いでいた。

ちなみにこれを反故にすると、商人のギルドカードは剥奪はくだつされ、以後、商人としての活動はできなくなってしまう。


このギルドの建物があると無いとでは、だいぶ違うのだ。

具体的には、これがあると、商人たちはあきないがしやすくなるのだ。

在庫を管理してくれたり・・・

荷物の輸送をまとめて行い、輸送コストを下げたり・・・

出店手続きを代行してくれたりなど。


このギルド誘致が、街の発展のキモとなる。


ギルドができれば、この街には商人も集まり、交易が盛んになることは必見だった。

ギルドも、アリアの打診に、首をひねらせはした。

発展状況的に、この街は大きくなるだろうし、街道も世界随一レベルに整備されている。

悪い話ではなかった。


が、この街は、夜が暗すぎる。

様々な事象が考えられる商会ギルド側としては、夜も一部の営業を続けたかった。

だがベアルは、灯りがほとんど無いので、夜は日没とともに暗くなってしまう。


「この商会ギルド誘致に関しまして、カイト様にお願いしたいことがあるのです。」


「建物を建てるとか?」


カイトの発言に、かぶりを振るアリア。

少しの間を置いた後、彼女からは骨が折れそうな作業の打診が来た。


「カイト様、この街全域と街道に、『魔力灯』をつけていただけますか?」


「え”・・・・・・・・・・・・・」


ニンマリとするアリア。

出来る事前提で、アリアはカイトに『魔力灯設置』を打診してきた。

・・・いや、命令してきた。



◇◇◇


魔力灯とは、空気中の魔素を半永久的に吸って、灯る電球のようなものだ。

これを作るには、その原理を知って後、作っていくのが鉄則。


「うおおーーー!! 出来た!?」


「・・・カイト殿、本当に原理は習得したのですか?」


「したした。 魔力灯は、受行部から魔力を取り込んで、それをエネルギーにして灯るんでしょ?」


半ば呆れ調に、出来た魔力灯と、カイトを交互に見るダリアさん。

彼女は、カイトが魔力切れを起こしたときの補助要員である。

身もフタも無い言い方をすると、カイトの魔力補給艦である。

スゴいドラゴンの活用術だ。


それはさておき。


カイトはものの見事一発で、魔力灯を作り上げてしまった。

原理はよく分かっていない、ズブの素人しろうとのはずなのに。

普通、これは十年以上の訓練の末、出来る所業である。

いくら魔力があっても、経験が無ければできない。

・・・・普通は。

だがカイトは、あるものをイメージした。

それは、街の街灯と、ソーラー発電。

それに魔力をプラスでイメージしたら、出来てしまったのだ。

日本での理科の勉強が、地味に役に立った。


しかもこれは、家を建てるほどは魔力が必要ではなかったので、カイトは調子に乗ってポンポン立てて行った。

ちなみに、この世界であまり、魔力灯が普及していないのは、作れる職人が少ないためである。

それをカイトは、ものの数秒でマスターしてしまったので、爆発的に量産できた。

化け物並みのカイトの魔力も、大いに役立った。

昼過ぎには、街全体に魔力灯がともった。

バカもここまで来ると、圧巻である。

周りが明るいので、灯っているかどうかを確認するのは、日が暮れてからだ。


「さあ、ダリアさん!!  街道にもつけようか!!」


「・・・・まだ、造るんですか?」


カイトに、振り回されるダリアさん。

ちなみに彼女も、見ているだけではつまらなかったので、造ってみようとしたら見事に失敗した。

彼女は、修行が必要なようだ。

このときばかりは、ダリアさんは大変に肩を落としていた。


そうして彼らは、街道も同じように、魔力灯をポンポン立てて行った・・・・



◇◇◇


「カイト様、私は仕事中だったのですよ? なぜ目隠しなんかなされるんですか??」


「いいから、いいから♪」


「カイト、暗くて前、見えないよ??」


「お姉ちゃん、手を離さないでね!?」


陽もとっぷりと暮れた夜。

カイトたちは、ベアルの街道を歩んでいた。

カイト以外全員、目隠しをして。

アリア、ノゾミ、ヒカリ。

それに屋敷の人たちも来れるだけ全員。

屋敷から出た瞬間から、全員に目隠しをさせた。

少しの感覚改変も施し、歩いている音などでも、今の場所が分からないようにした。

ちなみに俺は、感覚強化を使っているので、誰かがはぐれそうになっても、すぐに俺かダリアさんが駆けつけて、進路を修正する。

彼らは、いま自分がどこにいるのかさえ、分からないだろう。


イリスさんは、用事があって呼べなかった。

彼女にはまた後日、見せることにする。


「カイト殿。 目隠しなどせずとも、ただ見せればよいのでは?」


「ダリアさんは、ロマンが無いなあ~~~」


ふ~~と、ため息をつきながら、かぶりを振るカイト。

対するダリアさんは、『?』顔だ。

そんなことはお構いなしに、カイトは、街道からベアルの街を一望できるポイントへ、歩を進める。



「着いたよ、さあ、見よ!!」

大きくポージングを取るカイト。


「・・・見ろといわれましても、あなたの魔法で視界が塗りつぶされてしまっていて、何も見えませんわ。」


アリアの言葉に、「そうだった。」と思い出すカイト。

視界が真っ暗では、何も見えるわけが無い。

見たところ、他の人たちも見える位置についたようなので、一斉に『視界アウト』の魔法を解く。


すると彼女らの視界には、黄色く光り輝く、ベアルの町が映し出された。

その光景は、まるで地上にまたたく満天の星空だった。


「わあ! カイト、何あれ、キレイ!!」

最初に声をあげたのは、ノゾミだった。

昨日までは、真っ暗だった街。

灯りは、せいぜい住民たちの家々からの漏れ灯くらいであった。


それが、一夜にして魔力灯で輝く街へと変貌へんぼうしたのだった。


アリアもこれには、驚きを隠せない様子だった。

「ま・・・まさか、一日でこれを?」


よく見ると、自分の周りにも魔力灯が林立していた。

ここは、街道のようだ。

道を魔力灯が、明るく照らしていた。

この方はまた、こんなムチャを・・・・・

そう考えると、呆れと共に少し、怒りがわいてきた。

休み休みで、少しづつやるとかは、出来ないのか?


「お姉ちゃん、星が地上にあるよ! どうして、どうして!?」


後ろの使用人たちからも、歓声が上がっている。

カイトの顔も、非常に満足気だ。


アリアはひとつ、ため息をつくと、横にいるカイトに向き直った。

その表情に、怒りはまったく見受けられなかった。


「カイト様、きれいですわ。 今日はお疲れ様です。 それと、連れてきて頂き、ありがとうございました。」


「ん。」


今回は、怒るのは止めた。

彼は、頑張ってここまでしてくれたのだから。

怒るのは筋違い。

ここはねぎらいの言葉を掛けるのが、妻としての果たすべき道。

他の者からも、カイト様へねぎらいの言葉が掛けられます。


カイト様も、満足そうです。

でも・・・・


「カイト様、ムチャはこれっきりにして下さいませ?」


「・・・・・・・ウン。」


釘は刺しておかなくては参りませんわね。

それが、私に出来る唯一のこと。


もう一度、ベアルの街へ視線を向ければ、その街明かりは、遠く、天空の星空までつながっているように見えました。

そう、それはまるで・・・・・・




この街の、無限の広がりを表現してくれているようでした。

次話、新章です。

投稿まで、しばらくお待ちください。


補足。

この日時点で、カイト達が街道に建て終えた魔力灯は、街道全体の1/10ほどです。

ええ、いくらなんでも、距離が長すぎますから・・・・・

三日後には、建て終えたようです。

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