~迷子8~
叫び終わった後、手に持っているペットボトルを巨大な生き物目掛けて、思い切り投げる。くるくると回りながら飛んでいく。当てる気など無かった。むしろ当たらないように投げたのだ。しかし…見事にヒット。巨大な生き物がこちらを向いた。
「ご、ごめんなさい!当てる気なんて無かったの!」咄嗟に謝ってしまった。
「全く、礼儀のなってないヤツだな。お主よく見ればケガレではないか。なぜケガレがここに?」
低い、まるで地鳴りのような声。一瞬何が起きたのか理解できなかった。ありえない。巨大なうえに言葉までも理解している。まるで夢でも見ているようだ。そうだ!これは夢なのだ。目の前にある常識はずれなものから逃れるため、夢だと思い込む。しかしそれは現実逃避でしかない。目の前にいるそれは、実在しているのだ。現実に引き戻すかのようにさらに声をかけてくる。
「おい!そこのケガレ!名は?どうやってここにきた?」
全く訳が分からない。まるで私の存在が珍しいかのような言い方だ。人間が珍しい?ありえない。地球上で人間を見たことがない者などいるはずがない。それになぜこの狼は私の事をケガレと呼ぶのか?考えてもわからない。少しは話が通じる者だと信じ、訪ねてみよう。