第109話・王宮騎士団の皆さま
これからも、がんばっていきます。
感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!
「改めてご説明いたしますわ。 これは住民の要望書ではありません。 騎士の処遇についてですわ。」
「ん? 処遇?? 待遇改善とか??」
今、カイトとアリアは屋敷の一室で、書類仕事を片っ端から、片付け続けていた。
山のようにカイトの机の上に積まれた、住民の要望書を片付け続けた彼らは、昼ごろからこの作業を続けており、辺りが暗くなった今になってやっと、残り一件まで、終わらせることが出来たのである。
が、その一件は、なかなかの曲者であった。
「これは、今、召抱えている騎士を今後、どのようにするか・・・という重要な案件の書類ですわ。 よくお考えになって、サインしてくださいませ。」
「・・・・どゆこと?」
「・・・・まずは、書類をお読みになってください。」
半ばあきれ調にアリアが、俺に書類を読むことを勧めてくる。
目の前に置かれた書類に目を落とし、読み進めてみると・・・
・騎士はいつ、王宮に帰らせるの?
・いや、いつでもいいよ? 催促はしていないし。
・でも、今後どうするのかが気になってさーーーーーー
俺風に訳すと、こんな感じだ。
うん、さっぱり分からないや。
アリアに聞いてみよう。
「これって、どういうこと?」
そうアリアに書類を片手に聞いてみると、彼女は、こめかみに指を当ててうなった。
そんなにヤバい案件だったのだろうか?
「・・・いえ。 そうでしたわね、カイト様は分かっていらっしゃらないのでしたわね。」
なぜ、ここで俺の名前が引き合いに出されるのかが、分からない。
分からないが、知らなくてよい情報っぽいので、スルーすることにした。
今大事なのは、この案件を早く片付けて、飯を食って早く寝ることである!!
人間、睡眠は大事なのだよ。
「カイト様がベアルへ赴任された際、護衛の騎士を沢山、連れていたことはご存知ですよね?」
「ああ、もちろん。」
俺がベアルに赴任したとき・・・・
彼女が言っているのは、俺が大公として、この領地に来たときの話だ。
あの時は、ベアルは一度も来た事がない場所だったので、道中は馬車移動だった。
俺とノゾミは、多分に走ったほうが早く着いた事は、内緒である。
そのとき、護衛として、多くの騎士の護衛がついたのである。
実に、にぎやかだった。
「たしか、今も街の警備についてもらっているよな?」
ベアルに着いた際、あまりにこの街が無防備だったので、その護衛さんたちは数人を屋敷に残し、街で警備兵団まがいのことをやらせている。
騎士だけあって、実に治安向上に役立ってくれたと思う。
領民38人では、治安向上もクソも、あったものではないと思うが・・・
あの騎士さんたちが、一体どうしたというのだろうか?
「カイト様。 お忘れのようですので簡潔に申し上げますが、あれらの騎士たちは本来、カイト様が指示を飛ばしてはならない者たちですわ。」
「え!? それ、どういうこと!?」
「・・・カイト様。 この街の警護についている騎士たちは、『王宮騎士団』の者たちですわ。 あなた様についてきたのは、『大公様を目的地到着まで護衛する』という、国王の命令あってこそですわ。 つまり、彼らは本来、今ここにいてはならない者たちなのです。」
・・・・・・すっかり、忘れてました。
そうなのだ。
自然な流れで、護衛してくれた人たちには、引き続きこの街の護衛を頼んでしまったのだが、それは逆に、国王の命令違反でもあるわけだ。
国王の命令違反・・・・・・・
ヤベェ・・・・・
すごい死亡フラグ臭がする。
「騎士たちは、あなたを慕っているのでこれを呑んでくれましたし、国王もあなたを気に入っておられるので、いまのところ問題にはなっておりませんが、現状のままにしておくわけには参りませんわ。」
いつになく真剣な表情で、俺を見つめてくるアリア。
その目は、『これはマズイ状況です』と訴えてくる。
俺も、そう思います。
再びカイトの脳裏には、処刑台にしょっぴかれる自分の姿がよぎった。
それを知ってか知らずか、アリアが矢継ぎ早に、話を続ける。
「カイト様、大丈夫ですわ。 即刻対処すれば、問題はございません。」
「ありあ・・・!!」
アリアが今、天使サマに見えた。
彼女は、窮地に立たされた俺に、救いの手を差し伸べてくれる救世主。
いつも『鬼』とか言ってごめんなさい。
これからは、天使サマとして、崇めさせて頂きます。
アホなカイトは、またもバカなことを考えていた。
アリアが知ったら、どんな目にあわせられても文句は言えないだろう。
彼女に心を読む能力がなかったのが、幸いした。
「ほら、涙をお拭きくださいカイト様! 領主がそれではみっともないですわよ??」
そういって、俺にハンカチを渡してくるアリア。
すごく優しい顔だ。
いつもの般若のような顔からは、想像できないほどに慈愛に満ち溢れている。(気がする)
・・・訂正だ。
カイトはアホで、失礼なやつである。
アリアが知ったら、殺されても仕方ないだろう。
「まずはカイト様。 王宮騎士団の者たちは、王都へ帰すことにしましょう。 それがまず、すべきことですわ。」
「そうだな! うん。 ・・・ところで、街の護衛はどうする?」
バカなカイトだったが、少しはこの領地の気配りが出来るようだ。
彼も、若干は成長しているようだ。
まあ、本当に微々たる成長速度ではあるが。
「当分は、屋敷の護衛の者たちで回す事としましょう。 その上で、バルアの警備兵団の一部を呼び寄せるなり、この街の住民で自警団を結成するなり、何かしらの対策の手を打ちましょう。」
「う・・・うん、そうだね、そうしよう!! 出来るかい、アリア?」
「ではカイト様、こちらにサインを・・・・・」
そう言って、書類の右端の空欄を指差してくるアリア。
カイトが、敏腕の領主様に見えるのは、こういったカラクリがあった。
「アリア、いつもこんなに小難しいことをしていたんだな。 いつもありがとう。 俺も、これからがんばるよ?」
「・・・・・!!」
一気に、茹で上がったタコのように、顔を真っ赤にさせるアリア。
彼は、かなりトンデモない領主だ。
政治はさっぱりだし、口から出るのは、二言目には『てつどう』である。
だが、彼でなければ出来なかったことが、多分に多くあったと思う。
これまでも、そしてこれからも・・・・・・・・・
う~~ん・・・
まだまだ、問題は山積みです・・・・