第101話・思い立ったら行動だ!!
これからもがんばっていきます!!
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「・・・・・終わった~~~~・・・。」
「カイト様。 彼らが帰って早々、大公のあなたがそんな態度では困りますわ。 ・・・ですが、お疲れさまでございますわ。 今日は家で、ゆっくりとお休みくださいませ。」
体全体の力を抜いて、手や首をだらんとさせるカイト。
それをたしなめつつ、彼に労いの言葉をかけるアリア。
ここは、バルアの街の屋敷の一室。
今、終わったのは、募っていたベアルの開拓団の、面接だ。
思いのほか、希望者多数だったこの開拓団の希望者を、面接で品定めしていたのである。
理由は、開拓団をやっていける体力があるか、変な下心はないかを見定めるため。
そのためカイトはここで、日本のような質問形式の面接を行いつつ、最上級の『鑑定』で、彼らの心の中にある思惑を除いていたのだった。
結果、希望が千世帯だったのに比べ、選ばれたのは約五百世帯ほど。
しかしこれでも、十分すぎるほどであった。
予定としては、百人そこそこ集まるかな?
程度にしか考えていなかったので。
「ではカイト様。 私はこれから今日訪ねてきた方々の、選考作業に移りますのでこれにて。」
「ああ、印はつけてあるから、よろしく頼むわ。」
「了解しましたわ。」
アリアは、膨大な数の、開拓希望者たちの志望動機などを記した書類を片手に、メイドたちとともに部屋を退出していった。
ちなみに『印』とは、前述の『開拓団の一員にふさわしい者』の印である。
選考通過者が思ったより多かったので、追加で家を建てたり、耕作地を増やさないとなーと、考えつつカイトは、窓から見えるベアルの海に視線を落とした。
実にきれいである。
遠浅で、透き通った海は青や緑色に彩られ、太陽の光できらきらと眩く光り輝いていた。
その海の上には、この街が発展した所以たる貿易の船が沢山浮かんでいる。
だがそのどれもが、とても小さな船であった。
日本で言う、せいぜい百トンほどの小船ばかりだ。
遠浅のため、この街の港に入ってこられる船は、水面下の部分を少なくせざるを得なかった。
比例して、船の大きさも小さくなってしまったのである。
この遠浅の海は、遠く、スラッグ連邦という、大陸国家まで続いているらしい。
貿易船の大型化は、不可能と言って良いだろう。
しかし、それが実現できれば、もっと栄えるのではないか・・・・
そんな漠然とした考えが、カイトの中にあった。
「ふああ・・・・ あ、カイト。 『めんせつ』とか言うのは終わったの?」
「・・・おまえ、また寝ていたな?」
この部屋にいた、俺とアリアのほかのもう一人・・・
ノゾミが大欠伸をして、目をすりながらもたれかかっていた椅子から、体を起こす。
彼女がこの街の新領主、ノゾミ伯爵である。
形式上、必要不可欠な存在なのでこの面接の同席させているのだが、コイツは始まって一分後には寝てしまっている。
野菜大好き領主様である。
「えへへ・・・ だって、話を聞くだけって退屈なんだもの。」
悪びれる様子もなく、照れくさそうに頭をかくノゾミ。
アリアから見た俺もこんな感じなのだろうか?
この間、俺をどう思っているって聞いたら、
『あなたは天然記念物級のバカですわ。 あなたはぜひ、そのままのバカでいてくださいませ。 抜けた部分は、我々で補填いたしますので』
って、言われた。
・・・・そのままのバカでいろ、ってどういうことだろうか?
俺はそこそこしっかり者のはずなのだが・・・・
ともかく、ヒドイ言われようだった。
それはともかく。
「ノゾミ、今日の仕事はおしまいだ。 今日は好きにして良いぞ。」
「おしまい? カイトも? 」
キョトンとするノゾミ。
顔を縦に振るカイト。
途端に、心地よい南風が窓から部屋へ入ってくる。
それに乗って、潮の香りも部屋へ漂ってくる。
「じゃあ、カイトと一緒にあの青い湖に行きたい!!」
ノゾミが指差すのは、もちろん海。
彼女も興味があったようだ。
前回、ソギクの種の買い付けに来たときは、時間があまりなかったので、海に入って泳いだりする事はあきらめた。
だが今は、まだ昼だ。
水着なんてその辺で売っているので、それを買えばいい。
護衛の数人を連れて行けば、アリアに怒られる心配もないはずだ。
「よし、一緒に行くか!!」
「やったーーーーーーーー!!!」
俺たち二人は、海水浴に行くことにした。
◇◇◇
先ほどから、騒ぎ声が聞こえます。
方向から、さっきまで開拓団の面接を行っていた、この屋敷の執務室からのようです。
私たちは今、バルアの屋敷の一室で、開拓団の選考結果をまとめています。
これを、明日に屋敷の前に張り出すことになっているのです。
周りでも、騎士やメイドの者たちが、この作業を手伝ってくれています。
「お姉ちゃん、涼しい?」
「ええ、涼しいですよ? ありがとうございます。」
「えへへ・・・」
私の傍らにいるヒカリが、この部屋全体を、魔法で涼しくしてくれています。
この街は南方にあるので、年中そこそこ暑いのですが、彼女のおかげで、この部屋の者は暑い思いをせずに済んでいます。
このタイミングでこのセリフは、彼女に対してかなり失礼ですが、いてくれて本当に助かります。
「-------!!!」
「----!!」
「----------!!!!!!!!」
騒ぎ声が、今度は玄関のほうから聞こえてきました。
何事かと、下を覗いてみると、カイト様とノゾミが、大はしゃぎで街の方へと下っていくのが見えました。
大慌てで後ろを、メイドや騎士の者たちが追いかけていくのが見えます。
・・・・・何をやっているんでしょうか?
あの領主トリオは。
呼応するように、一人のメイドがノックをした後、この部屋に入ってきました。
「申し上げます。 カイト様とノゾミ様が、『海水浴へ言ってくる』とおでかけになりました。」
・・・・あーーーーー・・・。
『お休みください』と言った言葉はもう、お忘れになったようですね。
もう彼らの姿は、ここからでは見えません。
護衛の者たちは伴っていたようですし・・・ まあ、良しとしましょうか。
「お姉ちゃん、『かいすいよく』ってなーに?」
メイドの言葉に、分からないと言った表情を浮かべるヒカリ。
海水浴と言っても、人それぞれに楽しみ方が異なるので、どう説明しようかと考えていたところ、騎士の一人が、書類審査をしている手を止め、顔を上げました。
「アリア様。 こちらは我々だけでも大丈夫ですので、ご一緒にいかれては?」
その言葉に呼応するように、周りの使用人たちも、賛成と言わんばかりに顔を縦に振ってくれています。
「そうですわね。 では皆さんも、今日はいったん仕事の手をお休めください! 我々も全員で、海水浴に出かけるとしましょう!!」
途端に歓喜の声が上がります。
後すべきことと言えば・・・・・
「申し訳ございません、あなたはこれから厨房に行って、シェフたちに浜辺でバーベキューの用意をお願いできますか?」
「はい! かしこまりました。」
笑顔で、パタパタと厨房へ小走りするメイド。
歓喜の声もおおきくなりました。
あ~あ、今日の仕事は徹夜ですわ。
あの方にも手伝っていかなくては。
私はやっていた選考書類をまとめて机の上に置き、外出の準備をすることにしました。
いえ~い!
鉄道が近くなったぜぃ!!
そんなワードあったかって?
この後の展開にご期待ください。