第110話・新たな問題浮上
これからも、がんばっていきます。
感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!
ベアルに開拓団が到着して早三日。
一昨日には、ささやかながら、彼らの歓迎の式典を催した。
そして昨日には、彼らに対し、彼らの育てて頂く予定のソギクの種を開拓団の人たち全員に配り終えた。
早速今日から、自分に割り振られた畑で作付けを、行っている人もいるようだ。
ちなみにだが、ソギクが収穫できるのは、今から半年後である。
比較的に結構、成長速度が速いので、この街の財政が潤うのも時間の問題となった。
・・・が、それまでは、赤貧期間だ。
住民たちには収入なんて、何もない。
お金は、出て行く一方だ。
住民たちには、王宮から払われる俺の給料から一年間、決まった額だけ労働賃金を払う予定である。
その期間、俺たちは超ビンボーとなる。
鉄道は、相も変わらず遠い・・・・・
そして今、この街から多くの騎士たちが去って行った・・・・
「お帰りなさいませ、カイト様。 父上には、お会いになりましたか?」
「いや? 騎士の人たちとは、城の門の前でお別れしたから会っていないよ??」
たった今、カイトが転移魔法でベアルへと帰ってきた。
それを、アリアとヒカリが出迎えてくれる。
最近、ずっとカイトにべったりだったノゾミは、このところ部屋にこもりっきりである。
理由は、本人以外、誰も知らない。
そしてカイトはというと、転移で王都へ行っていた。
王都へ、この街に抑留されていた『王宮騎士団』の者たちを、送り届けてきたのである。
詳しいことは、前回語ったので割愛するが、カイトは結構、マズイ事をしてしまっていたとだけ、ここへ記しておく。
「カイト様。 お伝えせねばならないことがありますわ・・・・」
顔を、うつむかせるアリア。
帰ってきて早々に、これかよ。
この陰鬱とした雰囲気から察して、どうせロクな事ではない。
が、聞かないとさらに、ロクデモ無いことになるのは今までも、何度となく経験済みなので、アリアに話に続きを促す。
「実は・・・・ 例の『バルアの警備兵団の一部を、このベアルの街に移動させるという目論見なのですが・・・・・」
これは、先日アリアと共に、この街の再興計画の一環として、街の治安向上の為に、バルアの警備兵団に、この街の警備を担ってもらおうという、そういう話である。
一応、ノゾミに許可も頂いたし、問題は起きないはずだが・・・・
「バルアの警備兵団の人数がなぜか、少ないのです。 これではこの街に呼ぶことができないのです。」
「・・・・は?」
「おかしいとは思っていたのです。 バルアで私が見かけた騎士は皆、同じ者ばかりでした。 ふつう、あれだけの大きな都市であれば、なかなか同じ者と会うことなど、無いのですが・・・」
「待って、どういうことか、説明してくれる??」
アリアの説明によると・・・・
俺が数日前、街を警護を担ってくれていた『王宮騎士団』の人たちを帰すことを決断したすぐ後、早速バルアの警備兵団に、『人員の一部を、ベアルへ廻してくれないだろうか?』という旨の内容を記したお触れを出したらしい。
ここまでは、特に滞りなく順調に進んだ。
問題は、彼らからの返答だった。
「バルアの警備兵団は、総勢十名なのだそうです。 こちらへ廻せる人員は、いないそうですわ。」
アリアが、溜息と共に、吐き捨てるように言った。
ちなみに、バルアは、広さだけで言えば、シェラリータよりも大きい街である。
俺がシェラリータに、はじめて来たときに街にいた警備兵団の人が、約二十五人であった。
それが、ベアルはたった十人。
少ないどころの話ではない。
よくそれで、治安が持っているなってくらいの話である。
「地元の漁師達が、自発的に自警団を結成し、治安を守っていてくれていたようです。 彼らには、私からお礼を述べておきましたわ。」
それなら良かった。
・・・---ってなるかアホウ!!
『バルアからベアルへ、警備兵団をちょっと動かせばいいか』位に思ってた。
ふたを開けてみれば、これである。
最悪って言葉は、こんな状況のためにある言葉だと悟った。
ベアルどころか、バルアの警備兵団まで整備しなくてはならなくなった。
「なんで、そんなにバルアの警備兵団、少ないの!?」
まず最初の疑問はこれだ。
なぜ、シェラリータには二十五人もいた警備の人が、バルアにいないのか。
せめて二十人もいれば、三人ほどならベアルへ連れてくる事が、出来たかも知れないのに。
「バルカンと言う、前の領主が、彼らの給料を横流しして、それが原因で、辞めてしまうか、違う街へと行ってしまったようですわ。」
アリアが、怒気をはらんだ声で、俺にそう説明をしてくる。
バルカンとは、バルアの前任の最悪のバカ領主らしい。
ここでも、そいつが街に、暗い影を落としているようだ。
なんて事してやがるんだ、その前任の領主ってやつは。
俺も大概だけど、ソイツ、最悪すぎるだろう。
最近になってカイトは、自分の自己理解が深まってきたようだった。
それもこれも、アリアと言う、カイトには出来すぎた妻がいてくれたおかげである。
まあ、それでカイトのバカが治るとは思えないが。
「そこで、カイト様にご相談があるのですわ。」
「え、俺に警備兵団で、出来ることなんかあるの?」
ニヤリと、何かに期待するような眼差しをカイトへと向けるアリア。
これまで、怒りの表情をあらわにしていたアリアが、途端に笑みを漏らしたことに、思わず身震いするカイト。
「お姉ちゃん、顔怖いよ?」
これまで、沈黙を保っていたヒカリも、不安を隠せない様子だった・・・・
ノゾミちゃんですが・・・
もう少ししたらまた、頻繁に出てきます。