閑話・教会その3
これからも、がんばっていきます!!
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「カイト様、聖職者様が本日、ご挨拶に参られるとの事ですわ。 決して、失礼の無いように・・・」
「分かってるよ、そう何度も言わなくてもそれぐらい、一回言われれば覚えるって!」
昨日から、アリアがしつこい。
口を開けば、『聖職者様が来るから、ちゃんともてなせ』という言葉。
そんなに何回も言われては、耳にタコが出来てしまう。
一ヶ月ほど前、教会の建設が始まったここ、ベアル。
その大きさはかなり巨大で、俺が王都で見たものよりも大きいかもしれない。
たしか・・・・地元の人は、『大聖堂』とか言っていたっけ??
存在を誇示するためなのだろうけど・・・・
ぶっちゃけ、この街に造るにしては大きくないか?
アリアに言っても、『そんな事、私は知りませんわ。』と言われそうなので、この思いは胸に秘めたままにするが。
そんな巨大な教会も、つい数日前には完成したようだ。
ささやかながら、住民たちとも、完成のお祝いをしたのだ。
しかしそのときは、『教会の聖職者』とやらはこの街に到着しておらず、祝ったのは俺たちのほかは、建設の魔法使いだけであった。
そして今日、その聖職者とやらが、この街に到着。
教会の司教として着任。
その挨拶に、この街の領主の俺の屋敷へ来る、との事なのだ。
「いいですか、カイト様。 司教様とは、この『マイヤル教』に関するこの街での、最高責任者となるお方ですわ。 くれぐれも、粗相の無いように・・・・」
アリアの言う、司教様の偉さとかは、俺にはさっぱりだ。
俺は日本では、無宗教だったからな。
アリアの力説で、『その人は偉いらしい』と言うことは分かったが、なぜ彼女は焦ったように話してくるのか、俺にはわからない。
「カイト様、奥様。 聖職者様がお見えになりました。」
メイド長のクレアさんが、一礼した後に、俺たちにそんな報告をしてきた。
挨拶とか、めんどくさそうだなあ・・・
「さあカイト様!! 玄関までお迎えに上がりますわよ!!」
アリアが、俺をせかす。
『こんちは、さようなら』で終わらないかなあ・・・・
カイトのアホな願望をよそに、彼らは聖職者を出迎えに上がった・・・・
◇◇◇
今、私は目の前の光景が信じられません。
私とカイト様は、『聖職者様がお見えになった』との報告を受けて、こうして屋敷の玄関へ、足を運びました。
なのですが・・・・
「あれ!? お久しぶり!? 何でここにいるの!?」
「ベアルの街の、司教を命ぜられて、来たのですよ?」
来たのは、この街の司教と名乗る修道服姿の女性・・・・
この方は、私も見覚えが・・・
・・・・ま、まさか・・・・・・・・・
せ・・・・・聖女様!!???????????
な・・・なぜ、このような街に!?
「なーーーんだ、聖職者って、イリスさんのことだったのか!! 変にモヤモヤしてて損した!!」
「お久しぶりです、カイト様。 いえ・・・今は、大公様でしたわね。」
しかも、なぜか二人はお知り合い・・・・
王女時代の私ですら、言葉を交わしたことはありません。
過去にこの二人に一体、何があったと言うのでしょうか??
「あ、こんなところで立ち話もなんだから、中で話そうよ? お茶も用意してくれているみたいだし。」
「では、お邪魔いたします。」
フレンドリーですわ。
聖女様は、マイヤル教でも、かなり上位に位置する者の称号です。
正直、国王よりも立場は上となりえます。
そんな方が、カイト様と、大変親しげにしています。
注意したいですが、なぜか声が出てきません。
いけません・・・・
自室に、引きこもりたくなってきましたわ。
「アリア、何やってるの? 早く入っておいでよ。」
「この国の王城で、カイト様とご婚約された方でしたね? 堅苦しい挨拶などは抜きにして、雑談などいたしませんか?」
聖女様の言葉に、私の頭は真っ白になりました。
今の状況が、まったく飲み込めません。
「あの・・・奥様? お気を確かに・・・・」
メイドの、私を気遣う言葉は、まったく耳に入ってきませんでした・・・
◇◇◇
「今日はとても、楽しかったです。 また暇なときにでも、お会いしましょうね。」
「俺も楽しかったよ、いつでも遊びに来てね。」
嵐のような時間(雑談)は過ぎ去り、聖女様は帰られるそうです。
今まで、ずっとフリーズしていたせいで、何も覚えていません。
用意してきていた挨拶文など、どこへやら・・・でした。
自分の情けなさに、死んでしまいそうです。
「アリアさん、今度は、女同士、集まってお話でもいたしましょうね。 カイト様には内緒で。」
悪戯を思いついた、子供のように舌を出して聖女様が、私にそんなことを言ってきました。
私は、聖女様が分かりません。
もう、なんか王城で見かけたときの凛とした雰囲気など、微塵も感じられません。
「じゃーねー、イリスさん。」
大きく手を振って、彼女を見送るカイト様。
彼を、にらみつけます。
ええ、こんな大事な事を彼は、隠していたのですから。
「・・・どうしたの、アリア?? そんな怖い顔して。 イリスさんとの会話、楽しんでたじゃん。」
楽しんでなど、いませんわ!!
まったくあなたと言う人は、本当に・・・・!!
尋問ですわ。
この方は、おかしいです。
ただおバカなだけではなく、一歩間違えれば即死級の爆弾をこの方は、一体何個抱えていらっしゃるのか・・・
尋問しなければ、彼も私も、この国すら危険な香りがします。
まったく、この人は、ケロッとした顔をして・・・・!!!
ちなみにこの尋問は、翌朝まで続いたと言う・・・・
教会は、終了です。
でもまだ、ベアル発展などに関する閑話が続きます・・・