~迷子15~
しばらく見つめていると狼の真っ白い体毛が尻尾から頭に向かってどんどんと茶色に変化していく。思わず「え!?」と驚きの声をあげてしまった。
そんな声にも反応せず狼はじっと立っている。
全身が茶色になると今度は狼の体が小さくなっていく。先ほどまであんなに大きかった狼が今では普通の狼と変わらない大きさだ。
目の前で起きた理解不能な現象に頭が真っ白になる。
狼がぶるっと全身を震わし、「おどろいたか?さすがに城の中であの大きさは何かと不便だからな・・普段はこの姿でいることが多い。」
少し歩いた後くるりとこちらに振り返り「自己紹介がまだだったな。歩きながら話そうか。この世界の事も全然わかっていないのだろう?長い話になる。まずはさくら・・お主の着るものと食事、そして部屋を用意しよう」
すっかり忘れていた・・私の着ていた服はすべて狼たちにぼろぼろにされてしまっていたのだ・・。そう・・私は何も身につけていないのだ・・。
その事を思い出すと恥ずかしさが込み上げてくる。すぐにでも物陰に隠れたいほどだ。
「ま、まずは着る物を・・お願いします!できるだけ早く!」
恥ずかしがる私を見て狼がにたぁと意地悪な笑みを浮かべる。
「生憎だが、我らは生まれながら毛皮をきている。衣服などは身に着けないんだ。ここにお主が着るような衣服があればいいがな・・」と意地悪そうに言う
「お、お願い!布切れでもいいから」
私は必死だった。狼の意地悪に気づかないほどに…
そんな私の反応を見て狼は意地悪が通じない状態だと判断したのだろう。「すまん、すまん。あまりに面白い反応だったので意地悪をしたくなっただけだ。着るものはある事にはある…しかし…」そこで言葉を切る。