第108話・書類整理
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「・・・・・・これは、何?」
到着した開拓団の案内を、アリアに止めさせられたカイトは、屋敷の自分の執務室の机にある椅子に座らされた。
しかし、その机の上には朝、彼がこの部屋を出るときにはなかったはずの、多くの書類が山積みにされていた。
大公の彼が、本来『すべき』仕事のひとつである。
通常、自由なカイトに代わり、アリアがこの仕事をこなしていたのだが、これではいけないとアリアも思ったらしく、今日はカイトに、これをさせる腹積もりである。
「あなたがすべき、『仕事』ですわ。 ご心配なく。 私だけでどうにかなる分に関しては、すでに終わらせてありますわ。」
得意げに胸を張るアリア。
だが、除外したとは言うが、カイトの前にそびえる書類の山は、結構尋常じゃない量だということを物語っている。
こんな俺に、一体何をさせようというのか。
「今日、今からあなたには、この街の『整備』に関するこれらの書類に対する吟味と、対策などについて考えていただきますわ。 ちなみに、バルアの分は別にしてありますので、ご安心を。」
ぜんぜん安心じゃない。
今ある、この書類をやっつけても、まだあるというのか?
勘弁してくれ。
俺はこういう、デスクワークは睡眠導入剤にしかならないんだ!
「まずは、こちらになりますわ。 『畑に用水路がない。』 カイト様、検証の上で、対策を!!」
いいよ、検証なんて。
俺がパパッと、それぐらい作ってやるさ。
そうアリアに言ったら、メチャ怒られた。
「カイト様!! 少しは、まじめにお考えください!! これは、街の住民の要望です! それも、個人宅の家庭菜園の話ですわ! こんな事まであなたがなさっていては、いくつ体があっても、足りませんわ!!」
「ご・・・、ごめんなさい」
もう、検証なんていらないじゃん。
アリアが決めちゃっているんだから。
言ったら、怒られるだけでは済まなそうなので、言わない。
「じゃあアリア、サインしておいてくれる?」
いつものように、アリアに書類を渡すカイト。
これにアリアが、さらに顔を真っ赤にさせて激昂する。
「私に渡してどうなされるのですか!! それは、あなたがサインをするものですわ!!」
「ええ、そうなの!?」
アホなカイトは、こういった政務活動は一手に、アリアに任せっきりだったので、ここのところがまったく分かっていなかった。
そもそも、領主の妻がこういったことを一手に引き受けるほうが、この国ではずっとレアである。
分かってはいたが、アリアは落胆を隠し切れなかった。
「・・・・まあ、いいですわ。 お仕事に関しましては、これから覚えてください。」
「え? まだやるの??」
「当たり前ですわ!!!!!」
住民の要望ひとつで、終わるわけがない。
この街は、発展途上なので問題は、山積みなのである。
カイトは、この辺も分かっていない。
こうしてカイトは、ずうっと執務室でアリアの監視下で、仕事をする羽目になった。
◇◇◇
「カイト様、こちらは『耕作した畑が、森の害獣に荒らされて困っている』旨の要望書ですわ。」
「ああ、そうだな・・・・・人的被害がでかねないから、俺がどうにかノゾミと対処してくるよ。」
「了解しましたわ。 では、こちらにサインを・・・・」
アリアに指差された、左端の空欄に、サインをする。
これでまた一枚、撃墜だ。
もう、この作業をアリアと続けてどのくらいになるだろうか?
陽はすっかり落ちてしまって、あたりは薄暗くなり始めている。
書類のほうも、残り枚数がかなり少なくなり、先が見え始めてきた。
「ではカイト様、お次ですが・・・・」
サインを終えた書類を確認すると、アリアが次なる書類を提示してくる。
このとき、アリアの体は俺に、急接近する。
アリアのいい匂いが漂ってきて、俺の意識が若干、朦朧としてしまう。
体が前傾気味になるせいで、彼女の大きな胸がさらに大きく見える。
正直、目のやり場に困る。
顔も整っているので、大変緊張してしまう。
本当によく、俺になんて好意を寄せてくれたものだと思う。
これで毎日、怒らずにいてくれれば、もう言うことなしだ。
美容にもよくないんだぞ?
アリアちゃん、笑って頂戴!!
「カイト様? 今の私の説明、聞いておられましたか?」
ジト目でこちらの顔を、覗き込んでくるアリア。
変態カイトは、無駄にうろたえた。
いろいろ、バレバレである。
やべえ!!
もしかして感づかれた!?
「い・・いやあの、アリアの胸がね・・・・」
「な・・・・!? 一体あなたは、何を考えておられたのですか!??」
顔を真っ赤にさせて、自分の体を抱くアリア。
慌てているバカなカイトは、勝手に自爆して、新たな火種を作った。
そもそも相手が、真剣に取り組んでいるのに、こんな態度を取ってはいけない。
まあ、仕方が無いと言えなくもないが。
「はあ・・・カイト様。 これで書類は最後ですわ。 ここまではきっちり、終わらせましょう。」
「マジか!? おし、がんばるぞーーー!!」
後、一件だけ。
カイトはこれに、胸を躍らせた。
アリアも、今日はため息をつくだけで、怒らなかった。
まだ顔は固いが、般若顔よりは、幾分ましだ。
さあ、最後の要望書はどんな内容なのかなーーーーー?
たびたび、区切りが悪くてごめんなさい。




