第105話・街道整備中
これからもがんばっていきます!!
感想など、ありましたらどんどんお寄せください。
ゴウゴウと勢いよく、水が流れる川。
パラパラと今にも、崩れてしまいそうな谷の地肌。
時折どこからか、獣の咆哮が聞こえてくる。
そんな場所に、一本の街道が通っている。
利用する者がほとんどいないのか、その道はデコボコで、所々は土砂崩れで通りにくくなっている。
そんな場所へ、転移魔法の光と共に、若い二人の男女が姿を現した。
「危なかったぜ・・・・」
「カイト殿。 そこまで頑なにならず、アリア殿に位、お教えしては・・・?」
「いや、そこはなんつーか・・・ 秘密にしておきたいって言うか?」
「?」
俺たちは今、王都とベアルを結ぶ街道の、山岳部に来ていた。
この街道の中で、一番の難所といって良い。
力持ちのダリアさんにも、手伝って頂たい事が沢山あるので、こうして連れてきている。
「しかしカイト殿。 あの聡明なアリア殿のことです。 もう感付かれてしまっているのでは?」
ダリアさんの言葉に、ウッと言葉を詰まらせる俺。
確かに、アリアなら感づいてしまっている確立は大である・・・・
「でもさ、昨日と今日のあの様子から見て、まだなんじゃないかな?」
「・・・時間の問題かと思われますが。」
ため息交じりに、正論を、ドラゴンのダリアさんに言われてしまった。
昨日今日と、俺はアリアに、『毎日、いったいどこへ出かけておられるのですか!? 今日という今日は、それを聞かせていただくまで、カイト様から離れませんわ!!』と、怒気交じりに言われてしまったのだ。
さすがに、『離れない』は冗談だと思っていた当時の俺は、考えが甘かった。
部屋まで付いてきたのはまだよかったが、着替えも、風呂へ入るのも、ベットで寝るのまで彼女は離れてくれなかった。
この光景には、いつも俺の横で眠っているノゾミもたじたじであった。
俺にも、かなり目の毒であった。
なぜ、彼女はそこまでのことが、できるのか。
・・・・・・・・・・そういえば夫婦だったな、俺たち。
ともかく、さすがの俺も、これは陥落しそうになった。
今日の朝まで、そんな彼女との攻防は続いた。
彼女が、トイレに行かなかったら、今日は来られなかったかもしれない。
知られるわけにはいかないのだ。
・・・いや、知られたくないのだ。
これは、完成してから、お披露目したいのだ!!
「さあダリア!! 今日の分をはじめよう!! 一日も早く、この街道を整備するんだ!!」
「・・・・・かしこまりました。」
少しの間をおいた後、未だにぎこちない礼を返してくる、ダリアさん。
昨日までで、街道の平地部分の拡張工事は完了したので、今日することは、『トンネル堀り』と、『橋を架ける』事だ。
トンネルは、この山脈の谷を通るあたりの街道が、崩れやすいのでそういった、街道の危ない場所などをトンネルへと切り替えるのだ。
橋も同様だ。
これは、街道の短絡を目的としている。
◇◇◇
「穴よ、開けーーーーーー!!!」
ばこーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんん!!
トンネル堀りは、いたって簡単。
イメージをして、予定ルートに沿って筒ができるのを頭に思い浮かべるだけ。
あっという間に、またひとつ、トンネルが完成だ。
「・・・カイト殿。 私はここまで乱暴な呪文と、破壊力の魔法は見た事がありません。」
掘り終わったトンネルは、崩れないように土魔法で地肌を岩に変え、強化魔法で補強する。
これで一丁あがりだ。
「・・・カイト殿。 ここまでの事は、無詠唱では私でも、出来ませんが・・・」
ダリアさんが何か言っているが、俺には聞こえない。
する事はまだ、たくさんあるのだ。
さあ、次行ってみよーーーーー!!
思ったより、トンネル堀りは軽く終わった。
まだまだ俺は、快調だ。
体に疲れもないし、気だるさも無い。
「・・・あんな強大な魔法を、三十四回も繰り返して、未だ体が快調なのですか?」
ダリアさんが、俺を変なものを見るような目で、見てくる。
君、その視線は失礼だぞ!
それはさておき。
トンネルは一段楽したので、次は橋を架けよう!!
「ダリアさん、ドラゴンスタイルをとってくれる?」
「・・・・かしこまりました・・・・。」
次にする事は、ダリアさんの力が必要となってくるので、ドラゴンの姿をとってもらう。
これは、この街道にかける橋が大きいので、ダリアさんに手伝ってもらうためだ。
・・・俺の魔法と、力だけあれば、橋ぐらい架けられるんじゃないかって?
いや、無理だ。
俺だけでやろうとしたら、作っている最中の橋をきっと、壊してしまう。
そんなに大きい橋を、宙に浮かせながら、作るなんて芸当は、俺にはできない。
そこで、作っている最中の橋を、ドラゴンスタイルのダリアさんに、持っていただくのだ。
これならば、宙に浮かせたまま橋が作れる!!
我ながら、グットアイデアだぜ・・・
「さーーーーー、落とさないでくださいよ、ダリアさん!!」
「むむむむ・・・・・・!!」
材料は、ボルタやバルアの港にうち捨てられていた、船。
これをばらして、橋へとくみ上げるのだ。
アイテム・ボックスの容量が多くて、本当に助かった。
無論、材料のボロい所は使わないし、ちゃんと全体に強化魔法も施す。
架けても、落ちてしまっては意味が無いからな。
「カイト殿・・・!! この重さのものを、壊さぬように、脱力しながらに、持ち上げるのは・・・!!」
「がんばってください!!」
ダリアさんが力をこめてしまうと、洗濯中の服のごとく、橋が破壊されてしまう。
数日前に一度、それで泣いた事がある。
だから、力をこめずにダリアさんには持っていただいている。
赤い体躯の彼女の体が、さらに真っ赤になっているのが分かる。
ありがとうございます。
できればそのまま残り三十分ほど、よろしくお願いいたします。
「う~~~~~~~~~んんん・・・・・・」
橋を両手に持つえびぞった赤い竜と、その傍らで魔法を使っている青年のやり取りは、幸い誰に見られる事も無く夕方まで続いた・・・・・・
まだ、鉄道は遠いです・・・・・




