第97話・カイトの従兄妹
パンク修理、完了しました。
これからもがんばっていきます。
感想や誤字、脱字などありましたら、どんどんお寄せください!!
今、俺の目の前には、いつもどおりの険しい表情を浮かべた、嫁ことアリアがいる。
その額には青筋が浮いており、彼女の呆れと、怒りの感情が読み取れる。
原因は分かっている。
というか、俺が連れてきてしまったのだ。
「カイト様? その横に立っておられる、赤い女性は誰ですか?」
「えっと・・・・・・うんそう、俺の従兄妹だよ?」
アリアから若干、目をそらした状態で、三人(?)で取り決めた内容を答える俺。
地球から来た俺が、この世界に従兄妹なんかいるわけがない。
・・・苦しいことは分かっている。
だが、『友達』とか言ったら、この後話すことに支障が出るので、一応、最善の答えだったのだ。
「あなたに従兄妹? そんな話、聞いた事がありませんわよ?? 大体あなたは、黒目黒髪だったのではなくて?」
アリアが、痛いところを突いてくる。
彼女は、俺が黒目黒髪だということを知っているのだ。
対して、今アリアの目の前にいる女性は、赤目赤毛の妖麗な女性。
人間に変体した、ダリアさんである。
森で、頭を悩ませていたらダリアさんが、突如人間の女性に形を変えたのである。
その姿は、ノゾミと同い年の、13歳くらいの、赤目赤毛のどこか大人びた感じの女性であったのだ。
分かる。
血がつながっているとは、到底思えないよね?
もし、俺が黒目黒髪なら、なおさら。
アリアには、王城で俺が爵位を賜る際、俺の変身していない姿を一度、見せている。
が、それが本当の姿だとは言っていない。
『シェラリータでは、この姿でいました。』って、俺は言った覚えがある。
つまり、今ならごまかしが利く!!
「い、いや! 似ているだろ? 確かに従兄妹だから、だいぶ顔立ちは変わっているが、どことなく・・・なんとなく・・・・・」
グイグイ押す。
下手に疑われると、逆にこちらが、グイグイやられる。
だから、質問攻めに遭う前に、こちらがグイグイ押す。
「はあ・・・・ いえでも・・・・・ あなたは確か、黒目黒髪では・・・・?」
「いや、あちらが実は変身した姿だったのだ。 今の、赤い俺が本当の姿だ。」
アリアは、俺から視線をずらし、ノゾミのほうを見る。
かなり怖いくらいの目力で。
一瞬ビクッとしたノゾミだったが、すぐに取り決めたように、高速で顔を縦に振る。
それのおかげか、まだ疑いは晴らしきれていないながらも、アリアの追求はここで停止した。
「そうですか・・分かりました。 お初にお目にかかります。 私、カイト様の妻、アリア・スズキですわ。 以後、お見知りおきを。」
深いため息をついた後、体裁を整えて、自己紹介をするアリア。
さすがは元、王女様。
完璧な挨拶だ。(と、思う。)
「そうそう、彼女はね・・・・」
「ダリア・グラードだ。 よろしく頼む。」
俺が紹介しようとしたら、彼女のほうから自己紹介をした。
若干、女性としてどうかと思う口調だが、彼女はドラゴンなので、そこは考えてはならないだろう。
ピリッと張り詰めていた空気が、少しだけ軽くなった気がする。
「で、カイト様? あなたに従兄妹がいたという事は、ひとまず置いておくとして、どうしてこのタイミングで彼女を連れていらっしゃったのですか?」
「実は彼女は、シェラリータで両親と暮らしていたんだが、二人とも冒険者でな。 ある日、帰ってこなくなってしまったんだ。 それからもう、二ヶ月は経過している。 今までは、一人暮らしをしていたんだ。」
途端に言葉を失う、アリア。
この世界では、このようなことはザラにある。
ある日突然に、親が帰ってこない。
ある日突然、村や街が全滅。
そういった原因である日、突然に孤児になってしまうという子供も、沢山いるのだ。
そういった子供は、教会などに引き取られ、里親を探したり、そのまま教会の聖職につくという感じになっている。
ダリアも、見た目はとりあえず子供であった。
どうやら彼女は、まだ幼体らしい。
それに比例して、変体しても、人間の子供になるらしかった。
・・・ちなみに、実年齢は知らない。
女性に年齢を聞いてはいけないと、昔近所のお姉さんに言われた記憶があるので、これからも聞く気はない。
「そうですか・・・ お悔やみ申し上げますわ。 つらかったでしょう? その幼い身で。」
「・・・・・・。」
俺の紹介で彼女を、孤児認定したらしいアリアが、ダリアさんにお見舞いの言葉を述べた。
ダリアさんは、こういった対応になれていないのか、しどろもどろだ。
そこでアリアは、ギンッと俺をすごい形相で睨み付けてきた。
お・・俺、何かしましたでしょうか?
「カイト様? なぜこのような肉親がいながら、二ヶ月も放って置いていたのですか? 女性とは、傷つきやすいのですよ? 特にこのような幼子は。」
「す・・すまん。 一応、気にかけてはいたんだぞ??」
「いいえ、気にかけるだけでは何もしていないのと一緒です。 あなたもさぞ、おつらかったでしょう? ご両親が帰ってこなくなって以来、何ヶ月もお一人でいたなんて。」
「ああ・・・・まあ・・・・・」
ダリアさんが、一人でさびしい思いをしていたのは間違いないので、あながち間違いではない。
・・・出会ったのは十日くらい前なんだけど。
そういえば、群れを追い出されたって、いつのことなのだろうか?
今度、さり気なく聞いてみよう。
「カイト様。 事情は分かりましたが、あなたはもう一度、教育が必要ですわ。 数少ない肉親を、ぞんざいに扱うなど、この私が許しません!!」
「・・・・・・はい。・・」
新たな火種を作ってしまったらしい俺はこの後、屋敷の彼女の部屋で、こってりしぼられるのだった・・
事件は、これからです。