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~迷子4~
「痛っ!」
草で太ももを切り、思い出す。衣服を脱ぎ捨てていた事を、しかし取りに戻っている時間など残されていない。ひたすら前に走るしかなかった。
身体中傷だらけになりながら走る。
ただひたすら、生にしがみつくために。
「はぁ…はぁ…」
間近で見る木はとても大きく神々しい。
ピンク色の蕾をつけており、後数日で綺麗な花が咲くだろう。
「よし!」一声気合を入れてから木によじ登る。山育ちだった事もあり、木登りは大の得意である。すいすいと登っていき頑丈そうな枝に座り込む。
木の上から辺りを見渡す。外はすっかり真っ暗で全てを闇と静寂が飲み込んでいる。
見えるものと言えばお月様が地上の警備をしている姿だけだ。
闇に目が慣れてきたのか、辺りが見えるようになってきた。
ふと先ほどまでいた辺りを見ると丸い何かが六つ光っている。