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~迷子9~
「私の名前はさくら。どうやってここに来たかって聞かれても、私はただ道に迷って・・どうしてあなたは私の事をケガレと呼ぶの?人間を見るのが珍しいと言った感じの言い方だけど・・ここへはあまり人間は入ってこないの?」一気に話す。
狼は私の言葉を聞き一瞬考えた後「ほぅ・・」と一言つぶやく。そしてこう続ける。
「さくらか、良い名だ、して・・お主、いったい何者だ?ケガレとはまた違った匂いがする。それにこの世界の事を全く知らぬ。全く不思議な奴だ」
狼の言葉を聞くたびに頭が混乱していく。まるで私の住む世界とは別の世界のような言い方だ。迷った?私はどこに迷い込んだ?よく考えればわかることだ。私の家のそばにこれほど大きな森はなかった。いつ迷い込んだ?いったいここはどこだ?いくつもの疑問が頭に浮かんでくる。そしてなぜこの狼は私を襲おうとしない?これほど狩りやすい獲物はないだろう。私としては好都合であることに変わりないのだが・・。しばらく考えていると、狼が驚くべきことを言い出す。