7/78
~迷子7~
「ベチャァ」
何が起きたのかわからない。いきなりバケツいっぱいの水…、いや…水とは程遠い。ネバネバとしており、身体にまとわりつく物。あまりの不快感にブルッと身震いがする。このネバネバの正体を確かめるため上を見上げて驚いた。何かがいる。しかし有り得ない。私は高い木の上にいるのだ。この木より大きい生き物などいるはずない。あまりの驚きに、思考が完全に停止する。ただぼーっと見つめることしか出来ない。人間と言う生き物は、極度の驚きを感じると思考が停止してしまう生き物なのだ。しばらくして思考が戻ってくる。しかし遅すぎた。
「ベチャァ」
またネバネバした物に襲われた。ただこれでネバネバした物の正体が分かった。涎である。先ほどの怒りと、涎をかけられたことに対する怒りが混ざり合い、限界に達した。
どうせ食べられるなら、一言文句を言ってやろう。そう心に決めたのだ。大きく息を吸い込み、叫ぶ。
「ちょっと!!あなた何?人に涎かけておいて、謝りもしないの?ねぇ!聞いてるの?そこのでかいの!!」