第113話・人間ですよ?
これからも、がんばります。
感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!
今、俺の胸元には、きれいな貝のブローチが輝いている。
これは昨日、ノゾミがくれた物なのだ。
これまで部屋に引きこもっていたのは、これを作っていたかららしい。
うらやましいだろ?
ヒカリも『いいなー』って言っていたんだぞ?
俺は昨日は、アリアのせいで部屋から夜になるまで出してもらえなかったが、それも帳消しになるほどに嬉しかった。
だが、それもここまでだ。
「さあ、カイト様。 今日もお仕事日和ですわよ?」
「・・・いえっさー。」
ニンマリと俺に笑顔を向けてくるアリア。
俺を部屋へ閉じ込める気、マンマンだ。
だがそれに、抗う勇気は俺に無い。
彼女の笑顔は、背筋が凍りつきそうだぜ・・・
そうして、自分の部屋に連行される俺。
しかし、彼女はいつものスパルタモードとは打って変わって、俺の横に立つとすぐさまある提案をしてきた。
「カイト様。 かの畑には、魔石ガラの集積場を整備しませんか?」
「え・・・魔石ガラ?」
俺の疑問の声に、アリアは一度うなづくと、彼女の計画を聞かされた。
「カイト様。 魔石は、一度使ったらただの石になるものですわ。 それはご存知ですね?」
もちろん、それは知っている。
シェラリータでは、俺なりに調べてから、領主様たちにも提案したのだ。
知ってて当然である。
「魔石はもともとその内部に、『魔力』を溜め込んでいたものですわ。 これを発散されてしまうと石は逆に、周りから『魔力』を吸うようになるのだそうです。」
アリアの話では、魔力の無くなった石は、魔力を蓄えようと周りから魔力を吸い出すらしい。
これは、結構厄介な性質なので、ガラ石は普通、秘境へ捨てられるらしい。
「その性質が、役に立ちますわ。 魔石ガラに魔力をある程度吸ってもらって、畑の魔力を薄くしていただくのです。」
「それってもしかして、魔力がたまったら魔石が売れるってー・・・」
ここまでカイトが言葉を発したところで、アリアはかぶりを振った。
それには、まだ莫大な時間が必要となるらしい。
およそ、千年ほど。
世の中、うまくはいかないものだ。
「そっか・・・でも良いね、それ!! そうしよう!!」
カイトに、これを上回る提案なぞ、ある訳が無かったので、この提案は即、採用が決まった。
アリアもとてもいい笑顔だ。
さっきの、背筋が凍りつきそうな笑顔がウソのようだ。
「では、手配しておきますわ。」
清々しいほど、すんなりと話はまとまった。
いつも、こうだと良いのに。
あれ、でもそれなら・・・・
「ねえ、アリア? 最初からこれを考えていたのなら、それを提案してくれれば良かったじゃないの??」
昨日のあれが、丸々無駄だったと思うと、複雑だ。
トイレに行くのすら、大変だったんだからな!!
これは、返事によっては怒って良いと思う。
すると、アリアは「はあ・・・」と、ため息をついた。
俺は、そんなにおかしな質問をしただろうか?
すると彼女は、入り口に向けていた体を、俺へと向き直らせた。
そして、右手を、俺の肩に置く。
「カイト様、私だって人間です。 そんなにドンドン解決策が思い浮かぶはずがありませんわ。 昨日だって、バルアで溜まっていた書類を、片付けていたときにたまたま思い浮かんだに過ぎません。 あなた様の昨日のことは、決して無駄ではありませんでしたわ。」
俺は彼女を、今までアリアを(いろいろな意味で)完璧超人だと思っていたが、そうではないらしい。
悩むこともあれば、誰かに助けを求めることだってある。
彼女も俺と同じ、一人の人間なんだと再認識させられた。
カイトは、自分の周りの者たちに人外が多すぎて、アリアもそのカテゴリーに入れていた。
何をしているんだか。
アリアが聞いたら、どんな顔をすることだろう。
これは、知らぬが仏である。
「ところでカイト様、言い忘れていましたが、これからは忙しくなりますわよ?」
「え、どうして? 今、問題解決したじゃん。」
アホなカイトは、今の魔石の件だけで、この街のすべての問題が解決したような気分になっていた。
もちろん、そんなわけが無い。
ベアルは、人口三十八人から始まった、恐ろしく発展途上の街なのである。
問題なんて、いくらでもある。
今回のこれも、そのひとつに過ぎなかった。
アリアは、とても苦い顔をした。
彼は、この前提がまだ分かっていない。
問題が一個解決するたびに、コレである。
「もっと、領主としての・・・」と言いたいところではあるが、たぶんそれでは、何も変わらない。
彼には、それを分からせつつ、その一つ一つの問題に、真摯に応えていってもらわなければならない。
そのための、言葉選びは大変である。
はっきり言って、彼女がこの屋敷の中では一番、領主らしかった。
ちなみに最下位は言わずもなが、カイトである。
「カイト様、『千里の道も一歩から』と申しますように、一つ一つの問題の解決は、大切な街の発展の一歩となります。 その先には、この街の発展がありますわ。 そうすれば・・・・」
「鉄道が敷ける!!」
アリアが言い切る前に、目を輝かせてズイッと体を寄せたカイト。
その瞳は、期待に満ち溢れている。
「そ・・・そうですわ。 それも実現できるでしょう・・・」
さすがのアリアも、彼のこの豹変ぶりに、目を見張った。
ここまで彼をたきつける『てつどう』とは一体、なんなのだろうか??
アリアも最近、それが気になり始めていた。
「問題よ! いくらでも来い!! 俺が受けて立ってやろう!!」
ワハハと、仁王立ちするカイト。
とにかく、彼のやる気は再燃したらしかった。
ちょろいヤツである。
次なる新作品を、現在、切磋琢磨中です。
なんというか・・・・
問題が多発してしまったので、今修正中なのです。
公開するメドが立ちましたら別途、掲示板などでご案内申し上げます。




