閑話・教会その1
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ここ、ベアルという街は、恐ろしく何も無い街でした。
着いて早々に、その惨状に思わず、肩を落としてしまった事を、今でも覚えています。
住民38人。
主な産業は、家庭菜園。
居るのは老人と、病人ばかり・・・・
着いた貴族の屋敷も、倒壊寸前・・・
いえ、すでに半壊していたので、あれは倒壊済みですわね。
その上、カイト様は能天気。
この街はこの先一体、どうなってしまうのだろうかと心配してしまいました。
ええ、何日も眠れない夜を過ごしましたわ。
それがどうでしょう。
十分にはまだまだ程遠いですが、今では住民は約2000人。
主な産業は農業です。
一刻も早く、この街を貿易都市とするには、この街で魅力的な産業を興す必要があったのです。
あと一年もすれば、本格的に貿易が始まると、もくろんでいます。
そのためには、まだまだ足りないものだらけですわ。
存在していなかった、この街の警備をしてくれる者も今はいます。
ゴーレムという魔物の一種なのですが・・・・・
贅沢は言っていられません。
この街は、これから急ピッチで発展していくだろうと思います。
バルアという領地を押し付けられてしまったときは、どうなるかと頭が真っ白になってしまいましたが、カイト様が傍にいたおかげで、思考停止に陥らずに済みました。
あの時は、本当にカイト様の存在に、感謝したものですわ。
アレのおかげで、この街はここまで成長したのですから。
今の時期に、このような封書が来るのも、その表れですわ。
カイト様にお伝えしたら、どんな顔をされるでしょうかね?
◇◇◇
「きょうかい~~~~???」
なぜ、語尾をそこまで延ばすのでしょうか?
・・・考えてはいけませんでしたね。
でも、そのバカみたいな領主にあるまじき表情は今すぐ、お止めになってください。
「はい、そうですわ。 直々に、マイヤル聖国の法王様からのお手紙が届いております。」
これは、大変異例です。
教会は、大抵こちらから誘致するものなのですから。
私も、最近はそのことばかりを考えていました。
この世界では、『マイヤル教』の信者は多いですからね。
これのある都市と無い都市では、明らかに発展に差があります。
教会誘致を始めようと思った矢先に、この封書が届きました。
内容は、
『ベアルへ、教会を立てる許可を願う』
と、言うものでした。
ここは自治領です。
普通は、国王がそういった許可を出しますが、この領地でその権限を持つのは、カイト様です。
こういった許可は、国王は通さずに来ます。
ここは、ガン押しで、許可を取り付けようと思います。
町の発展に、必要不可欠ですからね。
「ふ~~ん、アリアが良いなら、いいんでしょ? サインしたら渡すね?」
「・・・・・・・。」
忘れていました。
彼は、モノすごく軽い人間なのです。
法王様からの手紙なんか、頭上でヒラヒラさせています。
信者が見たら、発狂モノですわ。
「ええ・・・お願いします。」
なぜ、サインを頂くだけでこんなに疲れるのでしょう?
別に、言い合ったりしたわけでもありませんのに・・・・
なんだか、誘致までしようとしていた私が言うのもアレですが、この街に教会ができるのが、不安で仕方ありませんわ。
でも私はこの時は、まだ彼を侮っていました。
ええ、忘れていました。
彼が、『天然でバカ』ということに。
今考えても、なぜあそこで、教会を造るという許可申請が、この街に来たのか、不思議・・・・
いいえ、まさかカイト様があんな方と、お知り合いだったなんて。
今考えても、体中の震えがとまりませんわ。
『無知とは罪』
この言葉の意味が、我が身をもって理解できました。
この後、とんでもない事態に巻き込まれようだなんて、考えもしませんでしたわ・・・・
もちろん後日、カイト様には厳重に抗議させていただきましたわ。
数話、閑話を続けた後、新章となります。




