~迷子2~
これだけ深い森だ、何が出てもおかしくない。夜をどう乗り越えるか頭を全力で回す。
狼の様な牙も、熊のような爪も持たない私達人間が生き延びる手段は、頭を使う事だけだ。
「考えろ。考えろ私。大丈夫、まだ時間はある。焦るな。焦るな。」
自分を落ち着かせるように、ブツブツと独り言をつぶやく。
お日様とお月様が一直線に並び、1日の引き継ぎを行っている。もう時間はあまり無い。
「焦るな。焦るな。動物になりきって考えて。」
私の背丈ほどある草をかき分け、四つ足で大地に立ってみる。四つ足で立ってみるとわかる。草のおかげで、視界はほとんどゼロ、しかし嗅覚が優れた動物には気付かれてしまう。この森を彷徨い続けたのだ。衣服には大量の汗が染み込んでいる。このにおいに気付かないわけがない。気休め程度でもいい。少しでも生き延びる可能性を上げたい。その一心で私は衣服を脱ぎ捨てる。動物に関する専門的な知識などない私に出来る唯一の悪あがき。喉の渇き、空腹を忘れただひたすら生き延びることを考える。
お日様はすでに帰り支度を始め、あたりが闇に覆われつつある。
「焦るな。焦るな。」
必死に自分に言い聞かせる。
焦ってしまえば思考は止まる。そうなってしまえば、残された道は一つ
死