第102話・街道と港湾都市
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べアルに来る、開拓団の受け入れた体制が整ったこの日。
残念ながら、商店などを誘致することはできなかったので、そこが今の悩みどころだ。
買い物ができない街に、人は定住してくれない。
当分は、カイトの魔法でしのぐつもりだが、それではその場しのぎにしかならない。
いま、最優先で進めたいことと言えば・・・・
「街道整備ですわね。」
「あの、ここと、王都のとか?」
「ええ、そうです。 あそこが整備されて、もっと通りやすく、そして利用しやすくなれば、もっと人の往来も増えて、商人たちも来るようになるでしょう。」
「う~~~~~ん・・・・・」
確かに最初にここへ向かうとき、街道はひどい有様だった。
道はでこぼこだし、ところどころ土砂崩れで通りにくいところもあったし、そもそも道自体が一貫して狭かったし・・・・
あれでは、商隊が来ないのもうなづける。
「・・・分かった上で聞きますが、カイト様の魔法でどうにかはなりませんか?」
「分からないなあ・・・・ 橋とかかけるなら材料が必要だし。」
「・・・そうですわね。 今のこの領地の財政では難しいかもしれないです。 この話は、また今度にいたしましょう。」
街道整備と軽く言っても、距離は相当あるし、かなりお金もかかる。
今はまったくお金がないので、当座は難しいと思われる。
「カイト様の話したいと言う事は、どんなことですか?」
「ああ、俺か? 俺はだな・・・・」
カイトが気になったことは、バルアのことについて。
バルアは遠浅の、この国随一の港湾都市だ。
船の往来が非常に多いこの街だが、遠浅が災いして、小型の船舶しか入港できない。
遠浅の部分を一部、掘削して大きな船用の通り道を作ることも考えたが、荒天時にかなり危険となる上に、バルアの景観が悪くなることもあいまって、できれば避けたい方法だった。
そこで考えたのが、もうひとつの港湾都市整備の計画。
実は、ベアルの領地は結構広大で、海に面した土地もある。
海は、バルアとは対称的に、すぐに深くなるようだ。
これなら、大型船舶の入出港もできる。
今の地図で見る限り、何もないのだが、もしここに港湾都市ができれば、発展するのではないか・・・
頭が鉄道で埋め尽くされているカイトは、この領地を発展させることに全神経を集積させていた。
大したやつである。
鉄道で、しばしば暴走しなければ、いい領主になれるかもしれない。
「カイト様、実はここには、ボルタと言う街があるのです。」
地図の、ベアル領の海岸線付近を指差すアリア。
「へ? ボルタ? でも地図にはどこにもそんな街は・・・・」
アリアの衝撃カミングアウトに、カイトは自分の目の前にある地図に再び、視線を落とす。
しかし、そこには森があると言うような記載しかなく、村の存在すら確認できなかった。
やはりこの領地にある、人の住んでいるのはここ、ベアルだけのようだ。
すると、アリアが首を横に振った。
「語弊がありました。 数十年ほど昔、ここにあった街、それがボルタです。」
そういって、再びベアルのほぼ真南に位置する海岸線を指差すアリア。
しかし、それはおかしな話だ。
いくら山脈があるとはいえ、遠浅の使いにくいバルアの港よりも、こちらのほうが水深も深いのだから、大型の船の発着ができる、そのボルタとやらの街のほうが発展していきそうな感じがするが。
「お察しのとおり、ここは昔、この国でも一番の貿易港でした。 そのおかげで、ベアル領も栄えたと聞きます。」
ならばなぜ、その街がなくなってしまったのか。
ますます分からない。
「そんなあるときです。 そんなボルタ近辺の海域に、海賊が現れたのです。」
「え、海賊!!???」
海賊ってあれ?
『○賊王に、俺はなる!!』とか某アニメマンガで超有名なあの手足とかが伸びる・・・・
『○イレーツ・オブ・カリ○アン』とかで不死の男が戦う・・・
カイトの、抜けた妄想を置き去りに、アリアが話を続ける。
「海賊は、この海域を航行する、すべての船を襲ったそうです。 略奪し、壊し、殺し・・・・それは凄惨な光景だったそうです。」
言葉を端々で詰まらせるアリア。
教育課程で、実際にその光景の静止画像などを、魔導師の先生にでも見せてもらった事があるのだろう。
カイトの目の奥でも、そのときの光景がありありと浮かんできそうだった。
「貿易船に武装した用心棒を乗せたり、あるときは貿易船に化けた国軍船も出されました。 しかし、どれも結果は失敗に終わったそうです。 結局、その海賊のせいでボルタの港には、貿易船が入ってこなくなりました。 その後、この街から人が出て行き、廃都となってしまったようです。」
・・・・マジかよ。
その海賊のせいで、そのボルタって街が無くなってしまったわけか。
海賊の船は大きいらしく、遠浅のバルアの海域には出没しないのだそう。
だから、あちらの街が栄えたらしい。
つまり、その海賊とやらをどうにかすれば、問題は解決である。
しかし、それを否定するようにアリアが、かぶりを振る。
「かの海賊は、大海原で、突如として幽霊のように現れるのだそうです。 また、民間船以外の前には、決して姿は見せなかったそうです。 ですから、国軍の派兵も、意味を成さなかったのです。 そこでかの海賊についたのが、『幽霊団』と言う名です。」
真剣な表情で、そう言い放ったアリア。
・・・・にわかには信じがたいが、真実らしい。
マジですかーーーーーーーーーー・・・
街道整備と言い、港湾都市整備と言い・・・・
難しい事だらけではないか!!
俺はしばし、アリアから聞かされた真実などに、頭を抱えるのだった・・・・
困ったぞ?
海賊は、そのうち出てきます。