第104話・この頃どこへ?
終始、アリアさんの回です。
感想など、ありましたらどんどんお寄せください!!
「じゃ、アリア行ってきます!!」
「ちょ・・・お待ちください、カイト様!! いくらすることが無くなったとは言え、そう頻繁に外出をされては・・・・・」
私が止める暇もなく、カイト様は転移でどこかへ行ってしまわれました。
毎度のごとく、メイドにした姪のダリアさんを連れて。
「ああ~~~~もう!! 今日も逃げられてしまいましたわ!!」
この数日、カイト様は毎日、こうして転移魔法でどこかへ行ってしまわれています。
帰った後、ダリアに問いただした事もあったのですが、口止めされているらしく、いい答えは帰ってはきませんでした。
私よりも、カイト様を優先する・・・・
ええ。 使用人として、実にすばらしいことですわ。
彼女のかもし出す雰囲気からは、ほかの、厄介な感情も見受けられる気がしなくはないですが・・・・・
彼女も、カイト様の肉親らしく、彼のような馬鹿力の上に、いろいろと抜けています。
疑惑はありますが、確かにカイト様には似ている気がします。
カイト様を女性にしたら、あんな感じになる気がします。
『肉親』というのも、あながちウソではないのかもしれません。
・・・・・あくまで、様々な疑惑は残りますが。
そんな二人が、共に行動をする。
・・・・正直、不安でしかありません。
男女の関係とか以前に、なにかトラブルを抱えてきはしまいか・・・と。
あの二人は、こう言っては失礼ですが、おバカです。
カイト様はたまに発狂しますし、ダリアはクレア曰く、『態度は改善されつつあるが、普通のことができない』らしいのです。
詳しいことは分かりませんが、洗濯ひとつできないと聞くと、複雑な気持ちになります。
カイト様お一人でも恐ろしいことをよく、招きよせるというのに、彼女まで加わったら相乗効果で、さらにトンデモない・・・・
魔王どころか、世界が滅亡するくらいの・・・・・
いや、もしかしたらもう、巻き込まれている最中なのでは・・・・・・?
・・・・いけませんわ。
考えたら、不安で押しつぶされてしまいそうです。
お二人とも馬鹿力ですからね。
何とかしてくれる気がします。 (不安でいっぱいですが。)
「お姉ちゃん、顔が真っ青だよ? 大丈夫??」
私の浮かない表情から、隣にいつもいる、ヒカリが負の感情を読み取ったようです。
魔族だからか、彼女はそういうことの察知に長けています。
「・・・・・・何でもありませんわ。 まったくカイト様は、私たちを置いて、どちらへ向かわれているのでしょうかね~。」
ここまで言ったところで、自分は何を言っているんだと思いました。
この子にそんな愚痴を漏らして、いったい何になるというのでしょう。
この発言は、彼女を無駄に不安にさせる事しかないのですから。
彼女は、キョトンとした顔をしています。
「ごめんなさい、ヒカリ。 あなたにこんなことを言っても分かりませんでしたわね。 今言ったことは、お忘れなさい。」
まあ、カイト様が死ぬなんて事はなさそうですし。
もしそんなことがあれば、彼だけではなくこの国そのものが滅亡でしょう。
私やノゾミだって、遠からず死んでしまいますわ。
しかし、再びキョトンとした彼女からは、思いがけない言葉が発せられました。
「ん・・・・、私、お兄ちゃんがどこに行ったのか、知ってるよ?」
「・・・・・・・へ?」
思わず、変な声が出てしまいました。
ノゾミに聞いても、使用人たちですら知らなかった事を、なぜ彼女が・・・・・・・
いえ、そんなことは今は、関係ありませんわ。
彼らがどこで、何をしているのか。
危険性はないのか。
それが、気になることなのですから。
「ど・・どこですか!? カイト様たちはいったいどこへ毎日、お出かけになっているのですか!?」
自分でもびっくりする位、動揺しています。
ですが、前述のとおり、これは非常に重要なことです。
「あのね、昨日お兄ちゃんがこれをくれたんだよ?」
「・・・木の実・・・ですか?」
笑顔で、彼女は胸元から森の木の実を取り出しました。
木の実といっても、果肉が無く、食用にすることはできません。
アクセサリーなどによく用いられる、そんな木の実です。
ちなみに昨日も、今日のようにカイト様方は、どこかへ転移をされています。
ということは・・・・
「もしや、カイト様は森へ?」
そんな考えが頭をよぎり、思わず声に出してしまいました。
ヒカリも同じ考えなのか、コクリとうなづいてきます。
この木の実はをつける木は、このあたりの森くらいにしか、生えていません。
おのずと、カイト様たちの行き先は、限定されてきます。
・・・ですが。
「目的はいったい、何なのでしょうか?」
こればっかりは、木の実を見たところで、さっぱり分かりません。
ヒカリもそこまでは思い至らなかったのか、首を傾げています。
こんなものを持って帰ってくるくらいです。
どうやら、危険なことをしているわけではなさそうです。
根拠はありませんがなんというか・・・
緊張感だとか、そういったものが、この木の実からは感じられないのです。
そもそもカイト様が、緊張感を感じることはあるのか、という疑問はありますが、疑っていてはキリがありません。
変な妄想は、よしましょう。
「これは・・・帰ってきたら、問いたださなければなりませんわね。」
とはいえ、分からないことだらけです。
不安な事は、変わりありません。
なぜ、私たちにひた隠すのか。
どうして、ダリアと行くのか。
毎回ノゾミを置いていっている事が、何よりも分からない事です。
・・・ところでカイト様、なぜ彼女へだけ、お土産を送ったのですか?
アクセサリーに用いられる木の実というのは、松ぼっくりのことです。
山脈のある地帯では、よく松が茂っており、これがそこら中にあるそうです。
ちなみに、この国での呼び名はありません。