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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第6章 この街に新産業を!!
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閑話・バルカン転落

これからも、がんばって行きます。

感想など、ありましたらどんどんお寄せください!!

「バルアの町の治安が悪化しているですって!?」


「・・・・は! 物盗りなどは軒並み、減少傾向なのですが、ここにきて誘拐事件などが多発しております。」


バルアの警備兵の一人からの報告に、アリアは絶句した。

ここまで、ゴーレム警備兵や、ノゾミの活躍もあって、バルアでの犯罪事件の発生件数は、ベアルを除けば国で最低となった。

これは実に、誇れることであるといえよう。

だが、なぜかここ最近、誘拐事件が多発しているのだという。


いつも夜に。

必ずといっていいほど、標的は若い女性。

この国では合法とされる、奴隷商も襲われているらしかった。

この連続性と、共通性から、犯人は同一人物。

しかも、規模などから組織で行動していると考えられてた。

しかし、それ以上の有力情報は、無かった。


「分かりましたわ。 あなた方は引き続き、街の警備をお願いいたしますわ。」


「了解しました。 必ず、犯人逮捕を成し遂げて見せます!」


一礼して、警備兵は再び、街の警邏けいらへ戻っていった。

ゴーレム警備隊ですら捕まえられぬ犯人像・・・・

アリアの胸中は、不安で渦巻いていた。



◇◇◇



「きゃあああああああああああああ!!  誰か助けてーーーーーー!!」

「出して! ここから出して!!」

「もう終わりだわ・・・・ 人生おしまいよ・・・・・・・・・」


ここはバルアのとある家の地下室。

そこからは、多くの女性たちの悲鳴ひめいや、絶望の声が聞こえてきていた。

しかし彼女たちの救いを求める声は、地下室内を反響するだけで、外の人間には、聞こえていなかった。

彼女らの首や手足には、自由を奪うように、かせがはめられている。

これは、奴隷となった者に対し、はめられる物だ。


ここには、奴隷商から奪った『奴隷』もいはした。

だが、叫び声をあげ続ける女性は、この街の市民・・・・

誘拐され、奴隷化された者たちが大半を占めていた。


そんな女性たちの前には、ただ一人、下卑げびた笑みを浮かべる、小太りの男がいた。

これからのことを考え、えつに入っていたようだ。

そんな彼の横に、荒くれ男といった感じの、ハゲがやってきた。


「バルカン様、明日には、この人間たちの運び出しのメドが立ちました。」


「ふうむ・・・ なかなか手がかかったからな、代金は上乗せせねば。」


さらに下卑げびた表情を見せるバルカン。


先日彼は、この街のこの部屋で、自分の隠し財産を心待ちにしていた際、ゴーレムが入ってきた。

その胸元には、警備兵団バッチがきらめいていた。

心当たりしかなかったバルカンは、これから逃亡。

だが、逃げ切ることはできず、街の城壁のところで追い詰められた。

「ここまでか・・・・」

そう、彼が思ったとき、ゴーレムが出したのは、一枚の金貨であった。


実は、ゴーレムがしようとしていたのは、落し物を届けることであった。

バルカンがこの街へ落ち延びたとき、その腰の布袋から、金貨が落ちてしまっていたのである。

あせっていたせいで、バルカンはこれに気が付かなかった。

それをゴーレムが発見し、あらゆる感覚に敏感な彼は、持ち主を的確に見つけ出した。

それを、届けに来たに過ぎなかったのだ。


結果、バルカンはこの地下室に戻り、金儲けをしてからズラかる事にしたのだった。

ちょっと、欲が出たのだ。


「この女共は高く売れる。 そうすれば、私のこれからの貴族生活も安泰あんたいだ!!」


わっはははは!! 

と、バルカンの笑い声が地下室をこだまする。

女性たちの叫び声は鳴りを潜め、その表情は絶望の色へと塗り換わった。


・・・が、ここでバルカンの視界の中に、入り口に土色の巨大な人形がいるのが目に入った。

ゴーレムである。

なぜか彼は、部屋の入り口でボサッとしている。(風に見えた。)

一瞬、警戒をしたバルカンとハゲ。

ハゲが、襲いかかろうとするのを、バルカンは止めた。

実は今日も、バルカンは金貨を数枚失くした。

彼はきっと、それを届けにきてくれたのだろう。

そう思い至ったバルカンは、ニコニコ顔でゴーレムへ歩み寄った。


「いやはや、ゴーレム殿。 お勤めご苦労様です。 今日は、どういったご用件ですかな?」


そう言って、さりげなく右手を差し出すバルカン。

もちろん、金貨を受け取るための手である。

・・・・が、ゴーレムは少しうなり声を上げた後、バルカンたちに襲い掛かって言った。


「おひゅふぉおおおおおおおおおおお!??」


「ば・・・バルカン様!? うああああああああああああああ!!!!!」


奇声を発しながら、ゴーレムに捕らえられるバルカン。

ハゲも、抵抗空ていこうむなしく捕らえられてしまった。

女性たちは何がおきたのか分からないのか、呆然としている。

そのゴーレムの手には、確かに金貨数枚が握られていた。

これは、昼間にバルカンが街で落としたものである。

バルカンの予想は、当たっていたのだ。


だが、この部屋に入った瞬間、ゴーレムは絶望に打ちひしがれる多くの女性を見た。

これで、ゴーレムは一瞬、自分がすべき優先順位を模索したのだった。

動きを止めたのは、そのためである。

守銭奴バルカンは、後ろの奴隷のことを、すっかり忘れていたのだ。



かくして、バカなバルカンとその一味は、あっという間にゴーレムに捕縛されていった。

それと同時に、とらわれていた女性たちも、解放されていった。


こうしてこの事件は、一気に解決となったのであった。


なお、副産物として、『過渡期の臨時兵』として置かれたゴーレム警備兵たちは、この功績もあって『常駐兵』へと格上げされた。

後日のアリアからの辞令をもらう際、「おうーーーーー!!」と、ゴーレムがガッツポーズをとったというのは、街では有名な話である。



◇◇◇



「金貨三枚出す!!」


「こっちは金貨五枚だ!!」


異性の良い声あちこちから聞こえてくる。

ここは、バルアの競り市場だ。

競りといっても、この街の特産品の、魚のではない。

人間や亜人・・・ つまり、奴隷の市場である。


この国では、奴隷貿易は合法とされる。

そして彼らは、労働力や愛玩用などとして、売られていくのだ。

この国ではある一定水準、奴隷でも人権は保障されている。

しかし・・・・

それは、表ルートで取引される、『人間の』奴隷に対してのみの適用だ。


「けっ!! また売れ残りやがって・・・・ 少しぐらい、客にこびを売ったらどうだ、あ??  いつも暗い顔しやがって、ちっとも売れやしねえ!!」


「・・・・・・。」


奴隷商に、あごをつかまれ、グイッと顔を上へ向けさせられる少女。

その体は真っ黒に汚れ、着衣もボロボロだ。

世界に絶望したかのように、顔からは、生気が感じられない。


「いいか、次の競りでそんな顔しやがったら、お前の体からは赤い液体が噴出ふきだすことになるからな!?」


シターンと、地面へむちを打ち付ける男。

だが、少女の表情に、変化は無い。

興味を失くしたかのように、奴隷商は少女から手を離し、投げ捨てるように少女を牢屋の中へ入れた。


地面に転がる少女。

疲れからか、起き上がるそぶりを見せない。

その腰には、ふわふわした灰色の尻尾のようなものが、少女の背後から回り込むように包んでいた。

そしてその髪の間からは、灰色の狼のような耳が見え隠れしている・・・・。

バルカンの女性狩りは、魔法使いを使ってやっていたようです。

魔法で相手の感覚を狂わせ、寝ている隙に誘拐、もしくは襲撃する。

これだと、ゴーレムの察知能力にも引っかかりません。


ちなみに昼、バルカンは変身魔法をかけてもらって外出したようです。

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